mixiユーザー(id:12784286)

2023年02月14日20:28

70 view

【読書】 最近読んだ本 備忘禄

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「神隠しと日本人」 (小松和彦著、角川ソフィア文庫)

突然、人が日常世界から消えてしまう「神隠し」についての、民俗学的視点からの本である。そもそも神隠しにあった人は、どこに行き何を体験したのか。どのような神が人を異世界にいざなったのか。各地に伝わる話を繙きながら分析していく。天狗であったり鬼であたり山姥であったり狐であったり、連れ去る「神」もさまざまだ。神隠しにあっても時を経て元の日常に戻ることもあれば、そのまま行方不明になることもある。あるいは遺体となって戻ったり。日常に戻っても、「神隠し」の間のことを覚えている人も、全く記憶にない人もいる。現代では「神隠し」などは存在せず、失踪、家出、誘拐、等々で片付けられてしまうが、かつては確かに「神隠し」はあった。それは異世界訪問であり、さらには社会的な死と再生の物語でもあるのだ。


●「食堂メッシタ」 (山口惠以子著、ハルキ文庫)

目黒の駅から離れた住宅地の中にある小さなイタリア料理店「メッシタ」。満希が一人で営む店だ。取り繕った料理ではなく、イタリアの家庭料理の味を、財布にもやさしい値段で提供している。この店を開くまでの、イタリアでの修行の日々、帰国してイタリア料理店で働いていた経験。そして、その店を経営していた人が末期がんに侵されて、店を閉めざるを得なくなった時に、満希の中で自分が本当にやりたかったことは何かに気付き、そうして「食堂メッシタ」を始めるのであった。その食堂も閉めることになった時、「メッシタ」のことを書きたいという常連客のライター笙子。母親を亡くし落ち込んでいた時に、「メッシタ」の料理と出会ったことで、生きる希望を取り戻した経緯があるのだ。もちろん作中にイタリア料理がいろいろ出てくるので、この本を読むとイタリア料理を食べたくなるなあ。


●「魔術から数学へ」 (森毅著、講談社学術文庫)

数学史の本というべきか、もっと広く科学史の本というべきか、森先生の独特の語り口で、占星術や錬金術が世の人の心を揺さぶっていた魔術の時代から、やがてガリレイ、デカルト、ニュートン、ライブニッツといった巨人たちが現れ、近代数学の成立への向かっていく流れを綴っている。小数や対数、そして微積分の考え方が生まれていった過程も、中世ヨーロッパの歴史と文化に絡めて述べて、なんとなく雰囲気がつかめるように書かれている。「この分野について語るほど、ぼくは詳しくない」などと断りつつも、それゆえか面白く書かれている箇所も多い。現在は数学者の専門も細分化しているが、視点を変えてみると、大胆な発想が生まれることもあるということもあるだろう。そんなことも見えてくる本である。


●「アマテラスの二つの墓」 (戸矢学著、河出書房新社)

皇祖神とされるアマテラスに関する東西二つの神宮、宇佐神宮と伊勢神宮。そもそも九州の東北部沿岸にある宇佐神宮が、なぜ天皇家の宗廟なのか。それを探っていくとアマテラスの素性が見えてくるという。ヒミコや邪馬台国ともどのように関わっているのか、独特の視点で綴っていく。もちろんヒミコがアマテラスだと言っているのではないが、「よみがえり」や「むすひ」を考えていくと、その系譜が浮かんでくるのである。アマテラスといえば八咫鏡であるが、これが天皇家に祟りをなすとはどういうことなのか、アマテラスの鏡の意味するものは何か、太陽信仰との関わりは何か、話はどんどん深くなっていく。そして、実在した皇祖の姿に迫っていく。正直理解しがたい内容もいくらかあるが、徹底的に調べ上げていく姿勢には感心する。


●「幻の惑星ヴァルカン」 (トマス・レヴェンソン著/小林由香利訳、亜紀書房)

ニュートンが確立した力学理論によって、天体の動きが正確に記述できるようになった。しかし、どうしても微妙なズレが観測結果に出てきてしまう。水星の軌道のズレに悩まされた科学者たちは、水星のさらに内側に未知の惑星があると考えた。そうすれば全てうまく説明できるのだ。その未知の惑星は「ヴァルカン」と名付けられ、その発見に心血をそそいだ。そして、発見されたと思いきや、誤りだと分かることの繰り返し。それでも科学者はヴァルカンを追い続けた。アインシュタインが現れるまでは...。水星の軌道のズレは、アインシュタインの相対性理論で説明できることが分かり、ヴァルカン騒動に終止符が打たれたのだ。これは、ヴァルカンに絡めた科学の進歩の物語である。
1 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2023年02月>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728