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2023年06月07日22:09

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映画『トリとロキタ』/ダルデンヌ兄弟

6/6(火)、シネマイーラ浜松で『トリとロキタ』を観る。
ジャン=ピエール&ルイ･ダルデンヌ兄弟が監督･脚本をした2022年映画、カンヌ国際映画祭75周年記念大賞を受賞した。

12歳の少年トリと17歳の少女ロキタは、アフリカ大陸西部ベナンとカメルーン出身、密航船に乗り、地中海のシチリア経由でベルギーにやってきた。
船上で出遭い、保護者もいない二人は強い友情で結ばれ、工業都市リエージュの底で支え合って生きている。
トリがビザを先に取得できたため、ロキタはトリの姉と偽ってビザを申請しているが、移民局に疑われ巧く進展しない。
審査後にパニック発作を起こすロキタに、5歳年下のトリが薬を飲ませ、優しく見守る。

ビザなしではロキタは定職に就けない。トリはたまたま先に取れたが、小学生では仕事もない。
二人はあるイタリア料理店でカラオケを歌う事で僅かな金を貰っているが、それでは生活もままならず、実はシェフの下で、不法ドラッグの運び屋をしている。
ロキタは故国の家族に仕送りをするという約束でヨーロッパに出てきたのだが、仕送りできない事も多い。仲介業者に密航資金を借金をしたため、運び屋をして稼いだ金の多くは彼等がロキタからむしり取っていく。
故国の母親に仕送りを待ってくれと電話で懇願すると、独り占めしているのだろうと疑いの言葉を投げられてしまう。
ロキタはシェフに偽造ビザの作成を頼み込む。するとシェフはロキタに性的な要求をしてくる。
弱者は次々と人としての尊厳を踏みにじられ続ける。

狭いアパートの狭いベッド、トリはアフリカの子守歌を歌いだし、ロキタに一緒に歌ってくれとせがむ。

ロキタはシェフから更に危険な闇組織の仕事を受ける事になる。
トリを小学校に置き、目隠しをされたロキタは、車で長く走り郊外の廃倉庫のような建物にに連れていかれる。
工場に一人閉じ込められてやらされるのは違法大麻の栽培らしい。
劣悪な環境下で、室内温度の管理や、水や肥料やり等、シェフの子分らしい若い男から細かな指導を受ける。
1週間連続してこの作業を命ぜられる。
外部との情報を遮断するため、つまりここが何処か警察に知られないため、若い男はロキタのスマホからSIMを抜き取る。1週間後にSIMは返すと男は約束するが、トリとの会話もできないロキタは、ある日パニック発作を起こす。

取り残されたトリはロキタを心配し、密かにシェフの車に隠れてこの工場にやってくる。
トリは換気口から忍び込み、暗闇の中をスマホの光を頼りに歩き回り、何とかロキタと会う事ができた。
しかし、トリはここがどれだけ危険な場所かまだ分かっていない。

二人はここから逃げだす事にする。
だが、彼ら身元も定かでない密航者(=社会的弱者)の命がどれ程安いか、あとから知る事になる。

映画を見終わって、今、日本では入管難民法の改正(改悪)案が国会を罷り通ろうとしている事を強く思う。
日本がやろうとしている事は、映画の闇組織より更に質が悪い。
この法案が通れば、難民の強制送還は一層しやすくなる。難民認定を1％しかしない日本政府がそれを正当化するのが狙いだ。
ジェンダー(含むLGBT,同性婚,夫婦別姓)問題と伴に、入管と人権の問題は、日本の闇である。

参)2021年10/15の日記「"だまし討ち"さえする日本の入管」
　https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1980603621&owner_id=3341406

ダルデンヌ兄弟は、主役を演じたパブロ･シルズ(トリ役)とジョエリー･ムブンドゥ(ロキタ役)を共にオーディションで見つけ出した。二人とも演技経験はゼロだとの事。
それだけに、色付けされていない2人の言葉と行動は、真っ直ぐに我々の心に訴えかける。

監督･脚本ジャン=ピエール&ルイ･ダルデンヌ
撮影監督ブノワ･デルヴォー
美術イゴール･ガブリエル
編集マリ＝エレーヌ･ドゾ

出演パブロ･シルズ,ジョエリー･ムブンドゥ,アウバン･ウカイ,ティヒメン･フーファールツ

受賞カンヌ国際映画祭75周年記念大賞,サンセバスチャン国際映画祭バスク国2030アジェンダ賞,セビリアヨーロッパ国際映画祭EFA部門観客賞,エルサレム映画祭国際映画部門審査員特別賞；パブロ･シルズ他多数

2022年/フランス,ベルギー

〈付記〉
過去に観たダルデンヌ兄弟作品。
『息子のまなざし』(2002)
『ある子供』(2005)
『少年と自転車』(2011)
『サンドラの週末』(2014)
　

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