mixiユーザー(id:2230131)

2015年02月21日19:41

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Reflektor/Arcade Fire

 アーケイド・ファイアの新作のプロデュースのひとりに、なんとLCDサウンドシステムことジェームス・マーフィーを招集したというニュースに、興奮の色を隠せなかった人は少なくなかったのでは。

 それまでエンジニアを務めていたマーカス・ドラヴスも悪くはなかったが(本作でもマーカスは、ジェームスがハサミを入れる前にジャマイカ録音にて貢献している)、ひとつひとつの音色の質感までこだわるタイプの録音ではなかった。大所帯バンドならではの、自然派というか、ナチュラル思考というか。そんな素朴なサウンドの中に、LCDサウンドシステムのいわゆるディスコ・パンク的なエッジーさが注入されたのだとしたら…。想像するだけでワクワクする組み合わせだ。

 サウンドを聴いてみてまず思ったのは、ポスト・プロダクションが強調されたことによって、全体としてかなりクラブ・ミュージック風の手触りのサウンドに仕上がったこと。音の輪郭がクリアで、ビートのアタック感が強調されている。さらに言えば、アレンジ的にも、突然ドラムのフィルが出てきたり、フリーキーなノイズ・ギターをインサートしたり、全体的にはソングフォームを残したまま単調に聴こえないような工夫が凝らされている。なるほど、想像していた通りの音だと言えばその通りだけれど、これは驚くべき成果だ。

 そもそも、ダンス寄りのアルバムというコンセプトは当初から決めていたものだったらしく、ハイチのカーニヴァルに影響を受けた彼らが、そのトロピカルかつ祝祭的なダンス・フィーリングを抽出することがひとつ。そしてふたつめに、それをアーケイド・ファイア的なる現代的かつインディ・ロックのマナーで再構築すること。
 これを実現する上での適任者が<DFA>的なるサウンドなのだろうと判断したに違いない。うむ、的確すぎて怖い。この人選はたとえるなら、トーキング・ヘッズが『リメイン・イン・ライト』を作るときにブライアン・イーノの音響を必要とした流れに非常によく似ている。

 しかも2枚組のフルボリューム。1枚目は前述のハイチ的なる多幸感あふれるダンス・フィーリングを前面に押し出したもので、2枚目はそこからトーンを落としたアトモスフェリックな音響派を意識した楽曲群が収められている。それぞれのハイライトは、1枚目なら以前より彼らの大ファンを公言していたデヴィッド・ボウイがコーラスにて参加したタイトル・トラック“リフレクター”(LCDがボウイの熱烈な信望者であることを踏まえると、この3組のタッグはなかなか萌えるものがある)。そして2枚目なら、ニュー・オーダーあたりが得意としそうな、キラキラ×センチメンタル×ダンサブル(笑)な“アフターライフ”だろう。

 2枚組なのにまったく冗長さを感じさせない、ギラギラとした稲光を浴びながら多幸感の雨嵐にひたすら打たれまくる一枚。個人的に早くも年間ベスト当確。
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