「
もっと現代ロック/ポップを聴かなければ」。
第一弾は、アーケイド・ファイアです。
彼らが出てきたころ、同業者に受けそうな変わり種バンドのひとつくらいにしか思ってませんでしたが、いつのまにかグラミーも取ってアメリカを代表するロック・バンドみたく言われてます。ブルース・スプリングスティーンを引き合いに出して語られるほど。
サウンドが全然違うじゃないかと思われるかもしれないが、意外とこの二組には共通点が多いのだ。まず、現代アメリカに対する鋭い批評眼が備わってるということ。要するに、歌詞が社会派ってこと。
そしてもうひとつ、誤解を恐れずに言うならば、両者ともエモいってこと(笑)。
もちろんアーケイド・ファイアはエモ・バンドではない。ざっくり言うと、USオルタナティヴ・ロックのスタイルに、アコーディオンやバイオリンといったクラシカルな楽器群を絡めた感じ。そんなオーケストラ仕様(ビッグ・バンドまではいかない)な彼らの演奏は、ときとしてリスナーにエモな連帯感をもたらす。
本作『フューネラル』でも、マッシヴ・アタック“
アンフィニッシュド・シンパシー”を彷彿させるグロッケンの連打“ネイバーフッド♯3(パワー・アウト)”から、テレビで何度流れたかわからない“
ウェイク・アップ”を筆頭に、祝祭感たっぷりのアンセムが目白押しになっている。
彼らのライブを一目でも見たことがあるのなら、その天上知らずのポジティヴなヴァイブに思わずそこに加わりたいと思った人も少なくないはず。僕も同じ。彼らはCDじゃなくて生で観てみたいと思った。そして言わずもがな、そうやってオーディエンスの連帯感をひたすら煽っていくパフォーマンスは、ブルース・スプリングスティーンがもっとも得意とするところだ。
壮大なアンセムを力いっぱい鳴らしながら、それとは対照的なこじんまりとしたアットホームな雰囲気を押し出しているのが、彼らの最大の特徴であり、長所じゃないかと思っている。アンセムと言っても、彼らの楽曲にはオアシスのようにビッグなメロはない。インパクトにも乏しい。
だけど“ネイバーフッド♯2(ライカ)”など、アコーディオンによる郷愁感を煽るヴァースと、力強いストロークに傾れ込むコーラスとの対比が実に良い。
ハウス・バンドらしい保守的な精神に、民衆をひとつにまとめるアンセミックなサウンドというか。これはアメリカ人好きそうだわ。(僕も好感持ちました)
結局アーケイド・ファイアとは、9.11以降、すっかり満身創痍となりつつあったアメリカ人に対するファンファーレであり、またすっかり頭に血が登った一部にとっては強烈な冷や水として機能したのかもしれない。
「葬儀」と名付けられた本作のテーマも然り。まるで死者の魂を鎮魂するかのごとく、彼らはその傷だらけの身体でがむしゃらに行進している。けたたましくラッパを鳴らしながら。
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