11/22(木)、静岡文化芸術大学の授業[保存と修復]の聴講第8回目。
今回のテーマは保存の一手法としての伊勢遷宮。
講師 杉山知太郎
先週は東大寺を復元しようとする試みについてDVDを見た。
例えば色彩は、太陽光で褪せていく。
劣化の要因は、人為的なものと自然によるものとがある。
人為的なもの；
・戦争 東大寺は源平合戦時と戦国時代の2度戦火で焼失している。興福寺も同様である。
・イデオロギー ギリシアマーブルは白でなければならない、という間違った考えが及ぼした被害。
・盗難 エジプト他、貴人の墓荒らしの横行。
自然によるもの；
・害虫 シロアリ,ゴキブリ,キクイムシetc.
・害獣 シカ,ヤギ,コウモリ,ハチetc.
食害や糞害、等。
・光(太陽光) 浮世絵の黄色は植物由来のものしかない。劣化は早く激しい。
・雷→火事
・津波 東日本大震災で、岡倉天心の六角堂(五浦)が損壊。
・台風、地震
鴨長明の『方丈記』には、こうした災厄について、繰り返し書かれている。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしない」という無常感の形成は、その対策がないというところから来ている。
・温度･湿度･空気
この3つの円(条件)が重なると、劣化しやすい。
条件が揃えば発火点に至る。
保存に適するのは温度20℃、湿度55〜60%の持続。
銀、空気により酸化すると、黒ずんでしまう。
小型･軽量の物は火事の時持ち出せるが、大型の物、建造物等はそうはいかない。
◆伊勢神宮
以上から、物を保存するのは極めて難しい。(*)
(*)物の保存で最もうまくいっている例=東大寺正倉院。1250年前から宝物の保存。
「正倉院」とは奈良時代は「蔵」を表わす普通名詞だった。正倉院は全国各地にあった。
しかし、残ったのは東大寺のそれのみ。他は全て失われた。
そこで、発想の転換。
物でなく、マニュアル･作り方･ソフトを保存する=遷宮、20年に1度の建て替え。
伊勢神宮の遷宮の手法について、DVDで見る。
土地は左右に同じ面積で用意されてており、20年経ったら全く同じ物を隣に造り、古い物は取り壊す。
永遠の若返りの繰り返しとも言える。
仕事は遷宮の10年前からスタートする。
木材 の選定。伐採。寝かせて乾燥に5年かかる。木の質によるアバレを防ぐ。
衣類は養蚕からスタートする。
蚕、桑、繭…
生糸、染色…
全て一から決められたマニュアル通りに作り出す。
全国支部では、資金の準備。
伊勢の人々総出での木材の運送、これが祭と一体化している。
膨大な時間と金を必要とする実態。
ログインしてコメントを確認・投稿する