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2015年06月24日01:39

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004 おじや☆ダンス 4/

せんせ、数珠を出した。「おおん…」といいかけると、急に頭上から「あー」と声がして、バキバキザザザと枝や何かごと、谷蟆が落ちてくる。まえまわり受け身を試みるが失敗し、ノビる。三人、逃げ散らかる。

せんせ (こわごわと)──追っ手か?
ぱっこ (同じく)いやぁ…。
せんせ じゃ何だ?
ぽんこ ヘンなやつだ!
ぱっこ そりゃ分かってる。(覗きに行き)…あーっ!
せんせ (伏せて)どうしたっ?
ぱっこ ここ、こ、こいつ…、
せんせ こ、こいつとドイツがドーナッツ?!(動揺している)
ぱっこ 首がない!
せんせ ノザラシか! 切れてんのか。
ぱっこ そうじゃなくて、首が太い。
せんせ (ホッとして)すると切れてはいないんだな、ドーゾ。
ぱっこ つーか頭からいきなり胴です、ドーゾ。
せんせ もっとよく観察してくださあい、ドーゾ、ぼっ。
ぱっこ えーと、あっ。大変大変、ドーゾ、ぼっ。
せんせ (不安になり)大変だけじゃ分かりまへんドーゾ、ぼっ。
ぱっこ こいつ、ヘソもないっすドーゾ、ぼっ。
せんせ 何、ヘソ? 人みな、ヘソのないものはなーいはずじゃあーりまへんか。ドーゾ、ぼっ。
ぱっこ ンなこといったってないものはない、なないのないのないのすちゃらかちゃんちゃん、ぼっ。
ぽんこ 首がなくて、ヘソもないもの…、首がなくて、ヘソのないもの…。
谷蟆 (さっきからうす目あけて、期待して待っている)
ぽんこ うーん首がなくて…(悩む)
せんせ 分かった。(手、あげる)
ぽんこ はい、ガンジローさん。
せんせ 椅子。
谷蟆 (寝たままずっこける)
ぽんこ ウン、確かに首がなくて…ヘソも…ない。
せんせ よってこいつは椅子だ。(断定)
ぱっこぽんこ そうか!
谷蟆 (大声で)椅子じゃなあい!
三人 うわっ。(ひっくり返る)
せんせ なんかいったぞ。
ぱっこ 椅子じゃないっていったみたいよ。
せんせ ナニ、椅子の分際で。
谷蟆 (起きて)椅子じゃないってば…
三人 わっ。ぱっぱっ。悪霊退散。(塩まく)
谷蟆 うわっぷぷぷ。この…(なお、塩まかれ)ちょい…それ塩か…、
せんせ 溶けたらナメクジだ。
ぱっこぽんこ なるほど首もヘソもない。
谷蟆 (さえぎり)そのナメクジを食う方ですっ。
ぽんこ (疑わしそうに)…フランス人?
谷蟆 うぃ、せこ、じゃらぞーぬ、せ、ぽわ。(なお、豆まかれ)てて、痛いイタイ。
ぽんこ 鬼だった。
谷蟆 ちがーう。撒き方やめ。紹介しましょう。私はかえるの…
ぱっこ (あっさり)何だかえるか。
ぽんこ そんならそうと早くいえばいいのに。
谷蟆 はあ。で、名前は…
せんせ (聞かずに)で、用は?
谷蟆 用?
せんせ 用があったから出てきたんだろ。
谷蟆 とんでもない。
ぽんこ (すぐ)いや。飛んできた。
せんせぱっこぽんこ ぎゃはははは。

間。

せんせ だから何の用なんだね、君は。
谷蟆 ですから用なんて別に、
ぽんこ (すぐ)いや。ヨーダに似てる。
せんせぱっこぽんこ うひょひょひょひょ。

間。

せんせ だから間をつくるなってんだよ、ヒマじゃないんだから。自己紹介しなさい十七文字以内。
谷蟆 え?…で、ですから、あーと私はつまるところ、
ぱっこ ブー、時間切れです。落第。
谷蟆 そんな。
ぱっこ 追試。(ビッ)
谷蟆 そこを何とか。
ぱっこ ダメ。追試かワイロ、どっちか。
谷蟆 え? じゃ、ワイロ。
せんせぱっこぽんこ おお!
谷蟆 お?
ぱっこ 中身は。
谷蟆 桃缶と豊年サラダ油の底に隠して、金一封。
せんせぱっこぽんこ おおお!
谷蟆 おお?
せんせぱっこぽんこ 官僚ニッポン!
谷蟆 合格ですか。
せんせ そんなわけないだろ、簡単に不正に走りやがって。ぱっこ、縛れ。
ぱっこ (狂言で)かしこまって候。しからば、ざらり、ざらり。(あっというまに縛る)
谷蟆 何ですかこれ…ちょっと、あんたたちっ。
せんせ 川に放り込むのが良かろう。
ぱっこぽんこ それは一段と良かろう。(担ぎ上げる)
谷蟆 タンマ、タンマ!
せんせ かえるじゃによって平気のはずじゃ。
谷蟆 縛られてたら平気じゃない!
ぱっこ (なぐさめて)仕方ないよ。
谷蟆 どこが。
ぱっこ スパイは大概、スマキにされて放り込まれるもんなんだ。
谷蟆 スパイ? おい、何か勘違いしてるぞあんたら。
ぱっこ ほう、じゃ、何者だっての。
谷蟆 エスニック料理に欠かせないものは?
ぱっこぽんこせんせ うーむ…?(頭かかえる)
谷蟆 スパイス。

間。

せんせ やっぱり放り込もう。
ぱっこぽんこ がってん承知!
谷蟆 待ってくれ。心を入れかえる。いや、頼みがあるんです。
せんせ つまらんこというと後がないぞ。
谷蟆 実は、助けていただきたい。
せんせ スパイは助けないといってるんだ。
谷蟆 私じゃない、塔のお姫様を。
せんせ お姫様?
谷蟆 正確にはお姫様じゃないんです。部屋に引きこもりがちだった娘さんで、モーソーがだんだん拡大して自分をグリムの姫君かなんかだと思っちまったんです。かわいそうな子でね、父ひとり子ひとりだったのが、世の中がこんな風になっちまって、親父はうちに寄りつかないわ、ガッコも警察も頼りにならないわで、くくく、くーくー。
ぽんこ クークーだって。ハトみたい。
谷蟆 ハトじゃなあい! 谷蟆です。
ぱっこ あん?
谷蟆 (ジェスチャーで表現)
ぱっこぽんこ タ・ニ・ク・ク・ー。
谷蟆 おーいえーす。
せんせ なるほど。で、どこにいるんだね、その娘は。
谷蟆 上です。
せんせ 塔なんてないぜ。
谷蟆 木の上にいるんです。
ぱっこ これって…クスノキ? こんな夜に木のぼり?
谷蟆 このご時世じゃ、何でもありです。
せんせ ふむ。百歩ゆずって君のはなしが本当だとしても、ワシらにとって興味はないな。助ける相手はいくらでもある。
谷蟆 そうかも知れません。でも行きずりの相手を助けるのが、あんたら旅にんの流儀じゃないのか。
ぱっこ うーん、そういわれると弱いなあ。(やがて)――せんせ、スマキがお決まりならごたごたに巻きこまれんのもお決まりだよね。
せんせ …おまえ、人を信じすぎるんじゃないか?
ぱっこ (ひそひそと)もちろん、タダじゃない。(谷蟆おろしてほどきつつ)よしゃ、取り引きしよう。
谷蟆 取り引き。
ぱっこ 助けてやってもいいけど、急ぎじゃないんでしょ?
谷蟆 まあ、そうですが…。
ぱっこ こっちゃ急ぎの救出劇が待ってンのよ。でだ、こっち手伝ってくれたら、あんたの姫だか何だか助けンの、つきあってやってもいい。
谷蟆 りあり? 恩にきます。
ぱっこ 決まった。ついてはだ。あんた、先に行っててくれる? 
谷蟆 へえ?(驚いて)でも、どこへ…
ぱっこ (ヤンキー座りで)うちらちょっとヤボ用があってよう、すぐ行けねえんだ。すぐ追っかけっからよう。
谷蟆 ヤボ用って…
ぱっこ やだ、訊くなんてヤボね、もお!(ロープに突き飛ばす)デビル!
ぽんこ オウ! ふんとに、もお!(反対側からランニングネックブリーカードロップ)
ぱっこ ワン・ツー!
谷蟆 (急いで起き)ノウ、ノウ。??…いったいどこで誰から誰を助けるんです?
ぱっこ ものわかりの悪いヤツだなあ。
谷蟆 そんなの分かるもんか!
ぱっこ ぽんちゃん、説明したって。
ぽんこ (引き取って)つまりねぇ、よく聞いて。(耳元に、きっぱりと)かくかくしかじか。分かった?
谷蟆 ??…なるほど!
せんせ 早速、出動!
谷蟆 (ノッて)ラジャ。きいーんん! くくー。???

首かしげながら、退場。

せんせ (やがて)じゃあ、邪魔者が消えたところで。
ぱっこ はい。
せんせ ぽん、ムシロ。
ぽんこ いーす。

ぱっこ、座る。せんせ、片膝ついて、ぱっこの腹に…、

せんせ それにしてもでかくなったな。まるで地球儀かスイカだな。
ぱっこ ハハ、なでないでよお。早よ、それ掛けて。
ぽんこ 何だ、照れてんだ姉ちゃん。(と、腹にムシロ掛けてやる)
せんせ ――おおん…。(と、数珠かかげ、ゆっくり唱えだす)ばあらばあら、どしゃどしゃどしゃのう、くーもれつーもれうーもればあ、あーさーまーはーふくじゃらすーじゃら、ぶいぶいゆーじゃらわからんちん、まっこと尊(タット)きコノハナサクヤ、花の命はあらしの一夜、火の山たけりて食うやら食わず、待てど暮らせど五劫のすり切れ、あーさーまーはーどしゃどしゃどしゃのう、おおんばらばら、おおんまに、ぺめふーん…!

ぱっこ、寝ころがって苦しみだす。

せんせ ぼおろんぼろん、ぼおろんぼろん、ぼおろんぼろん、ぼおろんぼろん、(ジャラジャラジャラ)…
ぱっこ うーっ、うーっ、…
ぽんこ クルシイ? もうちょいだから、イキんでイキんで、ガンバレ姉ちゃんっ。…

ムシロを通して、腹、ぼうっと光り始める…。うめき声の中、溶暗。
やがて、見世物小屋の喝采。妖しい明かり。過剰な音楽にのってぷーこ、激しく歌い踊る。「昆虫サーカス」。

♪やわはだ つい、と裂け
 ごつごつ みもだえて
 あやしく はいでたは
 サナギに ござりまする

 たまごを でてもたまごだぜ
 もりもり 世の中をたべる

 こりゃ みごとだよね!
 (エエ ミゴトデスワ!)

 かさぶた ぱり、と裂け
 ふらふら こぼれでた
 かそけき いろどりは
 トンボに ござりまする

 ついついと 秋空をすべる
 おいらには ついてこれなかろ

 こりゃ すてきだよね!
 (エエ ステキデスワ!)

ポーズ。蝶ネクタイのレーヴェル、マイク片手に甲高いがらがら声で、

レーヴェル 皆様ぁ、お楽しみ頂けましたでございましょうかァ、当小屋ただいま売りだし中の紅一点、ミス・アンネ・ゾフィ・ムッターハッター・ズベコフ・オタンチーヌ・プーコスカヤ嬢によりまするぅ、ザ・さ・ぬぁ・ぐゐぃ・しょおぉでございましたあ!

喝采。ぷーこ、色っぽく一礼。大喝采。おひねり。

レーヴェル ありがとうございます。おひねりは少なめに、ええ、沢山のおひねりは少なめに沢山お願いします。略して、ぷーこ嬢でしたあ!

ふたり、引っこもうとすると──、

―― 待て待て待てェ…!

ト、バンヅーイン長兵衛のごとく花道に上がりこんできた、それは谷蟆。ぷーこ、ガクンと止まる。

谷蟆 さっきから黙って見てりゃアよお、おめえ、なんつうか、いってみりゃあその、何だ、ってて(舌、噛み)、…やいやいやい!(ト、どうもシマラない)
レーヴェル ??
谷蟆 つまり、色っぺえじゃねえか、もっと見たい。
レーヴェル どうもありがとうございます。お客様はカビキラーです。なにせ久しぶりの大入りで、うれし涙がちょ、ちょ、ちょちょぎれえてええーん♪♪
谷蟆 てけてんとんてんとん♪♪(ハッとし)…や、そうじゃねぇや。やい貴様、その子ォ返せ。
レーヴェル ム、ナニやつ!
谷蟆 ウム、よくぞ訊いてくれました。
レーヴェル (驚き)ああっ!
谷蟆 (思わずポーズし)どうでえ俺様ァ?
レーヴェル (冷めて)何が。
谷蟆 何がって、だって何の「あ」だよ今の「あ」は?
レーヴェル いやただの感嘆符だが。
谷蟆 (がっかりして)…聞いて驚けよ。かのユーラシアの西の果て、すこっとらんどの森から出張ってござったけえるの谷蟆ッたあ俺様のことよ。
レーヴェル あん?
谷蟆 谷蟆。
レーヴェル 誰だって?
谷蟆 (超絶的な尻文字で谷蟆と書くが)
レーヴェル 分からん。このレーヴェルヴィルステル・ブッターハッター・オゲーレッツも生粋の田舎すこっちじゃによって漢字は知らん。
谷蟆 タ・ニ・ク・クーだっ!
レーヴェル ヒヒーン、つまり日本人だな。
谷蟆 突っ込むンじゃねえ。突っ込みけえされてえか、綿貫さんのくせに。
レーヴェル ドキッ。キサマ、なぜ知ってる。
谷蟆 顔に書いてあらあ。
レーヴェル はッ。(本当に書いてある)うかつだった。(ゴシゴシ)
谷蟆 ごはんつぶもついてるぜ。
レーヴェル うッ。(本当についている)ち、油断したぜ。(食べる)
谷蟆 満腹してるようだな。
レーヴェル こいつのお陰様で満員札止めよ。(と、ぷーこの腹ナデナデ)
谷蟆 悪でえ商売でもうけやがって、許せねえ。
レーヴェル 悪でえ…コホン、もとい悪どいとは、イヤ何のことか分かりませんな。
谷蟆 やいやい、すっとぼけんのもてえげえにしやがれ。そこのかわい子ちゃんが行方不明になったって願いが出てんだ、きりきり白状しろい。(ぷーこに)なあ?
ぷーこ (機械的に)アラ、ワタシ、スキデココニイルノダワ。
谷蟆 え?
ぷーこ (宇宙人で)チキュウノミナサンコンニチハ、ワタシハM64星雲かろちん座べーた星カラキタウチュウジンデス、
谷蟆 宇宙人。なにじん?
ぷーこ ニンジンデス。ワタシノフネニキマセンカ、ソレハココヨリズットカイテキナ、キュルキュルピピー、ピーキュルピー、ガガガ…。
レーヴェル くくく、こういってるがどうするね?
谷蟆 おい、なんか変じゃねえか。目がイッてるぞ。
レーヴェル ちちち、身体的特徴をあげつらうのは良くないねえ。
谷蟆 おきゃあがれ。見せ物小屋がフリークの集まりなのぁ昔ッからだ。人間ポンプに牛娘、みんなてめえらの仲間じゃねえか。
レーヴェル その通り、だからこの子にはここがお似合いなのさ。帰ってもらおう。
谷蟆 何をッ。
レーヴェル イヤ待った。お代は見てのお帰りなんだが、さあ、払うてもらいましょうか。
谷蟆 ば、ばかいってんじゃねえ。誰が払うか。
レーヴェル ほほう、只見ですか。
谷蟆 客じゃねえやい。
レーヴェル 嘘ばっかり。あんた客席から出てきたじゃない。
谷蟆 それは。
レーヴェル ほんとはもう一曲みてから出てこようと思ったでしょ。
谷蟆 ぎ、ぎくっ(当たり)。
レーヴェル ホホ、安いもんじゃないの、ほんの五…
谷蟆 五十万円?! ふざけんな、ぼったくりだ。
レーヴェル (つっこみ)いってへんて。その十分の一でええから。
谷蟆 何だ五十円か、はいよ。(渡す)
レーヴェル ははあ、なるほど。(きちんとしまってから、猛然と)わりゃなめとんのか、うらあ!
谷蟆 やっぱ、だめか。分かった、払うから、それ返して。
レーヴェル フンフンフーン♪♪(無視)
谷蟆 …この、悪党ッ。どうやらオンビンなやり方じゃ分からねえらしいな。
レーヴェル ほほう、ではどんなやり方があるというのだね?
谷蟆 こうだッ。

谷蟆、素速くレーヴェルに飛びかかって、逆ねじ。ぴたりと首に当てた匕首(ドス)。

レーヴェル う、うわっ…。
谷蟆 カネならここにあるぜ。ちっとばかり光りすぎるがな。
レーヴェル 待て。じょ、条件を聞こう。
谷蟆 そうだな。まず、おれの名前をちゃんと呼べ。間違ってもハトとかいうな。
レーヴェル わ、分かった。
谷蟆 それからあの子を解放しろ。すぐにだ。
レーヴェル 解放する。すぐだ。(こっそり、ぷーこに合図。ぷーこ、そろそろ後ろに回る)
谷蟆 それから。
レーヴェル まだあるのか?
谷蟆 この三カ月の売り上げを耳をそろえて、出せ。
レーヴェル そんな無茶苦茶な!
谷蟆 それから!(ちくり、と刃物)
レーヴェル ひい。
谷蟆 逃走用のヘリを用意しろ。
レーヴェル 何いってる。
谷蟆 高飛びするんだっ。
レーヴェル ど、どこへ。
谷蟆 大宮だ。
レーヴェル 大宮? なんで大宮…
谷蟆 大都市だからだっ。けけけ、そこでゴージャスに暮らすのさ。けけけけ、この子はモウ俺のもんだ誰にも渡すか、――とと?







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