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2025年03月30日01:55

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「劇場版モノノ怪 第二章 火鼠」を見て。〜神儀(しんぎ)に変貌した薬売りが、身を焦がす怨念に抗う者たちの信じる心を得て、作り込まれた画世界で更に深く斬り祓う〜

描き上げられた美的な画世界を一気に駆け抜けて、アートセンスに触れる満足感と闇が渦巻く迷宮を共に跳躍したかの高揚感をもたらす「動き」の表現にひたすら注力されて。上映時間74分は、再びの充実であった。

舞台となる「大奥」は、名前も仕組みも実写で見る江戸時代の大奥と変わらないが。歴史考察に縛られず、調度品や身なり等「様式」は見慣れたものを参照はしているけれど、欧風、唐風なデザインの流用に淡色や蛍光色の彩りの配し方、そして花火が宙に広がる光の軌跡や怨念が目に写る表象としての炎の視覚的形状と、解き放たれた世界観が創り出されていて如何にも自由発想による。デジタルなペン画と彩色で創られた先鋭表現を取りつつ、画面背景のよれやシワ感のある「和紙」テイストに落とし込まれて、あの時代の美術表現への献辞もあるよなツヤ消しが施された、手の込んだ映像表現は前作から引き続き手抜かりなく。ただただ、この手の込んだ美的表現を見せて頂ける有難さに、心中では、手を合わせておりました。

前作での大奥取締役の古参女性取締役が退任して、その時は幹部だった若き名家出身の大友ボタンが後任に収まり、「隙をみせては地位を奪われる」と、大奥での厳格な差配を見せるも、天子の子を宿した身分の低い町人出身の御中臈、時田フキとの間には確執が生じていた。そんな中、人が消し炭と化す人体発火の奇異が起こると同時に、フキの身にも変容が現れる。権力争いに妬みや母性の在り方だとか、怪奇と共に揺れる大奥に、異変を察知した薬売りが再び姿を現す。

作品名は、如何にも古式ゆかしい幽霊譚として表現されていて。確かに、先に書いた通り舞台らしく支配人の後継を宿す者同士の妬みやヒガミ、はたまた世継ぎを産み落とすという務めには代えられない我が子への情愛と、背後にうごめく権力闘争に組織の役割とか。今回のモノノ怪「火鼠」は、お世継ぎを産む務めを先立たせる忖度の為に赤子に愛情を注げなかった女性が自身を責める怨念によるもので。

書いてしまうと如何にものおどろおどろしさなのだけれど、さきにも書きましたが映像がガラッと淡く明るく意匠的なので、重々しさが取っ払われて。それを祓うために現われる薬売りが持つ「退魔の剣」を抜くためには「形」と「真」そして「理」を薬売りが、見聞きして得ないとお払いの威力が発揮できない段取りがある。いわば、薬売りは、探偵的役割も負っていて、彼の行動で背景が見る側にも露わになる事からも、進行の役割も担う。

そして本作の形式としてシュチュエーションの区切りで、大鼠(多産の意味を成す動物)が日本画調に描かれた襖が開け閉めされる。まるで薬売りが、建物内の何処に潜むのか襖の一つ一つを開け進んでゆくかの感覚で、話の進行のリズムが生まれる。そのため、展開も勢いづくので、背景や心理に思い巡らす余裕を欠いてしまって、見ている間は、味わうというよりも目前に現われる視覚世界の体感を強いられる。

ただし、2作目なのでルーティーンや継続登場する人物像は浸透して、作中でもキャラクター間に共感や葛藤が生じて、描写にあって感情がより沸き立つところとなる。判り易いところで云えば、大奥の警備の責任者である、髭剃り跡が青々として如何にも気は優しくて力持ちの漢である坂下は、怪異を祓う薬売りの才能を一度目の当たりにしていて。今回の人間発火の現象も彼の「案件」と察しボタンからの御とがめも見越して、男子禁制の屋内に「薬屋、行けェ」の叱咤と共に送り出し駆けてゆく彼を見送るシーンは、熱かったな。

三つの要件が揃って退魔の剣を抜くと、クセっ毛に覗く歌舞伎風に隈取りメイクの薬売りは、着流しを着崩してマッチョな半身を露わにしたグッドルッキングガイの神儀へと身を変貌させる。前作のモノノ怪よりも厄介な火鼠のお陰で、異空間を下へ下へと下りさがる分斬り祓いの儀式の堪能時間が長引くと共に、坂下さん始めとして大奥向上したい面々の期待も背負って、それこそ「今宵の退魔の剣は、ひと味ちがうぞ」とばかり、前作の高まりを更新する様式美の締めを飾る。

2作品を通して、「飲み水」にスポットが当てられているのもあって。エンドタイトルの背景は、その水源を祭った祠を俯瞰でもって360度回転で捉えた映像を背景に、縦書きのクレジットが流れて。何か大事な事が描かれているのか目を凝らしているうちに、軽い眩暈を覚える難がまた続くのは如何ともしがたいところですが。これまでを上回る怪異は、果たしてどんな「形」を成しているのか。最終作を楽しみにする方が、公開日までに増えるといいな。

良かったら、プロモーション動画を
https://www.mononoke-movie.com/movie/

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございます。
シネプラザサントムーン シアター��

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