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2017年12月16日00:15

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日記に載せてなかった?数作

『混』


酔っぱらった月は赤くにじんで激しく叫ぶ
“ダメだダメだ、全部ぶっ壊せ!”
四角いモザイクが灰色に光って耳元で囁く
“イイさイイさ、色は後で取りもどせ”

目は開けても閉じても同じ世界
しゃがんだアスファルトに埋まる小石
雑踏にそれぞれの行進曲が鳴り続け
道路の中央で干渉の波が爆発する

走れ!無秩序の舗道を
叫べ!欲望の窓に
“それじゃぁ、 僕はここで、失礼します”



『誰でもない』


私は誰でもないことに気づいた
すれ違う誰もがそれぞれの人生を生きている
誰もが私を見て
私のことを誰でもないと認め
過ぎ去っていく
その人々の誰もがまた
誰でもない


      『薄紅の命』


    夢に去っていく人の背を
    風に散る花が降り隠す
    つまずいて地に触れた掌に
    踏みしだかれた花びらの色

 とても、生きて行ける気はしない出来事でした。私を背にして去り行く彼の後ろ姿に色は無く、代わりに、あまりにも鮮やかな色で風吹くサクラが想い出を遮るのです。二人はいつ迄も幸せで居られる筈でした。ただ時が少しだけ捻れていたのです。その後の知らせが、私の命をむごたらしくも生きながらえさせました。何故人はいつもそうなのでしょう。命が命を踏みつけて行くのです。


『他愛もない自愛』

 たとえば、私が、水に映りこむ自分の姿に恋をしてしまったとする。麗しきその人は、私が水のこちら側にいる限り、私の意のままに出来るのであるが、

 水の向こうのあの人は、私の前にいつも戸惑うように現れる。顔を近づけると、あの人の息遣いを感じて嬉しくなる。するとあの人も嬉しそうに微笑む。あの人の頬に右手で触れようとすると、
(それは駄目だよ)
 あの人はそう言う代わりに左手で私を制する。手を引っ込めるとあの人はすまなそうに微笑む。あの人はいつまでも私に付き合ってくれる。でも、指を触れる事を許してはくれない。指を触れれば、あの人の顔が崩れ、全てが散ってしまう事は私も知っている。それでもあの人のものになりたくて、今、私は身を投げる。
 あの人は冷たい。でも優しい。私の全てを包み込み、溺れないよう水面へ押し戻そうとする。でも私は決めたのです。あの人に包まれ、そして私の体にあの人を取りこむため、私は全ての息を吐きました。苦しみの中で遠のいていく視界の中で、あの人は水面で私に微笑んでいました。そうして私は気づくのです。あの人はこれから私の代わりに地上で自由に歩き回れる。私はあの人を愛していたのだと。

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