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2015年06月24日01:54

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004 おじや☆ダンス 5/

ぷーこ、後ろから抱きついた。

ぷーこ …スキ。
谷蟆 な、何だって?
ぷーこ (イカレて)ホレテ、ハレタワ。ウーン、モウダメ。
谷蟆 (狼狽して)やめろ、君はだまされてる。
ぷーこ ダマサレテテモ、イイノ。アタシヨリ、ソノヒトガイイノ? ネ、(見つめて胸なでたりする)ツレテッテ。
谷蟆 いや、しかし、それは…、ちょい…、うはほへ…、

レーヴェル、さっと腕を逃れて、10tと書かれた分銅で谷蟆、ぶんなぐる。

谷蟆 ゴイーン。キューイ、キューイ…☆★☆…。(キゼツ)
レーヴェル ふん、ちんぴらが…。(ドス、とって)民主主義の世の中なら長生きできたろうに、気の毒だがあの世にいってもらおうぜ。

振り上げたその時、大きなマサカリが回転しながら飛んできてドスをはじき、レーヴェルの目の前にグザリと刺さった。

レーヴェル だ、誰だッ?!

しーん。――

レーヴェル プーコスカヤ、そっちを見張れ!
ぷーこ オーケー、ゲーレッツ。

ふたり、背中合わせになる。と、マサカリの柄からシューッと煙が出た。

レーヴェル ガスか! まずい、換気しろ、扇げ!

パニック! が、煙はすぐ止む。そして笛の音。

レーヴェル こんだ笛の音か! いい加減にしろ、汚いぞッ。

いきなり、網がばさりと落ちてきて、ぷーこ吊り上げられる。

ぷーこ うがーっ。ぎゃうーっ。(大騒ぎ)
レーヴェル ううぬ天狗、キサマ、天狗党だな? 姑息な手を!
少年の声 (ブワーと風)ハハハハハハ。
レーヴェル (よけつつ)チチチチチチ。出てこいッ。

思わぬ所に、ひとりの少年がすでにいる。忍者赤影みたいな覆面。

少年 ここさ。
レーヴェル わっ。(ひっくり返る)いつからいたんだ。
少年 僕か? 僕ならだいたい半年前。
レーヴェル 何い。
少年 悪いが姉さんは返してもらうよ。
レーヴェル …姉さん?
少年 とぼけちゃって。僕らにはトモダチも親戚もない。ただきょうだいの契りがあるだけだ。
レーヴェル (気づいて)――新生人類か!
少年 (厳しく)そんな名じゃない。僕らは僕らだ。
レーヴェル だがあの、天狗の一党と組んでいるあれだろう?
少年 そうだ。十月十日(とつきとおか)がくるまでは、自由に冒険がまだできないから。
レーヴェル 悪いことはいわない、あんな奴らと組むのはよしたがいい。
少年 大きなお世話さ。
レーヴェル 関八州はすでにわれわれ商工会の勢力下に入った。君らがいくら食い込もうとしたって結局、私らの世話になるほかないんだぜ?
少年 ははは、古いねえ。テキヤがいつから商工会のまとめ役になったんだい。どうせ委員会の肝いりだろう。マフィアを気取るにしては年端もいかない僕らへのちょっかい、やけにショボいマネするじゃないか。
レーヴェル フン、またぞろ加波山秩父に立てこもるつもりかね? 未来なんかないぞ。
少年 オイおっさん。
レーヴェル おっさんじゃないやい。
少年 未来がないのァあんたの勝手だ、ひとりで陰気になってなよ。そいで、僕らのきょうだいを引っぱりこむのはやめてもらいたい。
レーヴェル いやだといったら。
少年 ケンカだね。
レーヴェル 命を粗末にするもんじゃないぜ。
少年 それはこっちのセリフだよ。

にらみ合い。隙を見て、レーヴェルはドス、少年はマサカリを引っこ抜いて構える。

レーヴェル お前、名前は。
少年 たぶん、たろ。
レーヴェル 簡単だな。
少年 長すぎるくらいさ!
レーヴェル たぶんって、何だ!

ふたりほぼ同時に、瞬発。キーン、と火花散る! しばらく…。さわさわと風が吹く。と、やがて谷蟆のドス、ペケッと折れていた。

レーヴェル くそう、竹光か…。

レーヴェルがっくりと膝をつく。

谷蟆 (気づいていて)ふはは、抜かりなく竹光にすりかえておく。こいつが勝負の先読みってものさね。残念でしたなあ、レーヴェル親方。
レーヴェル ううう…。
たろ ニセモノだったのか。――何かこれじゃ、ズルして勝ったみたいだなあ。
レーヴェル みたいじゃなくて、ズルだ、ズル…。
谷蟆 黙りやがれ、てめえにいえた義理かい。(蹴りたおす)
レーヴェル ぐう。
たろ おい、もうよせよ。
谷蟆 (片手、つき)どなたか存じやせんが、あぶないところへよくぞおいでくだすった。手前、かえるの…
たろ タニククーだろ。
谷蟆 へっ、どうしてご存じで。
たろ 話は聞いてる。
谷蟆 あ、もともと助っ人でしたか。そりゃ、かさねがさねお世話を…、
たろ フフ。かえる君、僕だよ。
谷蟆 えへえ?(まじまじ見て、驚き)あ、あんたさっきの? でも、しかし…。
たろ ぱっこ姉ちゃんは僕の母さんさ。
谷蟆 何ですって。
たろ 腹、でかかったろう? ニンシン半年でさ。
谷蟆 (気づいて)――あんた、新生人類!
たろ その呼び方はやめてくれ。
谷蟆 (「は、腹から」)出てきたんで?
たろ ああ。
谷蟆 だって、六月(ムツキ)じゃ早すぎるのでは?
たろ また、戻るさ。
谷蟆 いや戻るったってあんた腹には戻れな…
たろ いいんだ。さ、早く帰ろう。イヤッ。

と、マサカリ放るとブーメランのように飛んで、お見事、ぶら下がった網の前面だけがばらりと落ちた。ぷーこ、ポーズよろしく宙にいる形。

たろ 姉ちゃん、大丈夫かい。
ぷーこ ――うん、よくきてくれたね。
たろ また一緒に旅をしよう。
ぷーこ そうね。
たろ そこから行く手が見えるかい。
ぷーこ さあ、暗くてよく分からないなあ。
たろ ちろはどんな具合?
ぷーこ (それには応えず)ね、たろちゃん。これ、何だと思う?(と、筒のようなものを持っている)
たろ 望遠鏡かい?
ぷーこ ううん。
たろ 万華鏡?
ぷーこ ううん、違うの。こうやって――

口に当ててフッと吹く。同時にたろ、のけぞる。

たろ うッ――。
ぷーこ (イカレて)――キャハハハハ!
谷蟆 毒矢か!
ぷーこ ム。キサマモカァ。(また構える)
谷蟆 よ、よ、よしてくれ。悪かった、ごめん。

フッ。谷蟆よける。また、たろに命中。

たろ あーっ。
谷蟆 しまった。堪忍してくだせえ。

ぷーこ、また構える。谷蟆ウロウロ逃げ回る。ねらい定めてまたフッ、これまた、たろに当たる。

たろ ぐわーっ。
谷蟆 あああ、どうしたらいいんだ。
たろ (つっこんで)いい加減にしろ。早く姉ちゃんつかまえて連れて帰るんだ。
谷蟆 へえ。
レーヴェル (倒れたままで)くくく、筑波原産トリカブトの毒さ…。早く治療した方がいいぜ。
たろ うるさいや、おまえ最低だな!――姉ちゃん。悪いけど、勝負するよッ。
ぷーこ キャハハハ、イイトモ。(吹こうと…)
たろ (マサカリ楯に構え)なんだい、あんな奴にすっかりアヤツられてみっともない。
ぷーこ (さすがにムッとして)…ソンナコトハ、勝ッテカラ、オイイ!

にらみ合い。だが、やがてぷーこ、緊張のあまりか急に胸を押さえて「うげえ」と吐きそうになる。吹き矢落とし、自分も網から落ちる。倒れてうめきだす。

谷蟆 (おそるおそる)どうしたんだ急に…。息が上がってらあ。
たろ 今だ、何でも構うもンか、引き上げるよ。肩かして!
谷蟆 へいッ。

三人、よろよろ引き上げていく。

レーヴェル (親指でくちびる拭って)俺は、最低だ…。

暗転。暗いままで――、

―― なーで、なーで。
―― おええー。

さっきの木陰。ぽんこ・谷蟆がぷーこを吐かせている。木の根を枕に、せんせはたろを看病している。

ぷーこ ハッ、私は何をしていたのだ。
谷蟆 色々してやしたぜ。あんなこととか、こんなこととか。うひひ。
ぷーこ 誰よあんた。
谷蟆 あんたの惚れた彼氏でさ。
ぷーこ はあ?
谷蟆 (真似のつもりで)スキヨスキスキ、ツレテッテってね。
ぷーこ ばっかじゃないの。
谷蟆 まあそう恥ずかしがらんと、ぷーこちゃーんたら。(すり寄る)
ぷーこ (その鼻、つねる)
谷蟆 いでででで!
ぷーこ 気やすくお呼びじゃないよ。
谷蟆 …おっかしいなぁ。
ぽんこ あたいら、何か服(の)まされて、踊らされてたみたいなん。
ぷーこ ああ…、何となく、覚えてる。ライトを浴びて…、あ、だめだ、頭痛が…、
せんせ そっちもこっちも片肺飛行か。とんだ商工会だったな。
たろ 悪いね、せんせ。
せんせ 何の。自給自足こそワシらの得手よ。陣中膏を塗っといた。しばらく寝ておれば治る。
たろ 陣中膏?
せんせ 平たくいえば、ガマの油だ。カエルを煮詰めて絞って作る。
谷蟆 ひでえことをー。(倒れる)
たろ でも、そんなんで大丈夫なの?
せんせ ワシを信じろ。死ななん限りたいがい治る。
たろ そりゃあそうでしょう。
せんせ ぱっこの腹だ、殺しても死ぬまい。
ぱっこ (木の陰で)大きなお世話よ。
せんせ わっ。
たろ あ、いたのか。
せんせ そっとしといてやれ、横になったばかりだ。君の分のエネルギーもたぶんあいつが肩代わりしてるんだろう、ひどく体力を消耗している。
たろ 分かったよ。
せんせ 本当は冒険なんざ、ちゃんと生まれてからでないと無理なんだ。いくら君が強いったって、ケンカできるのァせいぜい三分か五分だ。ぐずぐずしてるとノバスつもりがノバサレルぞ。
たろ ちぇ、カップラーメンじゃあるまいし。
ぽんこ でも、まだやること、あんだよネ。
たろ ああそうだ。塔のお姫さんか。
谷蟆 すんません、ご無理をいいまして。
せんせ 無理だとも。たろ、君は休んでここはワシに任せておけよ。
たろ 冗談でしょ。主役だよ僕は、主役ってのはお姫様を救う役のことだい。ね、ぱっこ姉さん。
ぱっこ (木の陰で)もちろんよ、いいからいっといで。
たろ ほら。ああいってる。〔注・このあたり、腹話術にて演じられるだろう〕
せんせ だめだ、次の機会にしたまえ。
たろ 分かんないかなあ。こんなにぴんぴんしてるって、て…とと、あれれ…。(よろよろ)
せんせ それみろ、分からんのはそっちだ。登ってる途中で落っこちてくるのが目に見えるわい。
たろ 木登りは得意だよ!
せんせ ところがワシは空を飛べる。ワシだけに。
ぽんこ (すぐ)カラスでしょ。
せんせ 突っ込みありがとう。そういうわけだから諦めるんだな。母ちゃんの腹に帰りたまえ。帰りおろう。
たろ ちぇーっ。(フクレて、木の陰へ)
せんせ (谷蟆に)で、どうなってるんだね、上の状況は。
谷蟆 はい、よくは分からないんですが、塔守を名乗るロクだかハチだかいうのがひとり、始終その子につきっきりでして、こいつがまず邪魔です。何といってもあの子の方で気を許してるってのが六ヶしいところなんですが、何しろほとんど飲まず食わずですから心配でしょうがないですわ。
せんせ ほかに誰か?
谷蟆 お恥ずかしながら、情報不足で分かりません。
せんせ そうかね。じゃあ、なにせ行ってこよう。
ぷーこ ちょい待ち。――あたしが行くよ。
せんせ ナニ? だっておまえ、大丈夫かよ。
ぷーこ へーきへーき。ちろも出てきたくてうずうずしてるってさ。せんせがバサバサ行ったら目立つし、トリメだし、だいたいケンカ、弱いんだから。
せんせ オイこら、弱いはないだろう。ワシの速九字は並じゃないぞ。見ろ、(ト構え)臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前、カーッ。
谷蟆 わ。わ。わわ。(くるくる回ってひっくり返る)
せんせ どうだ。
ぽんこ オウ、アメージング!
ぷーこ でもそれ、飛びながらどうやるの?
せんせ う。…ムムムムム??(困る)
ぷーこ だから、呪文だったらこの腹のために使ってね。要はそのハチだかキュウだかを、後ろから襲えばいいんでしょ。
せんせ (驚いて)後ろから?
ぷーこ (驚いて)正面から行くつもりだったの? ハ、だから、任せてらんないよ。う。といい、つ、つつ、つ。陣痛が。
せんせ コラ、嘘つけ。都合よすぎるぞ。
ぷーこ マ、マジマジ。あだだ…!
せんせ しょうがねえなあ、ぽん、ムシロ。
ぽんこ てーい!

ばさりとでかいムシロが掛けられる。

ぷーこ (遠く)今日も旅寝の空か――。
せんせ 黙っとれ。(また、数珠出し、胡座(アグラ)にて)おおん…! あびらうんけん、ばさらだどばん、そお、わああ、かあああ…。ぼおろろんろん、ろろおんろん、ぼおろろんろん、ろろおんろん、…(以下、低音で続く)
ぽんこ (客席に)――関東の北のある町で、十代の女の子たちが一斉に妊娠したのはこの春のことでした。すこし前にあった発電所の事故に関係があるんじゃないかとか、田舎はヒマでみんな恋愛ばっかりしてるからだとか、栄養の摂りすぎだとか、キリストの再来だとかいろんなうわさが飛びかったんだけど、妊娠地域の範囲が急速に拡大して首都東京に迫るようになるとマスコミの無責任なのぞき趣味は影をひそめ、いよいよ政府が乗りだしたの。科学省と対策本部が最近になって出した中間報告は驚くべきもので、ある種の未知のウィルスによる生殖異常の可能性が高いが、一般的な意味ではこういう有機体をウィルスとは呼ばない。RNAのらせん構造(パターン)は存在せず、遺伝形質は無作為に液体中に浮遊している。またヌクレオチドの種類も地球性生物の四種A・T・C・Gと同一なものはひとつもなく、どれにも鉱物元素である珪素Siが含まれている。性急な判断は控えるべきとはいえ現段階ではっきりいえることは、かつて地球上に現れたいかなる生物も、この生命体とは少しも似ていない。
ぷーこ うーん、うーん。

ムシロ、また光りだす。ぱっこ、木の陰から出てきつつ、

ぱっこ 琵琶湖原産のある種のフナは、オスの数が極端に少なく、とくに関東地方ではオスはまったくみられない。これは、メスの卵(ラン)細胞が連れあいの遺伝子をかならずしも必要とせず、精子の接触だけを媒介にみずからのクローンを再生できる、雌性(シセイ)発生といわれる特異な複製様式をとるためである。別種の魚、たとえばクチボソやドジョウの精子を触れさせてもこの卵(ラン)はごく正常に発生する! あるいはそれらの魚の精巣すなわち白子をろ過して精子を取りのぞき、遺伝子を含まない液体の部分だけを触れさせた場合にすら、変わらぬ実験結果が得られた。また、純粋に人工的に作られたある種のアミノ酸、あるいは物質的媒介でなく電極の刺激を使った実験の結果はどうだったか。この場合にも、普通の受精によるのとまったく同じように卵核の分裂は始まったのである…!
ぷーこ うーっ、うーっ、…

ムシロ、もこもこと人の背ほどに盛り上がり、明滅しながらうごめき出す。

ぽんこ (ぱっことは関係なく)でもさあ、仮に宇宙からの刺激によって始まった母系百パーセントの発生様式だとしたら、生まれる子供は当然ながら、全員女の子のはずじゃない? ところがね…
ぱっこ つまりこの一見ありふれたフナは、男がまわりにいる時だけは一般的な生殖をするものの、ひとたび女性だけになるや、少しも困らずに平然と単性生殖に切り替え、自己複製を続けるのだ。――この事実が語るのは、生物にとってオスはほんらい不可欠の存在ではなく、ただ突然変異を加速するためにいれば充分なのだ、ということにほかならない。…
ぽんこ ところが、妊娠四ヶ月に入った少女たちを検診した全国の産院から報告が相次ぐにつれ、大変なことが分かってきたの。世の中全体が騒然となったのは実際この時からだったな。その胎児は、ほぼ全員、男の子だったの…!
ぷーこ うへへへへへへーーっ。死むうーっ。(と奇声)

踊っていたムシロ、ぱらりと落ちてぷーこにかかると、その後ろにひょろひょろとポーズつけて立っていた少年。たろと同じ装束。

ぱっこぽんこ 出た、ちろ!
ちろ (どことなくタラタラと)はーい出ましたよー。うーす、よろしくー。なーんてね、キマったね。んじゃ、ぼちぼち行ってくっか、ふわあーっ。(あくびして、背中ぽりぽり)
谷蟆 (ひとり)――むうう、こうやって生まれるのか…。
ぽんこ (心配して)あんた、ダイジョーブ?
ちろ んー、何が?
せんせ 何か、ぐあい悪そうだな。
ちろ いや別に。
ぱっこ ふらふらしてんよ。
ちろ そう?(ふらふらする)
ぱっこ かなり。
ちろ そうかな。(ものすごくふらふらする)
ぽんこ (その足に注目し)――すごい足ワザだ!
せんせ いや、ワシの方がすごいぞ。(と、こちらもふらふら)
ちろ いや僕が。
せんせ いやいやワシが。(と、しばし、ふらふら対決)
ぽんこ ふたりともすごい!
ぱっこ でも勝ち負けの問題じゃない。
ちろせんせ そうか。







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