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2016年07月01日10:59

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【企画】夜の小説〜part2

【企画】夜の小説
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=47474346&id=1953488452

part2
(ちょっと小説に近づいたかな?)

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『孤独の決闘』


 xとyが引っついたり離れたりするカメラワーク。弓矢とか鎌とかを持って戦っているが勝負がつかない。いくら待っても場面が変わらないので頭をふってみると空欄ばかりなことに気づいて嫌になる。

 橋本が青木さんの真ん前でワザと俺に、
「お前、中間試験は俺に負けたろ?」
って言った時の血液が赤潮のように頭に押しよせてくるが、空欄が満たされる前に潮は沖の方に引いていく。青木さんの笑わなかった横顔が潮と一緒に遠ざかる。
「ちょっと待って!」
俺の声が四畳半の部屋の壁に吸いこまれ、空っぽの真ん中で一人突っ立っている。いや、椅子に腰かけているが、
「ああ!」
勉強以外のことに気を取られるくらいに勉強に気を取られたら良いのに。明日から始まる期末試験が俺の将来を決めるわけじゃないから、
「ふかふかの布団に包まれようぜ」
「橋本が喜ぶだろうな。満面の笑顔でお前をあざけるさ」
「青木さんは俺のことが好きに決まってる。橋本のカッパ顔なんか嫌いなはずだ」
「でも、バカじゃどうしようもないよな」
「うるさい!俺はバカじゃない!一年の時は俺の方が頭が良かったんだ」
「今は?」
「ああ!」
俺は体育もダメだし、勉強もダメだし、お喋りもダメ、顔は、青木さんは俺の顔けっこう好きだと思う。あの時の横顔が笑っていなかったのは、ふざけた橋本に腹を立てていたからだ。青木さんは、俺が勉強ができなくても好きでいてくれる。こんな数字の戦場で戦わなくても良いはずだ。

 俺は、
青木さんと手をつなぎ、学校の廊下を歩いている。教室の女子が手を叩いて幸せな二人を祝福してくれている。橋本は、可哀想に。うつむいた背中に雨が降っている。そして俺たち二人は白い教会の階段をゆっくりと歩く。鐘が遠くで鳴っている。鳴っている。鳴っている。
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