■「本を買う」のはビョーキである
●一般的な話は別として、ここは特殊・個別的な
私の場合についてのみの話である。
昨日、日記に「
本を買ったころ」というのを書いたところ、
「カホル君」さんから、書き込みをいただいた。
実際、私はどちらかと言えば、（いや、基本的に）、
お金に関しては、きっちりしたほうで、金銭授受の受払い管理は
もとより、金銭の消費に関してもきっちりしており、浪費する
タイプでは全然ない。
まぁ、それはお金をあまり所有していないものが、世間に
迷惑をかけず生計を立てていこうとすれば、これは当然の責務である。
だから、「出（いず）るを制して、入るを図る」ようにしなければ
ならないわけだが、入るを図ることができなければ、勢い
出（いず）るを制することになる。
そして、「必要な出費」をケチケチするのは、私は嫌いだから、
反対に、「ムダ」はとことん排除するよう努めなければならない。
問題は、どんな出費が「不要でムダ」か、その線引きである。
そして、これには一般的回答というものがない。
●まず、食費を切り詰める。かと言って、栄養失調や、ゆるやかな
死につながるような食生活は、元も子もない。
「食」のあと、「衣」「住」も、これも最低文化的・健康的な生活
レベルであればいい。
（妻には、「年寄りのだらしない格好はみっともない」と
言われ、できる限りアカヌケした格好でおりたいとは
思っている）
「衣・食・住」とそろえば、もう、これで生きていけるのだ。
あとは、本来、「不要不急」のものばかりである。
ところが、人間でも動物でも、高級化すると、この「不要不急」の
部分が発達し、脳などは肥大化して、「遊び」や「文化」といった
「自由度」をもつものに進化していくらしい。
●幸いにして、私の場合、この「遊び」や「文化」的領域においても、
生来的に奢侈（しゃし）の傾向が少なく、まぁ「分」にあった
「遊び」と「文化」があれば、あまり退屈もしない。
スポーツも賭け事も、その才能がないのが幸いして、その方面の
ゴルフや野球や釣りや水泳や、といったことでお金を使うことが
ない。
また、マージャンも競馬も競輪もやらないし、宝くじも３０年来
買ったことがない。
（あっ、パチンコ！！
これ、いっとき、よくやりました。
いまは、全然やりませんけど・・）
●では、「衣・食・住」以外でも、あんまりお金使うことがない
とすれば、あと「貯金」をするか、というと、実はなかなか
そうはいかないのである。
だいたいが、まず、最低限の「衣・食・住」で収入のほぼすべてが
消えてなくなっている。
しかも、我が家の場合、コツコツ貯めても、どうしてか、
お金の本当に必要なときは、ドバッーとつぎ込まなければ
ならないようなことが、幾度となくあり、それは本当に必要な事項で
あるので、私も一切、惜しむことなく、ドバッーと使う。
●そのようなことであるから、まぁ、何にも残っていないに等しいが、
それでも幾ばくかの金を工面して、「自由度」のある「不要不急」の
部門へ支出し、私も人並みに「遊び」や「文化」を享受したいと
思う。
しかし、才能のない者の悲しさ、絵画・音楽・芸能・園芸など
どれをとっても才がないばかりか、似合いもしないのである。
わずかに残ったのが、「本」を読むくらいのことである。
●この「本」を読むこと、についても、本来、私は「読書家」では
ない。子供のころから、「文字」を追うのが苦手である。
どうせ追うなら、「魚」を追っているほうが楽しい。
しかし、頭をぶつけたり、困ったりしたときに、相談する相手や、
すぐ答えてくれるような、信頼できるような「人」がそばに
いればいいが、いないときは、「人」の代用品で、「本」に頼る
ということになる。
●何事によらず、依頼心というのは禁物である。
「人」に頼るのも、「本」に頼るのも、本来は、やむを得ず
そうするのであって、必要もないのに「人」に頼ったり、
「本」に頼ったりするのは、基本的にそれは「依存症」であって、
「ビョーキ」である。
●また、「遊び」や「文化」で、「本を読む」ということであれば、
これは、もともとが「不要不急」のことであるから、このことに
拘（こだわ）ること自身が「ビョーキ」の源である。
もし人間が「
ホモ・ルーデンス」ということであれば、これは
人間は基本的に「ビョーキ」である、と宣言しているのに等しい。
●変なところに「論」をもっていっているようであるが、現実的な話、
私の場合、「本を買う量」と「ビョーキ度」には、正の相関が
あり、医学的にもこれは証明されている。
（もちろん、これは、担当医師や大学の先生が証明したのではなく、
私が、私自身の身体と精神において、証明したことではあるが・・）
（ちなみに、このときの「ビョーキ度」は、「躁（そう）状態」
の度数を示している）
過去、現実に起きていたこと、それは、長い間、「本」が買えなくて、
ずっとずっと辛抱しなければならない抑圧された時期があり、
本人はそれを「欝（うつ）」だとは気づいていなかったが、
これは、明らかに症状は「欝」であった、ということになる。
だから、２時間もかけ「本」を選定しておきながら、結局
一冊の「本」も買えない、という状態を来たしたのである。
●本人が「欝」ということに気づいたのは、妙なことではあるが、
「躁（そう）」を現実に、発症したときである。
どこかに書いたが、私が震災の年に、
「もう、生協をやめようと思う」
と、ついに、妻に打ち明けたときのことである。
妻は、
「ああ、いいよ。やめたらいいじゃないの。
なんとでもなるよ」
と、言ったのである。
この妻のひとことで、私は舞い上がってしまったのだ。
これまでの、長い長い抑圧が一気に吹き飛んで、それで
糸の切れた凧のように舞い上がった。
どれほど、うれしかったことか。
●まぁ、一気に解放するのも考え物である。
水深５０メートルの海底から、一気に水面まで浮上すれば
肺が破れ、潜水病にかかるようなものだ。
私は、自分が「躁」になって、はじめて、これまで自分が
「欝」であったことを知った。
（でも、「欝」でも、３０年も４０年も、病院にも医者にも
かからず、何とかやってこれたことにも感謝したい）
遅きに失した感は、どうしても否めないが、ようやく
私は当たり前のことに気づいたのである。
そう、「不要不急」のことに心わずらわしていたことに・・。
「なんとしてでも、生きられる」
そんな当たり前のことに、５０歳になってようやく気づいたのである。
まぁ、アホの見本みたいなものである。
●まぁ、とりとめもない話。
人間、「不要不急」は「ビョーキ」の源（もと）。
そして、私が「本を買う」のも「ビョーキ」である。
ひとつは、風邪みたいな「ビョーキ」を治すために「本」を買う。
だから、当然、「本」を買うとき私は「ビョーキ」になっている。
ふたつは、「本」を「ビョーキ」でもないのに、どんどん買う。
これまた、「不要不急」の「ビョーキ」である。
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