ちろ 東山三十六方、静かに眠る丑三つ時、四条河原ににわかに起こる剣劇のしびき――！ つろ、にわかに口からブオーと煙を吐く。ミューゼルたち慌てると、そこいらじゅうから十数人のつろとてろが現れ、一斉に囀(サエズ)りながらつつき回す！つろたち チュッ

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さき （歌、途切れ、ふと夢のように）ロクちゃん。ロク へえ。さき さいきん夢って、みる？ロク さあ、みたかも知れませんが忘れッちまいました。さき 私も。ふふ。ロク へへ。さき でも私、ゲンジツもすぐ忘れちゃうの。夢もゲンジツもおんなじようにすぐ忘

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ちろ そんでも、ちっとアタマ冴えた。んじゃね。しゅーっ。 と突然、一瞬で樹上に消える。ぱっこ ムム、うちの赤んぼより忍者っぽい！　ちょっと悔しい。谷蟆 し、質問。せんせ 何かね。谷蟆 あれ、赤んぼじゃないでしょ。せんせ うむ、正確には胎児だ。谷蟆

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ぷーこ、後ろから抱きついた。ぷーこ …スキ。谷蟆 な、何だって？ぷーこ （イカレて）ホレテ、ハレタワ。ウーン、モウダメ。谷蟆 （狼狽して）やめろ、君はだまされてる。ぷーこ ダマサレテテモ、イイノ。アタシヨリ、ソノヒトガイイノ？　ネ、（見つめて胸

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せんせ、数珠を出した。「おおん…」といいかけると、急に頭上から「あー」と声がして、バキバキザザザと枝や何かごと、谷蟆が落ちてくる。まえまわり受け身を試みるが失敗し、ノビる。三人、逃げ散らかる。せんせ （こわごわと）──追っ手か？ぱっこ （同

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レーヴェル　（鍋のぞき）あらあら、空っぽ！　いったい何杯食べたの？ぷーこ （寝たまま）がうう。レーヴェル　ニンゲン語でね。ぷーこ 八杯。ぽんこ えーすっごぉい！　ウチなんか十二杯だよ。ぷーこ おメーの方がすごいだろっ。ぽんこ あ、そーか。うー、

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いつか、雑踏消えて、三人のみ。レーヴェル、不気味に笑う、ククククク…。ぽんこ おじさん、ひとさらいでしょ。レーヴェル　ドキッ（大当たり）。──いや、いやいやそのね。腹さ減ってんだへ。ちょうどウチの出し物ぁ食い物(モン)だしよ、ちぃと変わった見

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おじや☆ダンス 時　いちおう現代 場　関東、旅路 人　ぱっこ（及びその息子、たろ） 　　ぷーこ（同じく、ちろ） 　　ぽんこ（同じく、つろ／てろ） 　　せんせ 　　さきちゃん（塔の美少女） 　　谷蟆(タニククー)（かえるの王子） 　　ミューゼル（殺し屋

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熱帯夜熱帯夜逃げても逃げても肉親なり（浪曲風に）あん？　ガキの頃の親父の生業(なりわい)だぁ？　おい那山、ケンカ売ってんのかおめえ、いいたくないことだってあるんだぞ俺にもよう。はん、まあいいや。生業はなぁ、いろいろあったよ。まず高利貸だろ。皆

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荒井 ――その時、さっと涼しい風が吹いて来たと思うと、静かだったポプラがぐらぐらっと揺れ、シャラシャラシャラシャラ、何百の鈴が一度に鳴りました。何千、何百という鈴でした。そして小石の皆はどこからか不思議な声で、聞き慣れたあの歌を唄うのを聞い

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渦野 （靴、手にし）おほ、すばらしい！　第二期症状、正常の理性状態プラス固定観念！　行きましょう不二男さん、そっちの世界へ。謝礼を増しますよ、不二男さんっ。 景色、めらめらと真っ赤に暗く変わり――、どこかで柱時計がまたボーン、と鳴る。と、遠く

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駆 どっどうして。江藤 さあな。のれえからだろ。テメエが追いつけねえもんだから、手っ取り早くこっちを鉄パイプやゲバ棒でキメちまおうってのよ。駆 そんなの無視したらいいじゃん！江藤 何だと？ 江藤、ウィリーして駆を振りおとす。駆、転がる。駆 あだだ

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稲 はん、（ひとり）どいつもこいつもクルマクルマクルマ…！渦野 ――あ。稲 え？渦野 いやな笑い方した。稲 そう？渦野 それがカッペのお転婆が広域首都で身につけた、都会風のナニですか。稲 うっさいわね。渦野 車のハナシなんかして媚態ふりまき。愛車が

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第三場 光の谷 闇。 どこかで柱時計が、十二時を打っている…。 いきなり、恐ろしく明るい冬の空。 と、不二男、ふと目覚め、ぼんやり辺りを見回して――、（音楽 A.Berg "Violinkonzert――Andante-allegretto"）不二男 女萱(メガヤ)の野原の底にいては世界

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イワシ連 おおっ！　ざらざらざら、ざっぱーん、どよどよどよ。 その御輿、回転する。運転室、またコール。不二男 はい？マダム ここお、プールなのお。不二男 またあんたか！（切ろうと）マダム 待って。（色っぽく）あなたの熱を、分けて。不二男 お角が違

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ベニート 何だおめえ、日本人、喧嘩売ってるのか？ムスタファ （割って入り）この男のペシミズムは持病のリューマチみたいなもんだ、気にしないでくれ。曽根よ、そう卑下したものでもないさ。北京の橋頭堡が崩れれば、ここからカザフまではわずかに一週間で行

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稲 （ややはしゃいで）芝居だと思ってんでしょう、あんた、疑い過ぎよ。不二男 それが俺への一番の誤認識だよ。いい加減分かったらどうだい、稲？　いちどだって俺は嫉妬に身を焦がされたことなんかなかった。愛情が嫉妬をともなわないのは異常だろうか？　異

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不二男 （開いてあったノート読み）ゴミの平均つかみ量二・五トン、投入間隔約一〇分、一日累計約三四〇トン。四台のガオリンが、四機の焼却炉に、日々実に一三六〇トンの可燃物を投入する。それでも、一都二県の津波的なゴミの襲来に対処するにはあまりにも

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那山 汚れたい願望、みたいなものが僕にはあるんです。愚かな願望です。愚かなだけじゃなく、失敬な願望です。誰に対して？　さあ、直接は、徳山先生や、僕の描こうとしてきた、そして実際に描いてきた、半島渡来の人々に対してでしょうか。でも実は彼らの怒

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第二場 テンペルホフ 闇。 ゴンゴンゴン、ガシャーン、と闇に響く、重機の唸り。そして、偶然のようにぼうっと照明された高みに、刹那、不二男みえる――。不二男 何かいったか、俺のガオリン。その、雷竜の首よ。滅びなんとする地質時代の残骸よ。江西省景徳

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ムスタファ （横たわったまま）起きてるのか。曽根 …ああ。ムスタファ 明日、辛いぞ。曽根 ああ。――ねえ、ムスタファ。ムスタファ ううむ…何だよ？曽根 あんたは何だって、この高原に来たんだ？ムスタファ あん？　今さら何だ。長話はごめんだ。ハイホァ

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渦野 仕合わせに田舎で暮らしたまえ。今度は俺の番なのさ、うははははは！ 笑いながら暗転。――風の向こうに、工場の響きのような低いうなりが聞こえ、その空に、ぼんやりと巨きな黒い陰。どうやらそれは起重機である。ひんやりと、暗い煙が降ってくる。段ボ

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駆 ――両手にバラ。ふざけろよ、もう。 ラスコリニコフの腕を持ち上げてみると半眼にしてもうぐったりと生気もない。駆、迷うが、ここは急場と先に稲にまたがりたどたどしく心臓マッサージを始める。駆 僕たちにはたったひとつの死に方しか許されていないの

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神曲 時　ある別の二〇二五年、冬 場　ある別の首都南部、神奈川 人　駆(カケル) 　 未散(ミチル) 　　ラスコリニコフ　――以上、十四歳 　　　× 　　稲 　　不二男 　　那山 　　曽根 　　露地男 　　江藤 ――以上、二十一歳 　　　× 　　渦野 ――三

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神田 私はさるかに合戦的な民話が元だと思うわ。すんげぇ美味い栗の木があって、みんなその栗を食べたい訳。だけど、栗の木は一本。だから取り合いになるの。そりゃあもう酷い取り合いよ？　最初はちょっとした喧嘩が、村人同士の戦いになり、村同士の戦いに

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ツヨシ 待って待って待って待って。ちょっと待ってって！神田 何よ、ツヨシ 二人はさ、こんな季節に海に飛び込んだら風邪ひくから死ぬっていいたいんだろ？カンタ それ以前に飛び込んだら心臓麻痺起こすんじゃねーかなぁ。ツヨシ 勿論俺だって身ぃ一つで群馬

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第二場 人魚と人間のあいだ ＃０１『武井会議』【Ｍ】 武井が出てくる。 おめかししてる。【照明＊この場中、指定なし】武井 ないわ。ないない。ちょっと！　未奈子と李沙はまだ？ 武井、バッグから煙草ケースを出す。武井 あ？　何ここ、完全禁煙なわけ？　

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堕ちよ生きよ、地に充ちよ 島村盛助「村の宝」より 時　ばくぜんたる過去 所　ばくぜんたる東北 人　語り手たち 　　白い神（旅人） 　　黒い神（お爺さん） 　　お婆さん 　　犬ども 　　こどもたち 　　村人たち 　　長者 　　神主 　　とっくり その他

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アンドレア・ゲイルフォーゲル さあ、ここからはふたりだけのお芝居です。ご覧の通り、みんな追い払いました、もう邪魔は入りませんよ。あなたというヒロインを、この舞台は待っていたのです。デクトラ 信じられない…いったい何をしているのよ！フォーゲル

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