■ほどほどに
●「あんた、もしかして、本当は欲張りなんじゃない?」
と、妻はいう。
「自分じゃ、何かをすれば、何かをやめる
なんて言ってるけど、結局、あれもこれも
手を出すというのは、よく言えば好奇心旺盛、
悪く言えば、欲張りってことネ」
私は反論できない。すると、さらに追い討ちがくる。
「それに、ほどほどってこと知らないでしょう。
いつも言ってるでしょう、過ぎたるは及ばざるが如し。
なんでも知りたがるのも、良し悪し」
「だいたいが、高望みなんだナー。
それが欲張りってことなんだよネ」
●物欲はそんなに強くはない。そのことは妻も認めている。
しかし、「欲張り」を妻のいうような方向から攻められると
反論できない。
所詮「エエ格好しい」なのだ。
高倉健さんではないが、ほめられなくとも、
「あなたに認められたくて・・・」という程度の心性は、
見え隠れしている。
そのために、「欲張り」になっているのだ。
●「ある程度、ええ加減じゃないとダメね。
なんでも真剣、真面目もいいけど
いい加減なところも、必要なんだナー」
「まぁ、これは少しは進歩、成長したと思う」
と、妻がほめる。
「だって、こっちが最近、おちょくられていると
思うときがあるモン!」
「ワタシがなんぼ言っても、言うこときかんし、
適当にのらりくらりしてさ。暖簾に腕押し」
「ボケているというか、聞こえンふりしてるのか、
適当な返事をして、ごまかすし・・・」
●確かに、前ほど私はムキにならなくなった。
ルーズ、てきとう、になった。
めんどうくさい、おっくう、などという感じ方も多くなった。
新しいことに対しても、少しは「だいたいは、そんなところか」で
納得できるようになってきた。
それには、もうこの歳になって、という感じ方もある。
●「いつまでも若々しい」とは、世間ではほめ言葉のようだが、
私はどこかで、「老けたい」とも思っている。
還暦を迎えたぐらいで、こんなことを人前で言えば笑われるに
決まっている。
たかが六十くらいで、何をほざいているか、と。
しかし、「欲張り」から自由になるためには、もう何を今更、
という「老人の特権」を利用しない手はない。
たとえ馬脚をあらわすにしろ、私はボケられれば、ボケるに
限ると思っている。
●夜遅くまでパソコンで遊んでいて、妻に何度も、
「何時と思てんネン。もう、パソコン壊したる!」と
叱責を受けながらも、いまだに、こうやってミクシイが できるのは、
のらりくらりしながら、ボケてしのぎ、なんとかやり過ごす、
これは、まさにその成果にほかならないのである。
(もちろん、妻のあきらめ、寛容にも負うているが・・)
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