mixiユーザー(id:2230131)

2011年11月08日20:52

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Neon Bible/Arcade Fire

 あのマイケル・ムーアですらドキュメンタリーの題材にすることをためらった「宗教」―――。もっと言えば、ブッシュ政権末期にアメリカ全土を席巻したキリスト教福音派…。そういった諸々に対する間接的な言及が含まれるとされる、アーケイド・ファイアの2作目『ネオン・バイブル』。

 こういう話をしてると聴く前から頭でっかちになりそうだけど、単純に音楽的にも宗教を思わせるような神々しいサウンドで満ちている。テーマの重さに比例するように壮大で、重苦しく、厳粛なムードで作品全体が統一されている。わざわざ教会を借りてレコーディングしたらしく、“マイ・ボディ・イズ・ケイジ”でのパイプ・オルガンなんか、宗教的なのを超えて悪魔的ですらあり(笑)、僕なんかはミュージカルの「オペラ座の怪人」を連想したくらい。オープニングの“ブラック・ミラー”も、ある種ゴシック・ホラー的だし。彼らに言わせれば、かつてのように楽屋ノリでワイワイやれるようなのどかな時代じゃなくなった、ということなのだろう。

 さらに、前作『フューネラル』でのギター・ロック的なサウンドはやや後退し、代わりにストリングスやパイプ・オルガンが前に出ることで、より一層オーケストラ編成を意識したゴージャスな音作りになっている。あるときは、ホーンやバイオリン等をまるでノイズ・ギターのようにアクセント的に扱ったり、またはその逆もあったり。まさにアーケイド・ファイアでしか得られない大胆な発想が活きている。これだけ隅々まで作り込まれたサウンドにも拘わらず、まったくオーヴァー・プロデュースに感じられないのは、スタジオでのポスト・プロダクションに時間を掛けたからだろうか。結果として、作品のスケール感も格段に向上。持ち前のエモさ(笑)に拍車が掛かる。

 ただその反動として、良い意味での「垢抜けなさ」、例えるなら「街の交響楽団」を連想させるような…彼ら特有の牧歌的な魅力がスポイルされてしまっているようで、そこは寂しいところ。楽曲自体の出来も『フューネラル』には劣る。まあ、言ってしまえば、インディ・バンドが陥りがちな典型的な2ndアルバムということですが。

 だけど、デリケートな問題にも果敢に踏み込んでいく、その硬派なアティチュードは高く評価すべし。さらに、「アメリカに住みたくない」というリベラル派が共有していた内なる逃避願望を見事にシンクロさせてしまう―――サウンドそれ自体が放つ濃厚な「メッセージ」の香り。以上の点において、アメリカ国内での本作の価値はひとまず留保されたと言っていいでしょう。次作はさらに評判良いらしいので楽しみ。
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