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2026年10月22日23:17

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「ディスクロージャー・デイ」を見て。〜大巨匠の尽きぬ創作欲のギアは、世に出た「激突!」のモードへも楽々あげられるも。ハンドル捌きは歳相応に憂いと祈りの角度へ振りがち〜

「異星人接触」のお話は、それこそこの春の「プロジェクト・ヘイル・メアリー」もあったし、映像表現の進化と共に幾つかの作品が印象に残っていて。それは、もちろん地球外生命と如何に交信するかの「手立て」や、それに至る地球を取り巻く環境の「影響」の科学的事象の構築にあたっての使用効果が年を追うごと格段に見栄えや説得力を得ておりますが。難しい科学的な考察の積み上げとエフェクトの仕上がりだけではなくて、記憶に残るその手のシャシンには、関わるキャラクターに共感を寄せられたり、当事者たる彼ら彼女らの行動を通して、見る者自身や現実社会に感銘や気付きを与えるものも、作品には有ります。

その先駆的作品である、「未知との遭遇」を実に今を遡る1978年に発表して。それ以外にも、「E.T.」に、好意的に地球外生命体を描くその2作とは趣旨を対にした「宇宙戦争」と、直前の自伝作の「フェイブルマンズ」にあった自主製作時代から執着していた、現実世界の生命とは異なる存在との接触の題材を、3度に渡って商業映画として実現して来た監督が、まさかの4度目の挑戦を自身の原案を以って取り組むと聴いて。監督が築いたキャリアと併行して、自分の映画体験を積んできたスピルバーグ世代の観客としては、製作開始のニュースを耳にしてから、完成品を目の当たりにする日に備えてまいりました。

地球外生物接触ものと、「一口」に称してしまうも。流石に、その来訪と交流手段の探索といった手続きを踏んだりする事には、手は出しておりませんでした。作品中でも、説明でサラリと例としてあげられる、報道とかで取り上げられる有名な「案件」を始め、米国政府が記録映像を残せた頃から積み重ねてきた、「異星人との接触」という機密事項を前提として、権力側の一部の者達だけがそれを共有し、なお且つ有効な情報を広く知られること無く応用している前提の元。地上の英知が及ばない「存在」が、身分関係なく地上の多くの人間に知らしめられる事態があったら、どう受け止められるのか。これまでは、限られた当事者に絞られていたのが、作中の関わるつもりは無かったのに、それを強いられた一握りのキャラクターを、いわば「媒体」として、劇中もそして映画を見る我々をも巻き込んだ多くの者を対象として向けられている点で違っております。

本編の構造は、地球外生命との接触情報を管理する政府組織か、それに抗うサイバーセキュリティ担当者のダニエルを、所有する「ツール」ごと捕獲しようとする諜報追走劇として始まる。その一方で、今年3本目の出演作になるエミリー・ブラントさん扮するカンサスシティの地方TV局のお天気キャスターのマーガレットの身に突然変異が起きて。丁度、生放送で、地上のものではない言語を彼女が発する様子が全米各地に発信されてしまったのを気に、マーガレットを保護する者とそれを追う者の駆け引きに巻き込まれて、彼女は拠点を離れざるを得ない逃亡者に転じざるを得なくなる。

ダニエルと、マーガレットがどういう訳で、逃走の状況下に置かれてしまったのかは二人を追って行くうちに明らかになるのだけれど。追手を撹乱しつつ、安全を担保してくれるところまでの緊張感溢れる逃走の展開と併行して、彼らの背景に一体何があるのか。スリルと謎あかしが高まってゆく雰囲気を醸成させてゆく手腕は、もう名人芸の域。そして、世に出始めた頃から監督作に親しんだ者としては、合流したダニエルとマーガレットが逃走で車を使うのだけれど。踏切で列車通過を待って停車しているところに、追撃者の車が後ろから彼女らの車ごと押して遮断棒を折って走り込む列車にぶつけて「消し」に掛る場面が、デビューTVムービー作品「激突!」のシュチュエーションをお金を掛けて拡大発展させた描写と判ると、心中で小躍りが止まらず。地位も上がれば、芸術的方向に落ち着くところなのに、「初心は、忘れていない」って表明にも見えて、スピルバーグチルドレンは、密かに喜びに震えたのでした。

異星人接触ものの金字塔「未知との遭遇」に於いては、飛行物体を発見したリチャード・ドレイファスが、未確認飛翔体との邂逅の執着に囚われて行く様は何度見ても秀逸で。あのラストシーンは、総てを捨ててまで「その地」を目指した彼の本望が叶った祝福の光景でも有りましたが。

本作で、マーガレットは、過去の出来事である「能力」を本人の意思と関係なく与えられてしまって。前半の宇宙語披露とならんで、能力披露で、いろんなタイプの人格を演じてみせるエミリーさんが演者として意気に感じているのではと想像が付くところでありますが。あの「能力」は、昔読んだ、筒井康隆さんの特殊能力を授かってしまったエスパーの悲哀を描いた七瀬3部作を思い出させたのですが。重大秘密をディスクロージャー、つまり開示するスポークスウーマンの役割のためだけに帰着してしまったのが、まず惜しい。

前半や、マーガレットの逃亡先では避難民が出る、某国によるキューバミサイル危機に匹敵するかの「緊急事態」がほのめかされるのだけど。どうも、朝鮮半島の「北」の仕業っぽい事が、サラリと示されるも詳細には触れられず。クライマックスは、タイトルから推測される通りに、開示を巡るせめぎあいなのですが。

迫る危機的状況よりも、それが優先されて。未知なる存在、触れていない文明の存在を崇めよとまでは断言していないにせよ、起こっている社会的危機を、そこに住む人間自らの手で解決するのではなく、崇高な存在に委ねるくらいに、地上の状況が混沌としているとでも示したかったのか。

全世界の人の殆どが携帯でそれを見守っている描写は、希望を託すにしても一方的な感じで。クライマックスまでの劇的な話術に堪能しただけに、政治的に差支え無い程度で、もう少し尺を増してでも危機的状況下に於ける能力を持たされてしまった者たちの心情を見せてくれたら、「未知との遭遇」に肩を並べられたかも。

でも、監督の盟友、ジョン・ウィリアムスの劇伴は、スパイスとして場面を引き立てるように的確に響いて。もう、聴き収めになってしまうのか、ちよっと心配。

拙文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
シネマサンシャインららぽーと沼津 IMAXレーザー(シアター)
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