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日記一覧

011 イオの月 2/
2015年04月22日11:05

【M6】循環宇宙の沈黙はもう沢山だ。下谷でいったい何があったのかを、この背の柳行李を出てッ。――仕方ない、白状しようか。あたしは百貫さ。ヘルメス、あたしを背負って旅をして。行商のおばちゃんなら五十年六十年、キャベツや大根背負って歩きつづける

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011 イオの月 1/
2015年04月22日10:49

イオの月 時 一九八四年八月十一日 場 旧国鉄山手線内回り上野――鶯谷駅間 人 僕、十八歳【M1】上野ぉ――ッ。灰色の鳩が飛び過ぎたあとに煙草の煙が小さな渦を巻く朝の上野駅、明るいプラットホームに流れるもの憂いアナウンスと煙草の煙。大きな車体

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稲妻。雷鳴。火影。小使い室。泥酔の浜川、乱入し、桔梗に襲いかかる。悲鳴。浜川 これでどうだキッコ! 刃渡りだ! 目を背けるな!桔梗 (悲鳴)やめて! 先生! 火つけ! キチガイ! 炎と稲妻。二人、揉みあう。服が裂ける。桔梗、歴史大辞典でぶっと

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雷鳴…。浜川 (酔い潰れて、机に突っ伏している。足もとのポリタンクをぼこ、ぼこ、蹴っている。吸い差しのピースから紫煙が上がっている。聞き取りにくく)サディストじゃねえんだ、俺は…。サディスムはホンの一部でよう…。大事なのはエロスの問題よ…。

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浜川 まあ、いいよいいよ。君らがケンカするこたない、俺の落ち度だかんな。派手なのはバンソーコーだけだ心配ねえよ。じゃ、始めようか。えーと(だがどこかぼんやりと)昨日は、中世の半ば、カルヴァン派の台頭のところまでさわったわけだね。プロテスタン

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泥んこの合羽たたみつつ(転んだらしい)、ねこ、新校舎の教室に入ってくる。すでに他の三人は部屋の隅で頭、寄せ合って研究中。ねこ わーりわり、先、始めててくれた?きのこ ひゃー、ズブ濡れじゃん!ねこ ほーなのよ。じゃこ また、灌漑事業?ねこ ふう。

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ゲゼル 先生。浜川 うん?ゲゼル 好きな女性、おありなんでしょ。浜川 好きな女ね…。ゲゼル あの廊下の向こうの、浜川 (ガタッ、と立つ)ゲゼル 用務員室の子ね。あ、図星ですか。浜川 あの子に近づくな!ゲゼル (心外そうに)ほう? 案外、ご執心ですか

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浜川 実際には、ことはそう単純ではなかったんだ。なぜなら、ある町の議会が改宗を決議して、そのむね布告されたとするね。でも、服を着かえるように、信仰を取りかえることなんて、できるんだろうか? ましてまだ当時は科学の時代じゃなかった。マーク・ト

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じゃこ じゃ最初にユウ君、先週の、中世資料について、まとめてくれた?佑介 ウン、簡単にいうとね。資料は大体みっつしかないみたい。一三〇〇年頃の、市内にあった教会のステンドグラスに、説明文がのってたんだって。(ト黒板にメモる)でもこれは二次大戦

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土手の上、先にねこひとり、ドドド、バシャバシャッと駆けてきて。ねこ おーい、はやくうー!佑介 (まだ声だけで)無理だよそんな…。ねこ ケンケンで来ーい。佑介 ムチャクチャいうなあ、もう。(現れる)ねこ 大丈夫? 上がってこれる?佑介 うん、ちょ

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不意に暗転し、ト、いきなり、旧校舎のあかるい教室(部室)が見える。佑介、ミエのまま、授業参観のようによるべなく隅っこに立っている恰好。浜川 …というわけで、九世紀から下っては実に十九世紀まで、ヨーロッパでは誰もが自由に発言することを恐れて生

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ハメルンのうわさ 時 一九九六年七月 場 関東のある中学校 人 斉藤寧子(ねこ)   千葉千代子(じゃこ)   木下ひろ子(きのこ)   浜川小次郎(数学教師、歴史部顧問)   相馬桔梗(キッコ)   ゲマイン(結社《コッペン》派遣員)   ゲゼル

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こちらは高野竜の戯曲作品を閲覧するためのアカウントです。HTML環境のため表記に不備がある場合があります、ご了承下さい。(※ハングルは文字化け表示されているためルビないし訳文を付してあります。ベンガル文字はラテン文字にて音写してあります。元原稿

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