風呂場の扉を開けると
私を狂わす大きな“mushi”が居た
妻はまだ眠っている早朝
私がヤルしかない
専用ノズル付きスプレーを急ぎ構えて
噴射
激しく直にかかる薬剤を浴びながら
“mushi”は体を丸めて耐え
得体の知れない攻撃を
やり過ごそうとしている
噴射し続ける靄の中
幼少期の記憶が現れる
普段は子供で溢れかえる住宅地わきの森
(これは夢なのか)
広場中央のクスノキを背に
青い少年が俯いている
三人の少年が話しかけているようだが
青い少年は水の中
彼と少年達を隔てた水面が震えているだけ
私は声をかけた
声は水面を破り
弾けたしぶきに少年たちは散り散りになる
水から解き放たれた青い少年は
私の弟になっていた
「お兄ちゃん」
私の後ろをついてくるいつもの弟だった
私は我に返りボタンから手を離した
“mushi”は立ち上がり向かってくる
そして私は扉を閉めた
*虫の名前などについてはコメントをお避け下さい(作者は恐怖症です)
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