■随筆を読むように
・茂木健一郎(著)「脳の中の人生」を読んでいる。
この本は、「読売ウイークリー」の2004年5月2日号から
2005年8月21・28日号にかけて掲載されたものをまとめたものだ。
だから、この人の他の著作に比べると、気楽に読める。
脳科学の新知見に関する「科学的で」「詳細な」報告を
求める分には不向きだが、本にするにあたって新たに書き下ろして
加えられた<この章の『考えるヒント』> を参考にしながら、
随筆を楽しむつもりで読んでいる。
・もともと連載の記事だから、毎回の長さが同じ。
つまり、この本のページにすると「3ページ」が「節」となって、
ひとつの「話題」になっている。だから、喫茶店で簡単に読める。
その中に、面白いのがあったので、書いてみる。
■「判断」の「司令塔」
・人間が「判断」をする際には、脳の中でも、「前頭葉」の
「背外側前頭前野皮質」という部分が重要な働きをしている
らしい。
「判断」するために、脳はいろいろな部位で活動する。その各部位の
活動をモニターし、何に注意を向けて「判断材料」にするか、
それを決めているのが、この「背外側前頭前野皮質」という部分で、
脳の「判断活動」の「司令塔」としての役割を果たしている。
・脳のさまざまの領域からあがってくる「情報」を参考にしながら、
この「司令塔」が最終的な「判断」を下す。
たとえば、車を運転しているとき、前方に現れたのが、
人なのか、それとも道路標識なのか、自分が見ているものが何かを
判断するときにも、この部分が、つまり、「司令塔」が活発に活動する。
■明瞭な判断
・ところで、簡単な判断を下すときと、複雑な判断を下すとき
とでは、どちらがより活発にこの「背外側前頭前野皮質」が
活動するのだろうか。
・体験的、直感的には、難しい判断をしているときに、脳のこの部位が
活性化するように思う。夜間、雨で視界が悪いときの方が
一生懸命、自分の見ているものが何かを判断しようと、努力している
ように思う。
・しかし、近年の研究から、実は簡単な判断を下すときの方が
この部位は、よく活性化することが知られている。実験では
「人の顔」か、「家」か、写真を見て判断するという方法が
とられたが、結果は、両者の区別がはっきりつき、一見して
違いがわかるときの方が、「背外側前頭前野皮質」が活性化する
のだ。
■悩む
・このことは、何を意味するのだろうか。
「私たちは、くよくよと悩み、思い煩っているとき、そのときの
方が、脳を使っているように思い勝ちである。
しかし、そのような状態は、脳の成り立ちからいえば、
むしろ判断したくてもできないような状況に当たる。
ちょうど、行動をとるべきでないときに、脳の運動野の
活動が抑制されるが、それと同じように、明確な判断の
材料がないとき、脳の判断の「司令塔」の活動もまた
活動低下するのである」
と、筆者は説明している。
・私は、ひとより、より多く悩んだように思う。
そして、そのことは、結果として、私にいろいろの考え方や
「私としてどうするか」を考えさせ、考え方を深めさせたように
思う。
・しかし、「脳」本来の活動からいえば、それは「空回り」に
等しいことで、この「司令塔」の活性化にはつながっていなかった。
・「もちろん、悩むことも大切だ。しかし、生きるうえで
意味があるのは、実は、あまりにも当然な、当たり前に思える
判断の、その積み重ねではないか。
当たり前の判断を下すとき、そこには自分という人間の
深い傾向が現れてくる。
ひとつ、ひとつの、やさしく見える判断が、人生を形づくる
のである」
・筆者は、そのように述べている。
私は、これを読みながら、やはり、
「悩むのが目的なのではなく、解決こそが目標である」ことを
あらためて思った。
そして、明瞭な判断、すっきりとした顔。悩みのない男になりたいと
思った。
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