●2012年12月13日(木) 晴れ
▼『本屋閉ズ』
仕事帰り、たばこを買うため階段を下におりて、
新開地駅の売店で「わかば」を1カートン買った。
カネを払って、改札口の横にある本屋を見ると、
シャッターが降りている。
定休日?、と思ったら、貼り紙があり、
『諸般の事情により、閉店することになりました。
60年間のご愛顧に感謝いたします』と書いてあった。
奥行2メーター、間口6メーター程の小さな「本屋」が
店を閉じた。
▼昭和40年代の始めあたりまで、国鉄や私鉄の主だった駅の駅前には
だいたい「本屋」があった。「本屋」は、その町・その町の顔のような
存在だった。
その町に住みむ、子供から大人まで、地域で必要とする「本」が並べてあった。
町の「本屋」は書斎のない人たちの「本棚」みたいなものだった。
特別な「本」は、三宮のジュンク堂や、元町の日東館、神戸の海文堂などに
行って買ったが、それでも、学生の住む「町の本屋」には、学生向けの堅い本も
置いてあり、垂水には文進堂書店、六甲道には南天荘書店、摂津本山には
甲南堂があった。
新開地は繁華街で、学生の住む町ではなかったが、何かの用で
行くと、やはり町の顔の「本屋」があって、私は立ち寄った。
映画館とスケートリンクがあった「聚楽館」の角から
新開地商店街を湊川公園の方へ向って歩くと、右手に「本屋」があって
それが、「町の本屋」だった。
▼7年前、仕事でこのあたりを、毎日通うようになった。
かつての「本屋」は、商店街から地下にもぐり、
昔なかった「新開地駅」の改札口の横で、ひっそり営業していた。
私は、「本」の種類のない、その小さな「本屋」に週末、
たばこを買ったついでに立ち寄った。
小さな「本屋」には似つかわしくない新潮選書がたまに置いてあったりして、
紀田 順一郎『カネが邪魔でしょうがない 明治大正・成金列伝』や、
本郷恵子『蕩尽する中世』を そこで買った。
その「本屋」が、きょう行くと店を閉じていた。
新開地商店街にあった頃の「町の本屋」 昭和の終わり頃か
この改札口の右手に、シャッターの降りた「本屋」がある
▼タイトルは「本屋閉ズ」ではなく、前の続き「兆民と子規」のままにした。
まだ、書くつもりである。
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