■なまめく春
●きのう、たまに行く花の名前のついた喫茶店を
出ようとすると、いつもは無愛想で、ぶっきら棒な女店員が
「まいど、ありがとうございます」
と笑顔で声をかけてきた。
こんなことは、めったにないことだ。
パラパラ、降り出した雨は
この街をなごんで見せた。
舗道にあたった雨が土をまきあげるのか
なま温かい埃のにおいがした。
パチンコ屋の屋上の店名を書いたネオンサインが
赤と緑の配色でうるんでいた。
●春の夕暮れの
こぶしの花は、遠くから見ると
そこだけ明るく、
大きな花びらの桜が咲きほこっているようにも
見える。
大きなクスノキは深く暗い黒々とした緑の影を落とし、
はらはらと葉っぱを落としていた。
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