昨年開館した中之島美術館に来るのも3回目。いや〜、本当にできて良かった。
さて、今回は世紀末のポスター美術を飾ったロートレックとミュシャ。
私はその前にアーティゾン美術館でパリ・オペラ座の展覧会を見ていました。オペラ座は19世紀後半に建てられたので、その当時の舞台美術はもちろん絵やポスターなども展示されていました。なのでこの展覧会に足を踏み入れた時はその延長にあるような気がしました。
ロートレックのポスターは有名過ぎて本で何度も見たことがありますが、実物を見ると大きさもあって迫力ありますね。大胆な省略にシルエットのインパクト。このポスターを目にした当時のパリっ子たちはさぞ新鮮な驚きを感じたことだろうと思います。
見たことのないポスターもたくさんありました。つくづくこの時代のポスター芸術を担っていたんだなあと思います。
ミュシャはまず本の挿絵がいくつか展示されていました。こういう仕事もしていたんですね。
それからやはりサラ・ベルナールのお芝居の縦長のポスター。出世作の「ジスモンダ」は、急遽ポスターが必要になってミュシャに依頼が回ってきたのが、ミュシャはこのお芝居の内容を知っていたためヒロイン像を的確に表現したポスターに仕上げて評判を呼び、サラ・ベルナール自身も大変気に入ったと言うもの。そのためその後サラ・ベルナールのポスターを専属的に描いていくことになりました。
ミュシャはそのほか煙草や香水のポスターも出がけます。香水のポスターのそばにその香水のパッケージの実物も展示されていて、ポスターと見比べることもできます。
さて、ミュシャは1860年生まれ、ロートレックは1864年生まれ。ロートレックの方が年下なんですね。でもミュシャは20世紀になってもずっと活躍していたので、ロートレックの方が古い時代のイメージがあります。
ロートレックは酒におぼれ、体を壊して1901年に亡くなります。世紀末のポスター画家は世紀末でその仕事を終えたのです。
ロートレックが亡くなった後もミュシャは装飾的な様式を極めていきます。本当はその後故郷に戻り、チェコの国民画家になっていくのですが、この展覧会ではパリのポスターがテーマなのでそこまでは行きません。
最後の方は同時代のお酒のポスター集や、アールヌーヴォーの家具や花瓶などを展示して時代の雰囲気を伝えてくれます。しかし同時代のポスターを見ても、ロートレックとミュシャの力量はずば抜けていますね。ほかのポスターは二人の模倣のように見えます。
世紀末のパリの雰囲気に浸ってうっとりする展覧会でした。
そして、この展覧会を見て私はすっかりミュシャに魅了されてしまいました。今まで何度も見たことがあるのに。でも四季の連作や植物図案のうねる美しい絵を次々と見ていると「なんて美しいんだろう」とウットリしてしまったのです。図案ももちろん、女性の描写がとても美しい。顔の角度、体の描写。それは並々ならない画力があるからこそ描ける表現なのだと思いました。おかげで展覧会の図録ではなくミュシャの本を買ってしまいました。
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