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2023年12月28日20:08

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今年の美術展を振り返って My Best 10

今年も恒例の美術展総括日記です。
長いですがお付き合いくださいませ。

今年観た美術展(基本有料、美術館、博物館、写真美術館)は127でした。ギャラリー・画廊展示(基本無料・小規模)は78でした。

7月に2週間自らの個展があったため、あまり沢山は見られないかなと思ったのですが、会期中展示替えがあるものに数回行ったり、お薦めと思った展覧会に友人と再び行ったりしたので、回数は多い。付属している常設展や、常設展中の小企画も日記で取り上げたものはカウントしています。

***

今年はなんと言っても「絵巻物」を見る機会が多かった。

「特別展 やまと絵ー受け継がれる王朝の美@東京国立博物館平成館」では、日本四大絵巻のほかさまざまな絵巻物が見られ、実に盛り沢山だった。解説の不親切さや4期に細かく分けた展示替えなど不満は多々あるが、昨年の「国宝展」に比べたら、見る機会の少ない作品が各地から集められ充実。

このほか、「虫めづる日本の人々@サントリー美術館 (8/13)」では、住吉如慶《きりぎりす絵巻》や《天稚彦物語絵巻 下巻》など楽しい物語を堪能。
「杉本博司 本歌取り東下り@松濤美術館(10/24)」では杉本氏所蔵の《法師物語絵巻》全編、
「秘蔵!重要文化財「長谷雄草紙」全巻公開ー永青文庫の絵巻コレクションー@永青文庫(11/12) 」では《長谷雄草紙》全編のほか模本含めて多数見られたし、
圧巻だったのは「慶應義塾図書館貴重書展示会「へびをかぶったお姫様〜奈良絵本・絵巻の中の異類・異形〜」@丸善丸の内本店ギャラリー(10/10)」で、無料とは思えない充実ぶりで、大変面白かった。


海外の美術館展では「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展@国立西洋美術館(1/4)」のコレクションがとても好みだった。
「テート美術館展 光ーターナー、印象派から現代へ@国立新美術館(9/6)」は、単なる所蔵品名品紹介ではなく、「光 LIGHT」をキーワードにターナーから現代までを集めていて、ターナーとアニッシュ・カプーアの作品が同じ部屋に展示されているのも面白かった。
春に開催された「ルーブル美術館展ー愛を描く@国立新美術館(3/5)」も同じく、愛というキーワードでルーブルの所蔵名品を紹介したが、ちょっと私の好みじゃなかったかも。

キーワードといえば、「ゴッホと静物画 伝統から革新へ@SOMPO美術館(11/2)」もよかった。ゴッホ自体はあまり好きでないし、ゴッホ展の多さからも食傷気味だったが、「静物画」に絞って、その変遷をゴッホの作品とともに見ていく企画は新鮮。

「ブルターニュ」がキーワードとなった展覧会が、ほぼ同時期に二つ行われたのも興味深い。
「憧憬の地ブルターニュ モネ、ゴーガン、黒田清輝が見た異郷@国立西洋美術館(5/17)」「ブルターニュの光と風 画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉@SOMPO美術館(5/19)」だ。
私は、SOMPOの方に軍配をあげたい。ブルターニュにあるカンペール美術館の所蔵品が多いので、地元の画家の絵が多く、ブルターニュという土地の特性が自ずと浮き彫りになって興味深かった。


コレクションといえば「本と絵画の800年 吉野石膏所蔵の貴重書と絵画コレクション@練馬区立美術館(3/23)」吉野石膏が、西美の内藤コレクションのように美しい時祷書など貴重本を多数所蔵している事を知った。

関西の人には馴染みが深い泉屋博古館の中国青銅器コレクションも初めて堪能。「不変/普遍の造形 住友コレクション中国青銅器名品選@泉屋博古館東京(2/12)」青銅器がこんなに面白いとは思わなかった。


そして、関西モノといえば、「大阪の日本画【前期】@東京ステーションギャラリー(4/26・5/20)」こちらも初めての画家が多く、新鮮だった。さすが大阪文化は個性的で独立している。


今年、偉大な日本画コレクター夫妻が亡くなった。
ジョー・プライス氏 2023年4月13日逝去 93歳
エツコ・プライス氏 2023年8月19日逝去 84歳

プライス氏は自らの審美眼を信じて、世界でも有数の日本画コレクションを築いた。当時日本でもあまり知られていない&人気のない作者のものが逆輸入的に評価されるようになる。プライス氏が最初に出会ったのが伊藤若冲だったというエピソードは有名。
2011年の東日本大震災を受け、東北地方での巡業を決め東日本大震災復興支援特別展「若冲が来てくれました―プライスコレクション 江戸絵画の美と生命―」を開催し、芸術面で日本人の心を癒してくれた。
プライス氏は自身の高齢のためコレクションの一部をまとめて日本に戻すことを希望し、190点を出光美術館に売却した。
そのお披露目展覧会があった。
「江戸絵画の華【第一部】若冲と江戸絵画【第二部】京都画壇と江戸琳派@出光美術館(1/14 ・2/26)」プライス夫妻に感謝。合掌。


作家一人の画業を取り上げた大回顧展では、棟方志功「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ@東京国立近代美術館(11/7)」や山下清が人気で、山下清展は見逃したが、大好きな佐伯祐三「佐伯祐三 自画像としての風景@東京ステーションギャラリー(2/5)」やマティス 「マティス展@東京都美術館(6/12)」はしっかり堪能。

渋いところでは椿椿山「椿椿山展@板橋区立美術館(4/1)」もよかったし、中国辺境貧しい農婦・庫淑蘭の切り絵 「クーばあちゃんの魔法の花空間ー庫淑蘭切り絵展ー@日中友好会館美術館(10/14)」には胸打たれた。


物故者ではなく、現在活躍中の作家の個展では、藤原新也 「祈り・藤原新也@世田谷美術館(1/8)」、杉本博司「杉本博司 本歌取り東下り@松濤美術館(10/24)」、横尾忠則 「横尾忠則 寒山百得展@東京国立博物館表慶館(11/21)」、そしてついこの間見た大巻伸嗣 「大巻伸嗣 真空のゆらぎ@国立新美術館(12/24)」など。

意表をついたのが大好きな山口晃「 ジャム・セッション石橋財団コレクション×山口晃 ここへきてやむに止まれぬサンサシオン@アーティゾン美術館(10/26)」だったし、衝撃を受けたのが諏訪敦「 諏訪敦 眼窩裏の火事@府中市美術館(2/4)」だった。

とあるギャラリーのレセプションで偶然お目にかかった会田誠氏にもぜひアーティゾンでジャムセッションをやっていただきたい。

若手では、荒木珠奈 「うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈展@東京都美術館ギャラリーABC(9/27)」がとてもよかった、これからも見ていきたい。


あと、私にしては意外だったのが、ファッションやジュエリーの展覧会を多く見た事。こればかりはいつも同行の夫は興味なく、女友達と一緒に見た。

ファッションでは、クリスチャン・ディオール(2/9 クリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ展@東京都現代美術館)とイヴ・サンローラン(9/26 イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル@国立新美術館)

ジュエリーでは「小企画展・橋本コレクションー指輪よりどりみどり@国立西洋美術館版画素描展示室(5/24)」 「愛のヴィクトリアン・ジュエリー〜英国のライフスタイル〜@大倉集古館(6/7)」「コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより@パナソニック汐留美術館(10/13)」

その中でディオール展は、ディオールの「作品」が素晴らしいというより「展示」の仕方が凝りに凝っていてそれ自体がアートそのもので、ものすごく美しい世界だった。文句なく楽しめる。

また、「開館10周年記念特別展示 極楽鳥@インターメディアテク(4/5)」では「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」コレクションのジュエリーと東京大学総合研究博物館および山階鳥類研究所の剥製標本という異色の組み合わせ。大航海時代に発見されたオオフウチョウは極楽鳥とよばれ、乱獲された事を学ぶ。美しいものを発見した時の人間の醜さたるや…嘆息。


それでは、2023年My Best 10を発表!
今年も順位をつけず(つけられず)、観覧順に並べました。

【1/4 ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展@国立西洋美術館】
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ピカソは言うに及ばず、大好きなマティス、クレーの作品が充実。

【1/8 祈り・藤原新也@世田谷美術館】
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初期から最新作までの作品250点を通して「祈り・死ぬな 生きろ」の強いメッセージ。写真だけでなく、力強い書と心打つ文章が素晴らしかった。

【2/4 諏訪敦 眼窩裏の火事@府中市美術館】
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絵に描かれた光景は「ある一点の時」でしかない。文章や映像などのように、鑑賞する側にそれに即した時間を与えてくれたなら、そこに至るまでの歴史を辿ることもできるのだが。諏訪氏は絵画作品に「過去の出来事を視覚的に呼び起こす」という不可能事に取り組んできたという。父の遺品から知った、満州で終戦を迎えた祖母の事を描いた作品は衝撃的だった。

【2/5 佐伯祐三 自画像としての風景@東京ステーションギャラリー】
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大好きな佐伯祐三の大回顧展。短い生涯の中合わせてもたった2年7ヶ月しか滞在できなかったパリを、時を惜しむように身を削って描く。その気迫が伝わってきた。

【6/12 マティス展@東京都美術館】
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初期から晩年までの大回顧展。最晩年に携わったヴァンスのロザリオ礼拝堂、10分ほどの映像を見て感動。移り変わる太陽の光が単純な線と美しい色に命を与える瞬間、これぞマティスマジック。

【2/9 クリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ展@東京都現代美術館】
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1984359657&owner_id=2083345
展示の演出が素晴らしく、夢のような空間だった。高木由利子氏の写真も素晴らしかった。ファッション展示にはあまり興味のない私が、別の友達を誘って再度観覧。

【4/26・5/20 大阪の日本画@東京ステーションギャラリー】
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1984946223&owner_id=2083345
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1985130428&owner_id=2083345
北野恒富をたっぷり堪能、木谷千種、島成園、生田花朝など女性パワーがすごい。中村貞以など個性的な作家に魅了されて前後期2回観覧。

【9/6 テート美術館展 光ーターナー、印象派から現代へ@国立新美術館】
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「光 LIGHT」をキーワードにターナーから現代作品までを集めている。単なる「海外美術館の名品紹介」ではなく、テーマを持って作品を選んだ展覧会。ターナーとアニッシュ・カプーアの作品が同じ部屋に展示されているのもミソ。

【10/10 慶應義塾図書館貴重書展示会「へびをかぶったお姫様〜奈良絵本・絵巻の中の異類・異形〜」@丸善丸の内本店ギャラリー】
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986119254&owner_id=2083345
これが無料とは信じられない内容充実の展覧会。最新研究成果も盛り込んだキャプションも興味深かった。

【10/26 ジャム・セッション石橋財団コレクション×山口晃 ここへきてやむに止まれぬサンサシオン@アーティゾン美術館】
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986236909&owner_id=2083345
セザンヌと雪舟を選んでのセッション。山口晃もセザンヌも雪舟も大好き!そこが嬉しい。でもちょっと難しかったなぁ。

あ!今年の大イベントをbest10に入れるのを忘れていました。特別賞という事で…。

【10/17・10/31・ 11/14 ・11/21 特別展 やまと絵ー受け継がれる王朝の美@東京国立博物館平成館】
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986164559&owner_id=2083345
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986164724&owner_id=2083345
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986260562&owner_id=2083345
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https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986403545&owner_id=2083345
キャプションや展示入れ替えなど不満はあるものの、質量ともに圧巻の展覧会。

以上が私のBest10。皆様の今年のBest美術展はなんだったでしょうか。教えていただくと嬉しいです。

今年も長い長ーい美術展日記にお付き合いいただき、ありがとうございました。画像が多くてスクロールも面倒だったかと思います。ごめんなさい。ご興味のないマイミクさんはスルーしてくださって構いませんので、どうぞお気遣いなく。

今年は、いいことも悪いこともあった年でした。でも、美術館で大好きなアートに触れた瞬間、その美しさに、楽しさに、驚きに、感動に、辛さを忘れることができました。友人と楽しさを分かち合えたのも喜びでした。

No Art, No Life. 

来年もどうぞよろしくお願いいたします。


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