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2021年07月29日06:22

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詩『抜けていない殻』

『抜けていない殻』

夜、従業員駐車場へ向かう歩道上、
蝉の抜け殻、と思えば、それは歩いていた。
五十年以上生きて来て初めて、
抜けていない殻に遭遇した。
スマホを腰から抜いて撮影していると、
そいつはヨタヨタとこちらに向かい、
そして倒れて足で空を掴もうとした。
ーー俺を怖がっているのか?
ーーお前の夢は叶わなかったのか?
子供の時は、恐れる事なく虫を掴んで遊んでいたが、
何を恐れているのか、
転がっている蝉の背を爪で押しやって生垣の根元に戻した。
ーー木を掴ませてあげれば良かったか?
あくる朝、あいつは居なかった。
空に旅立てたか、
殻も見当たらなかった。
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