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2006年08月06日17:11

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●ニセ管理人日記(11)/■ラクダは砂漠へ (1)

■ラクダは砂漠へ (1)

 ●もしもし、
  きつねくまぞうです。
  
  漢字で書くと、「木常熊造」です。
  人間のかっこうはしていますが、本当はキツネです。

  いま、ナラトさんところに厄介になっています。
  そして、ナラトさんにかわって、ワタシ
  <キツネ>が、この日記を書いています。

  むかしは、市役所に勤めていました。
  もちろん、人間のかっこうをしてです。
  ワタシは、いろんな人間に化けることができますが、
  疲れてくると、しっぽが出たり、目が吊り上ってきたり
  します。

  いまは、暑いので
  ナラトさんのうちで、気を抜いてゴロゴロしていますので、
  たいていは半分はキツネで、半分は人間のかっこうを
  しています。


 ●市役所に勤めていたころは、「木常」をひっくり返して
  「常木」(つねき)と名乗っていました。

  戸籍係をやっていましたが、ある事情でやめなければ
  ならなくなりました。


  やめてから、しばらく、ぶらぶらしていて、人間とも
  付き合わなかったので、人間の言葉遣いも、文字も
  大半を忘れかけていましたが、
  この日記を書き出してから、もう10回もすぎ、かなり
  思い出しもし、苦手な漢字もパソコンの変換機能によって
  書けるようになりました。


 ●で、ワタシが、なぜ市役所をやめなければならなかったのか、
  そのわけを、この日記に書こうとしました。


  それを書こうとすれば、そもそも、ワタシ
  「きつねくまぞう」と、童話作家の三田村先生との出会いや
  また、ナラトさんとの出会い、そして、ワタシが<創作童話大賞>に
  応募したことなどを、お話しなければならなくなりました。


 ●このことは、これまでの10回の日記に書いてきました。
  もし、きょう、はじめて、この日記を読まれる方がおられましたら、
  このシリーズの第一回から、目を通していただけると
  ありがたいと思います。


  さて、では、前回の続きで、ワタシがどうして第四作目の
  童話「ラクダは砂漠へ」を書いたのか、また、その童話とは
  どんなものであったか、前回の続きを書こうと思います。



 ●あっ、その前に、いちおう報告ですが、

  きょう、ナラトさんところの団地で、水道管が破裂して、
  それで その工事をやるとかで、階段役員さんからナラトさんの
  ところに連絡が入りました。

  なんでも、工事のあとには赤水が出るので注意してくれ、
  とのことでした。

  それで、ナラトさんは工事の前にシャワー浴びようゆうて、
  さっきシャワー浴びて、いま昼寝しています。






 ●「ラクダは砂漠へ」 (1)

  ぼくの住んでいるアパートの近くに、ちょっとした
  空き地があります。

  雑草がすき間なく おい茂っているので、だれも足を
  ふみ入れませんが、ぼくは散歩の行きかえりに、
  ときどき立ち寄ってみることがあります。

  雑草の中にひとりで、ポツンと立っていると、とても静かな
  気分になれるのです。


  ところがある夜、

    (いい忘れましたが、ぼくはいつも、夜、
     人たちが ねしずまったころ、散歩に出るのです)

  散歩の途中、空き地に立ち寄ったぼくは、びっくりしてしまいました。

  あんなに茂っていた雑草がすっかり刈りとられ、黒い土が
  むきだしになっていたのです。


  「やれやれ。ここにも家が建つのか」


  この空き地がすきだったぼくは、ちょっとがっかりしました。

  それから三日後には、空き地はきれいにならされ、まわりを
  ぐるりと低いフェンスで囲われてしまいました。


    (家じゃなくて、駐車場でもできるのかな)

  と、ぼくは思いました。
  そうなると、車がたくさん入り込んできて、騒がしくなるに
  ちがいありません。



  「こりゃあ、散歩の道すじを変えなくちゃならないぞ」


  ぼくは、憂うつになりました。

  けれど、ぼくの憂うつは、それから二週間後には
  吹っ飛んでしまいました。



  その間ぼくは、仕事でよそへ出かけていて、散歩できなかった
  のですが、二週間後、ようやく仕事を終えて帰ってきた日の夜、
  散歩に出かけ、空き地のところで思いがけないものを見たのです。


  そこは、もう空き地ではありませんでした。
  といって、家が建ったわけでも、駐車場になったわけでも
  ありません。


  低いフェンスの内側には、サザンカが植え込まれ、その向こうには
  銀色のブランコが光っていました。
  ブランコのとなりには、すべり台があり、その向こうには、
  鉄棒と砂場がありました。

  空き地は、小さなこども公園に生まれ変わっていたのです。


  「こりゃあ、いいや!」


  驚きからさめると、ぼくはすっかり うれしくなってしまい
  ました。
  雑草の茂った空き地もすきでしたが、この小さな公園は
  もっとすきになれそうな気がしたのです。


  ぼくは、できたての公園にそっと足をふみ入れました。
  そして、奥のベンチに腰かけました。
  ベンチの脇には石でつくったラクダが置いてありました。

  ラクダの頭には、小さな花輪がのっていました。
  きっと昼間、このラクダに乗って遊んだこどもたちが
  飾ってやったものでしょう。


  「なかなか いいところじゃないか」


  ぼくは公園をながめ回しながら、ラクダに話しかけました。
  ラクダは、長い足を折ってうずくまり、どこか遠いところを
  見ているようでした。




  それからというもの、ぼくは毎晩、この公園に立ち寄るように
  なりました。
  だれもいないベンチにすわり、返事をするわけでもない石の
  ラクダに話しかけていると、仕事の疲れや、いろいろな悩みが
  忘れられるのです。
  ぼくは一日のうちで、この時間がいちばんすきでした。


  ところがそのうちに、ぼくはおかしなことに気がつきました。
  それは、ラクダのことです。



  ラクダは、はじめベンチの脇に置いてあったのですが、
  ある夜、気がつくとベンチから少し離れたところにいたのです。

  はじめぼくは、だれかがいたずらをして、ラクダを動かした
  のだと思いました。

  けれど、背中にこどもが五人も乗れる大きさで、重さも
  かなりある石づくりのラクダを、そう簡単には動かせないはずです。

  おとなが五、六人かかって、ようやく少しずつ動かせるぐらい
  でしょう。そんないたずらをする人がいるでしょうか。


  けれど、ラクダが動いているのは確かでした。
  公園に寄るたびに、前の夜いたところより二十センチから
  三十センチ、前へ進んでいるのです。

  ひょっとしたら このラクダは、真夜中、みんなが眠っている
  ときに、こっそりと自分で動いているのではないでしょうか。


  「おい、いったいどこへ行くつもりなんだよ」


  ある夜、ぼくはラクダに聞いてみました。
  ラクダは、相変わらず遠くを見ているだけでしたが、その目の
  先を追っていたぼくは、はっとしました。

  ベンチから七、八メートルぐらい離れたところに小さな砂場が
  あるのです。ラクダの目は、まっすぐその砂場を見つめていたじゃ
  ありませんか。


  「そうか。おまえ、あの砂場へ行きたいのか。
   きっと、あの砂場を生まれ故郷の砂漠と かんちがい
   しているんだな」


  ラクダはなんにも言いませんでしたが、ぼくの考えは
  どうやら当たったようでした。

  つぎの夜、ラクダは、また三十センチばかり 砂場のほうへ
  近寄っていたのです。



  こうして、それから五日ばかりたつと、ラクダは砂場まで
  あと二十センチぐらいのところまで来ていました。

  けれど、そこで、ラクダにとっては大変なことが起こりました。
  


      フォト





 ●さて、みなさん。何が起こったと思いますか。

  ラクダに思いもよらないことが起きるのです。

  しかし、この続きは次回にお話ししましょう。

  夏の寝苦しい夜、もし寝付けないなら、
  果たして何が起こったのか、
  みなさんも、いっしょに考えてみてください。




  
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