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2021年12月27日01:57

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メトロポリタン美術館展

大阪市立美術館で開催されているメトロポリタン美術館展に行ってきました。

中世〜ルネサンス過渡期から後期印象派まで、有名な画家がズラリ!です。
あまり有名な作品はありませんが、むしろ有名な画家の知らない作品がたくさん見られて興味深かったです。

フラ・アンジェリコの磔刑図は、地に金を塗って中世絵画の趣がありますが、人物が立体的に配されて、ルネサンスへの橋渡しのような絵にもなっています。

時代が下りますと、聖母子でもかわいらしいリアルな赤ちゃんと慈愛に満ちた母親、という風になっていきます。

ベルトリス・クリストゥスの「キリストの哀悼」は、絵が描かれた当時の豪華な衣装を着たアリマタヤのヨセフとニコデモがキリストの遺骸を布に乗せています。傍らに散らばっている釘が痛々しい…。

クラーナハの「パリスの審判」は、あまり肉付きのよくないひょろ〜っとした三美神がいかにもクラーナハらしいタッチ。

エル・グレコの「羊飼いの礼拝」はかなり大きな作品です。エル・グレコらしい人物造形や色彩に目を奪われます。

ベラスケスは小ぶりの男性の肖像画。しかし対象を捉える描写力は極めて素晴らしく、これを越える人物描写はないと思うほど。

ルーベンスは「聖家族と聖フランチェスコ、聖アンナ、幼い洗礼者聖ヨハネ」。ルーベンスとしては普通…な感じ。

ムリーリョの「聖母子」は、画家のやさしさがにじみ出ているような絵です。

ポスターになっているカラバッジョの「音楽家たち」。細部まで行き届いた描写です。

ニコラ・プッサンの「足の不自由な男を癒す聖ペテロと聖ヨハネ」は、古代風の端正な建物に人物を配して、ルネサンス張りの大作です。

レンブラントは「フローラ」と題した女性の図。フローラは花の女神。レンブラントは妻のサスキアをモデルにフローラの像をいくつか描いていますが、これは妻の死後何年もたってからの作品です。なので妻の肖像なのか、違うのか…。

ピーテル・デ・ホーホはフェルメールと同時代のオランダの画家で、建物の詳細な描写が得意ですが、今回の「女主人への支払い」は木造の暗めの室内が大きく描かれています。こういうのを見ていると、当時の世界にトリップしそうな気分になります。

ヤン・ステーン「テラスの陽気な集い」は、寄ってグダグダになった人物の群像で、表情もイっちゃってて醜態をさらしている描写が妙にリアリズム…。

ロココ絵画の有名どころもそろい踏み。

アントワーヌ・ヴァトー「メズタン」は、イタリアで人気を博した喜劇の舞台を総称する「コンメディア・デラルテ」の登場人物です。「コンメディア・デラルテ」にはお決まりのキャラクターがいて、そのキャラクターが登場する様々な芝居が作られていました。イタリア語では「メッツェッティーノ」といいます。

ブーシェの「ヴィーナスの化粧」は、ポンパドゥール夫人の屋敷に飾られていたといわれ、輝くような肌、天使に髪を結わせて鳩を持ったヴィーナスが描かれています。いかにもロココ好みの絵です。

フラゴナールは「二人の姉妹」。かわいらしい子供の絵です。描かれた年代を見て、このモデルになった少女たちは成長してフランス革命に遭遇したのか、それならばどんな運命に見舞われたのか…などということが気になりました。

ヴィジェ・ル・ブラン夫人も「ラ・シャルトル伯爵夫人」の絵が出ています。マリー・アントワネットのお抱え画家ですが、肖像画家として特に貴族の夫人から人気がありました。この絵も上品で美しく、衣装も素朴ながら丁寧な描写です。

もう一人女性画家、マリー・ドニーズ・ヴィレールの「マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ」という肖像画。エンパイア・スタイル風の白いドレスの女性が逆光の中に描かれています。長らく忘れられていて、この絵もダヴィッドだと思われていたとか。ダヴィッドとかなり違うと思うんですが。

イギリスからはジョシュア・レイノルズの「レディ・スミスと子供たち」。子どもたちがかわいらしいです。

グアルディの「サン・マルコ湾から望むヴェネチア」と、ターナーの「ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む」はちょうど45度変えたアングルで、前者は正面にパラッツォ・ドゥカーレ(元首の宮殿)が見え、後者は奥に端の方が見えています。前者は緻密な描写でリアル感のあるベネチアを、後者は靄に煙る印象派的な描写で、とても対照的です。

写実主義のクールベは「水浴をする若い女性」で珍しく裸婦を描いています。
その近くにジャン=レオン・ジェロームの「ピュグマリオンとガラテア」があり、解説でも白く理想的な女性美を描いたジェロームと、写実的な人体を描いたクールベの違いが指摘してありました。

ゴヤは小さな少年の肖像画。やはり描写力が卓越しています。

ルノワールは「海辺にて」「ヒナギクを持つ少女」の2点。いずれも座る女性の半身像で、ルノワールらしい柔らかなタッチで描かれています。背景のボケ方は、ルノワール近視説を信じたくなります。

エドガー・ドガは得意の踊り子で「踊り子たち、ピンクと緑」です。解説によりますと、晩年かなり目が悪くなってから描かれたものだそうです。

ゴッホはアルルの風景で「花咲く果樹園」。
セザンヌは「リンゴと洋ナシのある静物」で、いかにもセザンヌらしい静物画です。

モネは「睡蓮」ですが、晩年白内障が進んだ時期のものだそう。何が書いてあるのか要領を得ない絵で、少し前に見た展覧会の睡蓮は、あんなにも引き込まれたのに…と思うとかなりレベルが落ちてしまっている模様。

有名な大作に人が群がるだけの展覧会と違って、じっくりゆっくり見て楽しい展覧会でした。
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