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2014年07月16日13:00

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■「柳田国男の語り口」　(1)

●2014年07月16日(水)　　晴れ

　▼きのうは、イイモトくんがやってきた。

　　正確にゆうと、招待したというか、
　　電話して、今、何やってる？、と聞いてみて
　　別に何も・・・との返事なので、
　　だったら遊びに来ないか、と誘ったのである。
　　
　　そうしないと、彼は遠慮して、自分のほうから
　　来ないからだ。

　　それと、イイモトくんは、ずけずけ言う
　　うちの奥さんが苦手のようで、もし妻の休みの日であったりして、
　　顔を合わせたら、また何か言われるのでは・・、と
　　内心、おびえている所がある。

　▼きのうは、そのイイモトくんがやってきた話と、
　　ジィー、ジィー、ジィーと、夜、秋の虫か、夏の虫か、
　　いわゆる地虫というのが鳴き始めたという話が、
　　普段とはちがった事で、そのほかでは、いま熱中している
　　「ホームページの補修作業」の事があるが、そんな話をしていると
　　なかなか、本題に移れない。

　　結論を先に述べておくと、「柳田国男の語り口」から
　　何を学ぶか、とくに年寄にとっては何が参考になるか、
　　という話である。

　　以下、『涕泣史談』を引用しながら、本論に入る。

　▼引用は、適当に改行した。

　　　　涕　泣　史　談

　　　　　(一)

　　　　　　いささか気まぐれな演題を掲げたが、実は是に託して国史教育に
　　　　　関する一意見を陳べんとするものである。
　　　　　その例証をなるべく意外な、今まで諸君の考えられなかった問題の
　　　　　中から択(えら)び出し、印象を深めたいのが底意である。

　　　　　歴史の学問は、常に「時の或る長さ」を出発点とする。

　　　　　現在がいかなる時であるかを考えんとする人は、誰でも知らず識ら
　　　　　ずのうちに、この「ある期間」の前と後との差を求めるであろう。

　　　　　そうして世の中が今は前とは変っていることを、いかに漠然とでも
　　　　　認めぬ者はないであろう。
　　　　　ただし教育は、けっしてこの程度の成功をもって安んずるわけには
　　　　　行かぬ。
　　　　　「漠然」はかえって全然変化を認めないよりは有害である。

　　　　　その害はすくなくとも二つ、一つは何も彼も、時さえ経過すればみ
　　　　　な無差別に改まってしまうものと速断することで、もとよりそんな
　　　　　筈はけっしてない。
　　　　　この弊害は目下各方面において力説されているものである。

　　　　　古今一貫もしくは永代不易のものが必ずあるということ、これは顕
　　　　　著な実例があって疑うことのできぬものであるが、さらに進んで何
　　　　　と何とがそれであるかを学ぶためには、やはり一方の変ったものの
　　　　　変り方を、明瞭にする必要がある。

　　　　　第二の弊害は。いわゆる歴史の偶然を無視する点である。
　　　　　すなわち古今の変遷は実は幾通りもあり得だのに、何らかの事情に
　　　　　よって、その中のある一つの道を通って来たのである。

　　　　　それをこうしか変りようがなかったのだときめてしまう態度が再批
　　　　　判されねばならない。

　　　　　人は何かというと「なるようにしかならぬ」といいたがるのである
　　　　　が、かかる立場は我々の将来のために、かなり大きい損害を与えず
　　　　　にはすまない。

　　　　　こんな愚かなあきらめを棄てさせるためには、できるだけ具体的に
　　　　　その路筋、すなわち成功と失敗のちがいを、並べて比較しなくては
　　　　　ならぬと思う。

　　　　　　国民がこの時代の変化の原因に参与し、かつこれを左右した部分
　　　　　は確かにあるのであるが、それが計画と名づけ得るごとき意識を欠
　　　　　く場合、換言すれば大小の群の自然行動と見られがちな場合には、
　　　　　この過程の究明は実は容易な業ではない。

　　　　　古くは名の聞えた二三の指導者の意志または徳望に、これを帰する
　　　　　考え方があった。

　　　　　中世以後は愚管抄や読史余論などのごとく、これを大勢などと名づ
　　　　　けて、底に何とも知れない動力を認めんともしていた。

　　　　　また時の力という詩人風の言葉を用いる者があり、あるいは民衆の
　　　　　力などと表現した人もいたが、これとてもやはり右にいう「漠然」
　　　　　の亜流であって、従って究極必ず分析ぜらるべきものであった。

　　　　　そのためにはまたこの変化の実情を詳かにすること自体が、もっと
　　　　　心重大な要件とならねばならぬ。

　　　　　今日の歴史研究はいわばその準備時代と解せられる。
　　　　　しかもその準備がけっしてまだ十分でないことを知る者にとっては、
　　　　　そうたやすく学者たちの原因説明に対し、信を置き得ないのはむし
　　　　　ろ当然のことであろう。

　　　　　
　▼『涕泣史談』は、(一)から(十三)までの節に区切って、論を述べているが、
　　以上が、(一)の全文である。

　　柳田国男が「歴史」というものをどのように考えていたか、その一端が示され
　　ている。
　　
　　「国民がこの時代の変化の原因に参与し、かつこれを左右した部分は確かに
　　　あるのであるが、それが計画と名づけ得るごとき意識を欠く場合、・・・
　　　この過程の究明は実は容易な業ではない」

　　柳田は、「計画」という言葉を使い「意識」を問題にしている。

　　そして、とかく「漠然」と捉えられやすい時代の変化の実情を詳らかにする
　　ことこそ、これが歴史研究の目的である、としている。

　▼それにしても、「涕泣史談」とは、何と迂遠なところから攻めるのであろう。
　　また、私のいう、歴史に対する「年寄の役割」とは、どうつながっていくの
　　か・・。

　　　★★★　　★★★　　★★★　　★★★　　★★★

　▼「音楽掲示板」案内 ――――　2014/07/16
　　――　" Music is Love in search of a word. "　―――――――――――　
　　