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2026年10月11日23:15

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「シャドウワーク」を見て。〜守るべき道を外れる「選択」以外には、暴力による服従から逃れる手だて無し〜

本編開幕直後の「夫や恋人、肉親等身近な存在から暴力を受けた事のある女性 4人に1人」と黒味画面の字幕表示に愕然とした。エンドロールで、省庁出典のデータを引用しているみたいで信憑性高そうですが。そして、闇に乗じて、数名が海岸に何か等身大の何かを遺棄している様子から、明け始めた海岸線のくねった道を走るバンに乗る1人の女性が小さな声で歌う「プレイバックpart�供廚房崔罎梁召僚�たちも、明け方の静けさを破らない程度に合わせて唱和する。今を生きる女性にとって望まない悲痛な現実の提示と、事後に懐メロを口ずさんでささくれ立つ心中を和らげねばならない「行為」に至る背景への興味を掻き立てて。告発的なクライムサスペンスとして、出だしは上々。

そして、本編は二人の女性の周辺状況を追ってゆく。
パートナーからのDVを避けて、独り暮らしのアパートを突き詰められて。負傷した吉岡里帆さん扮する紀子は、その時治療にあたった美保純さん扮する看護士である路子の導きで、三浦海岸にひっそりとある二階建ての家屋を訪れる。そこは、暴力に苛まれた女性を匿う「おうち」と称するDV被害者のシェルターで、風吹ジュンさん演ずる昭江の元、紀子と似たような境遇の女性3名が居て。昼間は近隣の農地で作物を育て家屋ての掃除や食事の支度は入居者の「持ち回り」で生活が回っていたのだが。やがて、紀子は、「おうち」の住人が、「持ち回り」する表には出来ない「仕事」を請け負っているのを目の当たりにして、昭江にこのまま「おうち」に残るか、出てゆくのか選択を迫られる。

そして、もう一人は、奈緒さん扮する千葉県警館山南署という辺鄙な海岸街に勤務の薫という刑事である。海岸に流れ着いた女性の遺体を、警察庁の鑑定が、流れ着いた身投げ死体と判定するも。所轄を超えた聴き込み捜査から、亡くなった睦美、同棲相手からのDVに悩まされていた経緯を掴み、彼女に接触してきた看護師を突き止めて。ただの自殺案件で片づけずに、そこの介在する存在に迫ろうとしていた。

「おうち」に取り込まれる紀子と、少ない手がかりを捜査で手繰り寄せて「おうち」に行き当たる薫のそれぞれの目線で分けられて描かれる経緯は、ただのDV被害者のシェルターではなさそうな「おうち」の実体を見る側に知らせると同時に、近年、被害者を保護する法律が整えられようとも、紀子を始めとして加害者が別人に生まれ変わらない限り、被害者自身が総てを捨て、別人として相手の知り得ない地に赴きでもしなければ暴力に晒され服従を強制され続ける抜け道の無い「無間地獄」に閉じ込め続けられる「やる瀬無さ」を突き付けて。

「おうち」の組織形態の維持のため、また、何より犯罪行為を居住者が共有する「秘密」が警察の目に付かないよう「合法」を装って実行し続けるための厳しさ。それとは対極に辛い境遇にある事への同情と過去を断ち切って新天地へ入居者を送る優しさを、これまでの演技経験をもって体現する風吹さんと美保さんのダブルジュンさんの存在は、本作の「錨」として、作品を落ち着かせる配役でした。お二人とも、ドラマや映画で、単なる判りやすい「いいひと」として出演する作品では見掛けておりますが、クライムサスペンスの題材もあって、単なるお顔見せの配役ではなく、人の複雑さや深みが見せられる得難い役だったのではないでしょうか。

しかしながら、御多分に漏れず薫自身も、DVの被害者でもあって。彼女の夫北川に扮するのが北村匠海さんで、更にこじらせるのが、彼は警察庁の捜査1課か2課がは覚えてないけど、薫より高キャリアのうえに、良い家柄なのもあって、薫の仕事に与える影響力も持ち合わせて、公私両方への圧力が半端なく。よって、薫のオフは、酒浸り勝ち。

「おうち」に薫がたどり着いて、紀子ら入居者と対峙するところに、北川が、妻への執着を更に増幅させて、裏のあるシェルターの入居者へも「横やり」を入れてから、それまでの良い「展開」を、結果的に壊してしまう。クライマックスは、女性陣が、「力」で北村クン(歳は、釣り合わないけど、北村一輝さんくらいの、強面とガタイの大きさが有った方のが、より対比が効いただろうけど)と、階段を転げ落ちるタイヘンな渡り合いの見せ場にはなっていたけれど。

ほとんど、チンピラ風情の若い男に、暴力を振るわれる様子を見るにつけて、DV加害者を意識から締め出したいくらいに嫌悪を覚えるのだけど。薫と「おうち」の入居者女性に同情を寄せざるを得ない半面。やはり、「おうち」で行われるのは、犯罪なので、客観的な視点も残して欲しかったのだけど。ラストシーンのDV被害の女性を保護して、ある方が質問を投げかけて「選択」を訊きますが。「絶対正義」を、もう片方で掲げていたら、クライムサスペンスとして、切れ味がもっと出たのに。

「相棒」の杉下右京警部が、この事件の捜査に関わったら、きっと血管を切らせそうなお怒りをした筈です。顔を紅潮させて「思いあがるのも、止めなさい」って。

拙文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
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