時間は、ヤタラとあり余っていて。何かしら成し得たいとか、解決しないとならない問題を抱えてはいるのだけれど。その手立てを見いだせずに、ただただ時間を浪費して。焦燥感は膨れ上がっても、ただ、持てあましているだけ。なので、端からすれば、怠惰かつその歳にしか許されない羨ましい過ごし方にも映る。
そんな最中に巡って来る学園祭にその舞台へのパフォーマンスの為の登壇。たかだか数分の「みせもの」なんだから行き当たりばったりでも済ませられるのに。モヤモヤ抱えるだけで成し得ない自分自身の存在証明とばかりに意地に固執していると、共演する者たちの間には連帯感を生んで、そのステージを見守る者は何も無さなかった自分達を舞台に立つ者達に思いを託しカタルシスに熱くなる。
前置きが、長くなりましたが。初公開から20年を経て、再公開された本作の前にも後にも、高校時代の学園祭を描いた作品はありましたけれど。もうその年頃は遠い昔でありながら、この機会で初見のオジサンも、作品タイトルのザ・ブルーハーツの今も廃れない代表曲のコピーを披露する高校生女子四人の姿に、同じ頃の成し得る事のなかった我が身を振り返ったりして。舞台に降りたった裸足の女神達が、かき鳴らす音に熱くなりつつも。若干、己の過去に身をよじるところもあって。そういう事で、作品自体は、現在見ても、全く時代を感じず。
話の発端は、軽音楽部員の香椎由宇さん扮する恵が、バンドのギター担当が効き指を骨折してしまった件で、ボーカル担当と仲違いをしてしまって。学園祭でのステージが、目前と迫るも、何の手立ても見いだせず苛立ちを抱える恵は、オファーの意味を理解する前に勢いでぺ・ドゥナさん扮する韓国留学生のソンをボーカルに据えバンドの残りのメンバー響子と望を巻き込んで、ザ・ブルーハーツのコピーを学園祭最終日に披露するために、3日に渡る学園祭特例の時限の縛り無い自由時間を活かして、昼夜関係なく(響子は、クラスの出し物の手伝いがあったけれど)、部室に知り合いの貸スタジオや自宅を行き来して即席バンドの習熟を成り行きに任せて醸して行くも、ステージの時間は確固として決められていたのだが。果たして彼女らは、無事ステージをやり遂げられるのか。
この4人が顔を揃えるにあたっての「切っ掛け」である、イザコザについて発端も解決過程も特に示されず。韓国留学生のソンと日本人3人も、特に、面と向かって相互理解を深め人種の違いをあらためて受け入れるだとかもスルー。そもそも、コピー対象を決める際に部室で試し聴きしたテープのラベルには、別のグループ名が書かれて本当はブルーハーツじゃなかった筈なのに。そして、演奏の事で特にメンバー同士のぶつかり合いとかも無く。特段、クライマックスを盛り立てる様な、これ見よがしな対立や和解とか、作り手から大人ならではの教訓話とかに導いたりせず。内面とは裏腹に、成し得ないまま過ごしている、思春期時季ならではの許された「無為」の時間が、そこには流れている。
「無為」と映る時間の中、それぞれ抱えているものは違うから「噛み合わない」事も少なく無くて。特段、それが強調される訳では無いけれど、時に可笑しみが沸き、共感もついて来る。メインの4人とは別に、冒頭や、中盤に、文化祭の記録映像を残そうとしている映画部もどきっぽい男子2人が、モデルとして画面に立てた女子に「子供でもなく、大人でもない自分達が、如何に悩み生きているか」みたいな主旨な事を演劇調に喋らせていたけれど。学校公認で、学園祭の間の自由時間の浪費を実行しているかに写る、バンド4人の無作為な行動や心情も、あの時ならではの「精一杯さ」として見る側に受けとめさせる意義がある、その場面挿入でした。
月日が経つと、「あの俳優が、あんな端役を」的に注目される場面が現れますが。ペ・ドゥナさんを備品室に呼び出して、告白する男子学生役は、今やメインストリームに居る松山ケンイチさんでした。彼は、懸命に勉強したであろうハングルを駆使して思いの丈をぶつけるのですが。そんな真摯さも全く汲むところもなく、ペ・ドゥナさんは拙い日本語のみで返して。挙句に「嫌いじゃないけれど、好きじゃない」の一言は、本作で見せる噛み合わなさの最たるものであり、松山さんには強烈なカウンターとなって、撃沈するのでした。
香椎由宇さん演じる恵が、貸しスタジオで元カレと話をする様子を、興味を隠しもせずに見つめる表情を見せ、誰も居ないステージで、演奏の合間のメンバー紹介の練習に短期間で仲を深めた日本人の3人への気持ちを語る若き日のペ・ドゥナさん良かったです。出来れば、もう一曲くらい本番で歌う場面見せて欲しかった。ただし、ちゃんと演奏開始時間は守るように。でも、それは、リーダーである香椎由宇さんの恵が、悪いのだけれど。発端の「揉め事」も、ステージの盛り上がりの中、当人たちは、水に流すことになるみたいだし。若いって、そんなものさ。
拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネプラザサントムーン シアター11にて。
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