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2024年02月06日20:16

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【読書】 最近読んだ本 備忘禄

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「夜行列車盛衰史」 (松本典久著、平凡社新書)

夜行列車の勃興期から現在までの歴史を解説した本である。その始まりは明治時代に遡り、主要幹線が国有化されてからも継続され、運転区間も拡大していった。そして20系寝台特急車両の登場で最盛期を迎えるのである。ブルートレインと呼ばれ、多くの人の夢と希望を乗せて走っていた。特急のみならず、急行や普通にまで寝台車を連結した列車が登場し、大都市のターミナル駅からは次々と夜行列車が発車していったのである。しかし、国鉄の度重なる値上げにより航空機との料金の差があまりなくなってきたり、高速バスが次々と登場したりで、次第に鉄道の役割が薄くなっていく。新幹線網の充実も夜行列車の存在意義をなくさせるものだった。現在定期運行される夜行列車は「サンライズ瀬戸・出雲」だけとなったが、かつての夜行列車全盛期を知る身としては少し寂しいものがある。


●「先祖探偵」 (新川帆立著、ハルキ文庫)

先祖を専門に調査するという探偵事務所を開いている邑楽風子。曾祖父を探してほしい、子供の妙な発作は先祖の祟りかもしれないので調べてほしい、というものから、先祖に偉い人がいたことを期待して調査を依頼する中学生など、様々な依頼が舞い込む。調査は戸籍を確認するところからはじまるのだが、そこには幽霊戸籍、棄児戸籍、焼失戸籍、無戸籍、棄民戸籍などが絡んできて、依頼者の様々な事情が絡んでくるのである。実は邑楽風子自身も、親の名前も知らないし、自分の本当の名前も知らない。群馬県邑楽町に捨てられていたのを施設で保護されたのだ。彼女が探偵事務所を開いたのも、自身のルーツを知りたいためでもあった。そして最後に意外な形で、自身の親や生誕地が分かることになる。調査のため各地を巡ることになるが、さりげなく各地の美味しい料理などを盛り込んでいるのも面白い。


●「ベートーヴェンと大衆文化」 (沼口隆/安川智子/齋藤桂/白井史人 編著、春秋社)

ベートーヴェンが大衆文化とどのように関わっているかを、複数の著者がそれぞれの研究分野と絡めて論じた内容をまとめた本である。まずは1920年の生誕150年の際にベートーヴェン研究がどのように立ち上がったかに始まり、映画におけるベートーヴェンの使われ方、ロマン・ロランによるベートーヴェン神話の形成、教育現場における「月光の曲」の話、小説「大菩薩峠」とベートーヴェンの関係、小沢昭一の「ベートーヴェン人生劇場」に関する浪花節の話を「題名のない音楽会」なども絡めたり、宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」における交響曲第6番「田園」を高畑勲のアニメと絡めたり、と多くの話が盛り込まれる。面白い話もいまいちな話もあるが、ベートーヴェンほど大衆文化に大きく関わっているクラシック音楽の作曲家は他にないだろう。


●「「心の病」の脳科学」 (林(高木)朗子/加藤忠史編、講談社ブルーバックス)

この本も複数の著者によって書かれている。いわゆる「心の病」は、完全に治す方法もあるとはいえないが、その原因をしていくことで、少しでも改善につなげたいと奮闘しているのだ。シナプスから見た精神疾患の原因を探ったり、ゲノム変異と発症の関係を探った、脳回路の配線の変化に要因を見出したりと、さまざまな観点から研究が進んでいる。うつ病の原因は脳内炎症によるという仮説、動く遺伝因子と精神疾患の関係があるとする仮説なども述べられる。さらに認知症薬でPTSDのトラウマ記憶を消せる可能性が出てきたり、ADHDの本質が見えてきたりする。これらの研究によって、「心の病」の治癒への道筋が見えてくるかもしれない。現代人の多くは、何かしらの「心の病」が発症にしてもおかしくない状況だ。「心の病」が治癒できる日はそう遠くないことに期待したい。

●「インドの食卓」 (笠井亮平著、ハヤカワ新書)

インド料理が好きなので、書店で見た瞬間に手に取った本。インドといえばカレー、カレーといえばインドというイメージが世間ではあるが、実はこの本の副題のとおり、「そこにカレーはない」のである。カレーを「スパイスを用いた煮込み料理」と定義すれば、そこには数多くのインド料理が含まれるし、日本でイメージする「カレー」とはかけ離れたものも多い。まずはインド料理ができるまでの4000年の歴史を述べ、インドの様々な料理を解説し、ベジタリアンとノンベリタリアンの話にも触れ、ドリンク、フルーツ、スイーツといった、「カレー」以外のものも述べる。これらは日本国内のインド料理店でも比較的メジャーになっているものもあるが、名前を見ただけでは想像もつかないものもある。そして、実はインドではメジャーな「インド中華料理」。本場の中国とも違うし、日本の中華料理屋で食べられる料理とも違う、「インド中華料理」としかいいようがないものだ。さて、またどこかのインド料理店にでも行くとするか。
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