mixiユーザー(id:2230131)

2013年10月06日21:45

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Hot Space/Queen

 “地獄へ道づれ”のヒットに気を良くしたクイーンが、いきなりファンキーなブラック・ミュージック路線へと舵を切った賛否両論作、『ホット・スペース』。

 ソウル・ミュージックのマニアで知られるジョン・ディーコンの素養が活かされた、はじめての作品と言っていいかもしれない。ディスコ調の“バック・チャット”をはじめとして、ブイブイ動き回るベースラインで存在感を見せつける。そして彼ほどではないにせよ、黒人音楽に造詣の深いフレディ・マーキュリーもやる気満々。珍しい二人の共作曲“クール・キャット”では、これまた珍しいファルセットでのパーフェクトな歌唱を聴かせる。ロック・ボーカリストとして超一流だったフレディだが、この曲ではソウル・ボーカリストとしても一流なことを見せつけている。

 その一方で、明らかに足を引っ張っているのが、ブライアン・メイとロジャー・テイラーの残り組。この二人の出自はバリバリなロック畑なので、置いてけぼりをくらった感が強い。ブライアンは作風に似合わないハード・ロック的なギター・ソロを無理やりぶっこんで反抗してみたり、ロジャーにいたっては、一部、打ち込みに差し替えられたりで、もはや涙目必至(笑)。その貢献度の少なさはソングライティング面にも及び、黒さを滲ませるのが苦手な彼らの楽曲は、従来のクイーン・サウンドの範疇から脱することができず、中途半端なまま終わっている。

 プロデューサー的な視点で言えば、せっかくディーコンに活躍の機会が与えられたんだから、ここは彼にもっと花を持たせるべきで、そうすることによってアルバムとしての統一感も持たせられたはず。だけど今作ではいつも通りの割合で、他のメンバーのあまりよろしくない楽曲が帳尻合わせのように間を繋いでいる。
 このあたりは当時、クレジット問題でもギクシャクしていたクイーンの仲の悪さ、というか大人の事情が垣間見えてしまい、なんともいたたまれない気持ちになる。最近の例で言うと、ストロークスのジュリアン・カサブランカスがメンバーに気を遣いすぎていた時期の『アングルズ』あたりの散漫な雰囲気とどこか似てるかもしれない。

 『ホット・スペース』は、セールス的に芳しくなかった件(“ボディ・ランゲージ”を先行シングルに選んだのは明らかな失策だ)に加え、昔ながらのファンや批評家筋からも不評を買ったことで、長らく失敗作と見做されてきたらしい。思うにクイーンのコアなファンというのは、シンセを少し使ったくらいで大騒ぎするような連中なのだから(笑)、本作に対して複雑なのもよくわかる。
 ただ個人的にはそこまで悪いと思わないというか、飛び抜けた名曲が“アンダー・プレッシャー”1曲のみ(ただし本作用に用意された曲ではない)という印象の弱さもあるにせよ、この新しいアクセントを僕はわりかし歓迎している。多少の変化を課したところで、誰もがイメージするクイーン・サウンドからまったくブレてないところが逆に凄い。
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