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2023年10月13日09:50

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10/10 慶應義塾図書館貴重書展示会「へびをかぶったお姫様〜奈良絵本・絵巻の中の異類・異形〜」@丸善丸の内本店ギャラリー

コミュで知り、ぜひ行こうとチェックしていたのに、マイミクさんの日記で翌日が最終日と気づく。当日は午後に1展覧会観覧が控えていたのだが、体力が保たない…なぞと言ってはおられん、最終日ギリギリセーフで見てきましたとも。

「慶應義塾図書館貴重書展示会」は、1985年の第1回以来、 丸善雄松堂株式会社のご協力のもと、同社店舗のギャラリーを会場として開催している展示会です。和漢洋の稀覯書や古典籍などの貴重書を中心に 図書館の所蔵する蔵書の数々を広く学外の皆様にご覧いただく機会として、 大学教員と図書館スタッフが共同で趣向を凝らした企画を続けています。

今回で35回目だという。
https://kemco.keio.ac.jp/all-post/20230915/
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奈良絵本・絵巻とは、室町時代後期から江戸時代中期にかけて制作された、豪華な手作り・手彩色の絵本や絵巻のことです。
そこには、動物や鳥、虫たちが多く描かれていますが、その描き方は、さまざまです。彼らは、物語本文において会話をしていますので、絵も擬人化されることがあります。どのように擬人化しているのかは、作品によって異なっていて、それらを比較すると、現代の日本文化に通じる絵も出てきます。さらに、鬼や天狗たちの姿も、バラエティーに富んでいます。
今回の展示では、これらのおもしろい絵を数多く公開するとともに、これらの作品が、いつ、誰によって、どのように制作されたかを明らかにします。


なんと入場無料、写真撮影可、豪華図録がたったの1000円。
解説は大学らしくやや学術的な部分もあるが、展示品は、サントリー美術館や東博小企画展示室でもう一度やってほしいくらいの素晴らしく充実したものだった。
有名な「酒呑童子」「道成寺」「竹取物語」「浦島太郎」はじめ、最近サントリー美術館で見た《鼠草紙》や《天稚彦物語絵巻》《虫歌合絵巻》と合致するものもあり、大変興味深かった。
また、奈良絵本・絵巻は男性の分業で制作されていたと思われていたが、「居初(いそめ)つな」という女性が貞享・元禄年間に往来物を制作したほか、多くの奈良絵本・絵巻を制作していたことが、最新の研究で明らかになっているという。まさかこの時代に女性の絵本作家がいたなんて驚きだし、ワクワクする話ではないか。
『伽草子』などの仮名草子で知られる浅井了意が奈良絵本・絵巻の筆耕をしていたことや、奈良絵本・絵巻の版元である絵草紙屋の活動の例として絵草紙屋小泉の制作についての展示もあり、内容が濃かった。

第1章 さまざまな鳥・動物・虫
江戸時代以前の生き物の分類は、鳥・獣・虫・魚の4分類のみ。
生き物たちは、人間とともに描かれる場合は動物として描かれ、生き物だけの世界になると擬人化されて描かれることが多い。擬人化の方法も、服は着ているが手足の先を人間風に描くか、動物のように描くか、さまざまである。人気の動物は、雀、鼠、狐などで、犬や猫は少ない。

《弥兵衛鼠》
サントリーで見た《鼠草紙絵巻》に似る。ストーリーは少し違ったかな。こちらは手足も鼠。鼠は穀物や書物を齧る厄介者だったのに、それでも身近な存在だったのか、人気だ。
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《虫物語》
ミネアポリスにあるMia美術館所蔵住吉如慶《きりぎりす絵巻》(こちら)とよく似ている。虫の乗り物は蝦蟇なのね。
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第2章 鬼と土蜘蛛
酒呑童子や土蜘蛛は、室町よりも江戸前期の作品が多い。なぜなら、江戸時代の大名家は真偽のほどは別として源氏の子孫を名乗るものが多かったので自分の先祖が登場する作品を求めたからだろう、と。

《酒呑童子》
酒に酔った鬼たちが面白い。
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《土蜘蛛》
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第3章 異形と化す人間たち
怒りや嫉妬心から、蛇体となる話は多く《道成寺》は有名。
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真っ黒焦げの安珍がおかしい。
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《いそざき》
「下野国日光山の前に住む磯崎は鎌倉から連れ帰った別の女を家の近くに住まわせた。嫉妬した本妻は鬼面をつけて新妻をおどし、打ち殺した末、面が取れずに心も鬼のようになった。本妻の子、稚児学匠は母に説法し、面が取れた本妻は修行へ出、磯崎も出家する。」という話。嫉妬は怖いね。
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第4章 天狗と鬼・竜たち
天狗は、思い上がった心を持つと、その姿になる存在である。現在では、天狗になる、という言葉は抽象的な意味にしか使わないが、昔は、本当に天の姿になると考えられていたそうな。

《是害坊》
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《竹取物語》
日本初の物語とされているが、古写本はほとんどなく、絵巻や絵本も江戸時代になってからの作品しか存在していない。
絵巻物を屏風に貼り直したもの。
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雨の降るシーンでは雷神も登場
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第5章 頭に何かが載っている
《俵藤太》
藤原秀郷の武勇評。百足退治や竜宮伝説、将門征伐が記されている。
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大蛇に頼まれて百足退治
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この百足が迫力
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お礼に龍宮に招待される。
龍宮には、海の生き物を頭に乗せた者たちが登場。擬人化を示すのに、人の頭の上にその生物を載せる方法があるという。
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《浦島太郎》
こちらの絵にもそんな従者がいっぱい。
幼稚園の遊戯で扮した生物の絵を頭に巻くのは、簡略化した子供の遊戯だからではなく、奈良絵巻の伝統だったのだ、と知って、びっくり!
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第6章 居初つなの世界

奈良絵本・絵巻が男性の分業により制作されていたと考えられていたが、居初(いそめ)つなという女性が、大量の奈良絵本・絵巻を制作していたことが、昨今の研究で明らかになったという。しかも、本文と絵の両方を担当していた「本格的な絵本作家」がいたというのは、日本だけでなく、世界にも珍しいことらしい。

《虫の歌合》
署名はないが、居初つな筆画と推測できる。
内容は「秋の夜、虫達が集まり、歌合が行われる。司会兼審判員である判者を任されたひきがえるは、左右に分かれた虫達の和歌の勝敗を判定していく。最後の十五番目の戦いは、ひきがえると蛇の戦いとなる。ひきがえるは蛇を恐がりながらも、最後の歌合を行う。」
頭にそれぞれの虫を載せた姿はユーモラスだが、精緻な衣の柄など大変優美だ。サントリー美「虫めづる日本の人々」展でみた住吉如慶《虫歌合絵巻》は虫そのものだったが、この屏風の擬人化はなんと風雅なことだろう。
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《鉢かづき》
これも居初つな筆画。この姫さまがなんとも可愛らしい。当時の人もこの絵本を手に取り、どんなにかドキドキワクワクしながら何度も読み返しただろう。
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《徒然草》
もちろん、絵のない写本も数多くあり、それでも居初つなの文字は優美で美しく、人気が高かったことが窺い知れる。
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第7章 浅井了意の世界
浅井了意は、仮名草子作家であるが、昨今の研究で本来は高級な写本や奈良絵本・絵巻の本文を書写する筆耕であった可能性が出てきたと言う。奈良絵本・絵巻は、制作年や筆者の署名がないものがほとんどなので、わかっている筆跡から推測していくらしい。うむ、地道な調査だ。
《蓬莱山》
『蓬菜山』絵巻は数多く残されており、『ガリバー旅行記』発想の影響を与えた可能性がある。
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第8章 絵草紙屋小泉による制作
居初つなも浅井了意も絵草紙屋に雇われて筆耕や絵師の仕事をしていた。

《七夕の本地》
このシーンを見て、サントリー美「虫めづる日本の人々」展で見た《天稚彦物語絵巻》と同じ物語と気づく。「天稚彦の父鬼は娘に、百足の蔵で一晩過ごすように、などと難問をつきつける。しかし娘が天稚彦から譲り受けた袖を「天稚彦の袖」と言いながら振ると、百足は刺すことをしない。」百足の絵が気持ち悪いが、金粉金泥をふんだんに使った小泉の豪華本だ。
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最後は、珍しい奈良絵本の豆本。居初つなの筆画である。
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10月10日で終了

アルバムあります
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000120871624&owner_id=2083345


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