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2025年05月25日23:20

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「サブスタンス」を見て。〜「これでも、あるがままを受け入れませんか」と、核心の意味でもある名前のアヤしいお薬の突き抜けた服用経過で恐ろしくも可笑しく説く〜

まるで自身が歩んだキャリアを重ねたかの役柄に、物語の展開上とはいえ、若い女優と「産まれたまま」の姿で二人同じ画面に収まって容姿の優劣判定は避けられない上に、肉体損傷や老化、果ては辛うじて本人であると認められる物体への変貌まで見せて。

そうまでしても本作に賭けた、デミ・ムーアの根性や執念を見なくてはと思いつつも、作品紹介記事では「ホラー」のジャンルが冠せられていたので、ハートの強さには自信が無かったりするのでタメライもありましたが。見始めてしまえば気を揉む必要は無く、のめり込んでおりました。

デミさんが第一線で活躍された80年代にD.クローネンバーグ監督の「ザ・フライ」があって。J.ゴールドプラムさん演じる科学者が、自らの身体で物質移転装置の実験をした時、誤って入っていたハエの遺伝子が組み込まれてしまって。刻々と蠅男に変わっていく過程で、ヒトとして備わる身体が変容してしまう様を「特殊メイク」を駆使し、当時患者を増やしていた「未知の病」を始めとする罹患の恐れを、普通でなくなる肉体を視覚化して増幅させた。本作も、それと相通じるところが、あります。

ただ、本作の場合は、偶発的な事故ではなくて。若く、美しい容姿で居たいという意志が働いています。女性に限らず、加齢を痛感する容姿の衰えや老いは受入れ難いのではあるけれど。こと、ショウビズの世界にあっては、実力があったとしても、「見た目」がものをいうし、劇中でもデミ・ムーアさんが目の当たりにするように、突然「居場所」が奪われる。

昨今、パワハラとか見た目偏重とか問題視される体制側の悪者代表として、これまた80年代の活躍が懐かしいD.クエイドが、下品加減を誇張した演技で見せてますが。認めたくない状況に甘んじなくてはならない部分に加えて、自身にも加齢による肉体変化を受け入れたくない心理も否定できず。劇中、タイトルにある「サブスタンス」という謎の薬物によって、脊椎を破って若返った容姿の自身が現れる。もちろん、展開上紐づけられた若返りクスリ使用の「ルール」があって、それを逸脱してD.ムーアさんが追い詰められるので、見る側も固唾を飲むのだけれど。

単に、粗悪な美容品に手を出すなって警鐘を鳴らすのが目的ではなく。そのクスリは、加齢した自身を「生存欲」を満たすために時計を逆回りにさせるほど過度に実現できたとして、それを、客観視させるがための「前提」に過ぎない。去年の「哀れなるものたち」では、赤ん坊の脳を母体に移殖するって、これまた、トンデモ設定だけれど。大人の肉体に見合った学習過程で社会を学習して、その社会の歪みゆえに身ごもった母親が強いられた窮状を体感した。

神の声の如く、時折、クスリを提供した側の無機質な声が流れる。「若い方も、元の母体も自分」なのだと。両方が、活動は出来ず。入れ替わってどちらかは1週間人形のように動けない。目覚めて、もう一つの自分の行動を垣間見、置かれた自身を否が応でも見せつけられる。容姿に取り憑かれた人間を、観客が客観視する装置が、そのトンデモ薬なのである。

悪徳D.クエイドらも歓ばせるピチピチな体を、別の自分が得たものの。実際の自分は、クスリを服用した50歳の誕生日の時以上に、肉体は衰えるというか、腐食をたどって、更に人知も超えようかって負のエネルギーの加速は止まらず。

エンドロールを見ていると、各「肉体変化」の描写ごとの担当スタッフが書かれていて。詳しくは無いけれど、明らかにデジタル合成ではなくて、ラテックスとかで身体を作って見せていて。その辺りの効果が、クライマックスで、D.ムーアや本作を手掛けた女性監督のコラリー・ファルジャさんの業界生活でため込まれた「鬱積」を込めて弾けさせたかのようで。目に写る状況に反して、清々しさすら覚える。

そういう、行き過ぎた描写に留まらず。例えば、自身の若い分身が業界でもてはやされて成功に酔っている傍らで。元の身体のD.ムーアさんが、たまたま、病院で再会した、どう見ても冴えない同級生の男とバーで会う約束を取り付けながらも、自身の加齢した容姿からなのか、たいして気もないのに誘ってしまった愚かさからなのか。現実に戻ってしまって、スッポかす行動心理描写も効いていたし。

冒頭の薬の効果を見せる卵の黄身の描写から、画面一杯のウォークオブフェイムに、主人公の名前が刻まれて。最初は、それ目当てで行き交う人が足を止めていたのに、やがて誰も目に掛けなくなって。有名人として彼女はトウが立ってしまったのを見せてからのドラマへの入りだとかも良くて。キワモノではあるのだけれど、その辺りの展開や構成に抜かりないお陰で、全く目をそらさず、最後まで興味を惹いてくれます。ここまで、見せちゃうのかと、「なりふり構わず」に挑んだ姿勢に敬服しつつ、最初の見せ方を設けたお陰で、表装のテイストにも関わらず、「哀れさ」すら滲んでおりました。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネプラザサントムーン シアター12にて

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