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2026年02月01日22:25

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「12月の君へ」〜埋まらない「溝」に向き合う〜

お互いに想いあっているのに、内心と外身が「同調」して噛み合う速度が二人それぞれ故に起こった行き違いに傷付き、相手は姿を消してしまう。社会人になっても去って行った相手への想いを胸中にくすぶらせ続けて、高校生時代からの「溝」から抜け出せない。

本作のチラシ裏の解説には、韓国発のクイァロマンスとある。先の件は、登場する女性同士の成り行きである。自身の嗜好、好みを生来のモノとして認識して初対面から言行一致の人も居れば、気付いてはいても自認が追い付かない人も居る。互いに相手が見えて、個人差に理解があれば、ズレやすれ違いも許容できるだろうけど。若さ故のナンチャラで、自己本位から一方的に傷ついて拒絶。

韓国の地理は、不案内でありますが。見るからに寒そうな海には、それをモノともしないサーファー達が果敢に挑んでいて。それを岸から眺める高校生が二人。宣材でドンとお美しい横顔が据えられたハン・ソヒさん扮するソルは、子役からTVの学園ドラマで人気者となったものの、華やかな世界にストレスを感じて大都会から転校して来た。短いヘアスタイルは洒落っ気に興味ない姿勢の現れでもあるハン・ヘインさん演ずるところの同級生スアンの演劇への熱がソルの目に留まって。彼女に乞われて、ソルは親の車を運転させられて。二人わざわざ凍てつく風が射す海岸へと来たのだった。

初めは、遠海で波に揉まれているサーファーを持ち歩いていたビデオカメラで、スアンは撮っていたのだが。ソルは、彼女に1人芝居の「お題」を彼女に出させて、演じる様をスアンに撮る事を要求して。割と至近距離で、カメラを前にドラマ仕込みの芝居を披露するソルに釘付けとなったスアンは、視界を狭めるファインダーを外し、腕の先に垂れ下がったカメラを地面に向けたまま、見開らかれた目で彼女だけに演じるソルを焼き付ける。

その後、一緒にサーフィンに興ずるなど仲を深めた二人は、深夜に車を駆って店も閉まって人っ子ひとり居ない凍てつくソウルの繁華街を歩くのだが。気持ちに「確信」を持っているソルの求めの前に、友情と愛情の狭間をまだ漂うスァンは尻込みしてしまって。それに失望したソルは、退学してスァンの前から姿を隠してしまう。

本編は、大まかに3章構成で。前述で区切られると、ソルは社会に出て、髪も肩まで伸ばし女優として、TVドラマを主戦場に、男女のラブロマンスものの脇役として頭角を現しつつある位置に付けており、同じ所属の先輩男優とプロデューサーから酔っ払いのつまらないグチしか聴かされない酒席に出て顔つなぎに務めたりもして。

高校時代、真夜中のソウル繁華街遠征時には、ソルのアプローチへの戸惑いが先行していたスァンであったが。あれから年月を経て、女性のお相手とひと時ベッドを共にする様にもなって。しかしながらTVのドラマで顔が世間的に知られイメージが付きつつあるのに加えて、ソルの面影を社会に出てもまだ引き摺っていて「ひと時の関係性」から抜け出せないのに嫌気を差され相手は去ってゆく。

いろんな事の我慢が重なって八方塞がりで苛立ちが鬱積したスァンは、先輩の男優が部屋に隠し持っていたアブナイお薬を失敬する。そして外出を引き留めようとする先輩を振り切って酩酊状態で夜の街に出てしまい、あまりの効能の強さに街中でスァンは倒れ込んでしまって、付近の通行者は携帯で通報を始める。PG-12のレイティングは、きっとこの件が要因なのだろうけど。この作品は、ストレスでコンプラ違反をしがちな芸能界の実録モノではなかったのではと、思いも寄らない「事件」で、見ている側にさざ波を起こしてくれて。

ヘンな方向へ話が進まなきゃ良いけどと不安になった矢先、スアンは、クスリの持ち主の先輩男優の必死の行動があったのか、部屋で介抱される状況に転換していて。ただ、その前に、スアンが、あのソルとサーフィンに興じた浜辺の街を、クスリで気を失ったソウルの街と同様に深夜で海も見渡せない時分に当て所も無く歩く姿が挿入されていたのだけど。

以上、女優となったスアンを描写で2章目が括られて。彼女が、メモ帳に確か浜辺の街の描写を描き込むカットの後、浜辺のバーで、ソルと再会する場面から終わりの章の始まりとなるのですが。

ハンさん扮するソルは、1章目の描写ではその容姿に加えてスアンと街中に出掛けても、有名人であったにも関わらず、変装もせず堂々と歩いて気さくに街行く人に対応して。彼女との時間を邪魔されたくないスアンは、ソルに素性を隠す様に懇願するも「私は、大丈夫」とスアンの事も介さず一蹴。他者の心を奪う魅力の持ち主が振り撒く奔放さで、直ちに挙がる「突然炎のごとく」のジャンヌ・モローを絶対的頂点として、そこから広がる系譜のすそ野にハンさんを据えても良い位で、綺麗なヒトが周囲を振り回すのは、ある意味特権だし。その困惑がまた、想いを強めて。

そんな魅惑的存在を、本作中盤から消してしまって、出て来たかと思えば、一部分の描写を除いて終始不機嫌そうにしていて。まるで別人にして、引き戻された。本作の英語表記タイトルは「Heavy Snow」と表記されている通り、残りのパートは、サーフィン中に沖へ流され知らない海岸に流された二人がスエットスーツ姿で薄暗い中降積った雪の中、彷徨って歩く姿が、大体を占めて。

結局、10代後半から社会人に至る二人の親密さに別れや対立とか関係を対等に見せるのではなくて、出逢いの頃に凝り固まったスアンの内に仕舞われた逡巡や後悔が「軸」である。それが為、中盤から後半にかけて重雪がのし掛かって来るように、今も未練を引きずるかの苦しさに見舞われる。

三章目の終り近くに、スアンは寒さを一晩凌いだ小屋の中で積年の想いを遂げてソルと朝を迎えた時、彼女から「恋って、相手に自分の理想を投影するんだよね」って、ソル本人が喋ったというより、大人になってもソルとの事を思い出にして踏み出せずに居る自分を客観的に見て、その相手の虚像に言わせているのではないかなと勘繰って。現実だったら、その後の自身の成長とか踏まえて、反省の弁やお詫びをソルに伝えられた筈なのに、ちっともそういう場面は出て来なかったし。

前半の、演技テーマを投げかけて相手をビデオで撮るシュチュエーションが良かったし、スアンが、女優になってソルと同じ土俵に上がったのだから。サーフィンよりも、そっちのモチーフ見たかったし、なんなら、ソルの演じる声は入っていても写っているのは海岸の砂だけの映像を大人になって活かすとかして、演技と本気の境界に互いの気持ちを浮き彫りにしてくれたらとか。また、素人創作を発動してしまったけど。上映の尺が、一時間半無い割には、焦れながら期待を片隅に残しつつ食い入って見た分、徒労感が残って。

殆ど、全国的に上映が終わりつつある作品なのに、こんなに字数を費やすのが止められず。つくづく、書き手はアホである。以前、気に入った韓国作品「はちどり」の様に女性監督が手掛けていたら、筋が通って有無を言わせないものになっていたのかも。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございます。
シネプラザサントムーン 劇場��にて

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