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2021年11月11日20:22

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Achtung Baby/U2

 アメリカのルーツ音楽の探求を一旦終えたU2が、自身にまとわりついた生真面目で堅苦しいイメージを刷新すべく、当時の先端のダンス・ビートと戯れながら露悪的に道化を演じてみせた『アクトン・ベイビー』。

 欧州ではすでにセカンド・サマー・オブ・ラブが勃興していた時代…。古臭いルーツを遡ってる場合ではないと悟ったのだろう。ボノ曰く、「ヨシュア・トゥリーを切り倒しているような音」で始まる“ザ・フライ”が象徴的。後に流行したデジタル・ロックを思わせる豪快に変調されたサウンド。この曲に限らずエッジのギターはアルバム全編で大活躍しており、やはり出自がニューウェイブの人だからか、アメリカンな大陸的サウンドよりも、このようなギラついたエフェクティヴなプレイの方がやはり性に合っているように思える。
 続く“ミステリアス・ウェイズ”もギターは同様だが、ファンクを取り入れたらしいが全然そう感じないのが笑える。妙に硬いバスドラの音だったり、うねるベースラインだったりがエロチックなグルーヴを醸し出しており、U2のオヤジ臭さが良い方向に発揮されている(笑)。それとは正反対の透き通ったシンセ“ソー・クルエル”のような曲では、ブライアン・イーノとダニエル・ラノワのコンビが良い仕事をしている。
 普通に演奏していたらガチャガチャと猥雑な印象になってしまいかねないU2のバンド・サウンドに空間的な拡がりをもたらし、アーティスティックに尖った方向に揺り戻した二人の貢献は本当に大きいと思う。

 というわけで、どの曲も力が入っており、バラエティーに富んでおり、細部にまで趣向が凝らされていて、「力作」という言葉が本当にぴったりの一作。しかも前作からドラスティックな変化すらある。正直、U2は苦手意識があったけれど、これは評価しないのは嘘でしょう。マジ名盤すぎてビビりました。
 極めつけは、これだけ享楽的で露悪的な「ロック」なアルバムの中には不釣り合いな、“ワン”という超然としたバラッドが収録されていること。売れるアルバム、売れるバンドというのはこうあるべし!のテーゼというか。どんなに御託を並べても、単純な「名曲」が名盤と呼ばれるアルバムには必要不可欠ということを本能的に分かっている人たちだ。

 余談だが、僕はこのアルバムを聴くとき、なぜだかMr.Childrenのキャリアを思い出さずにはいられない。やっている音楽だったり時代だったりは全然違うけれども、なぜか共通点を感じずにはいられない二組。
 思えばミスチルも、自身の清廉潔白で青臭いイメージを崩そうと、あえて悪いロック・スターを演じようと「真面目」に取り組んでいた時代があった。自身のパブリック・イメージを正確に把握して、次の作品でそれを崩しにいくことで異なるファン層を獲得していこうとする強い意志(しかし崩しすぎたりはしない)はU2とも共通している。そう言えば、両者とも環境問題等のチャリティーに熱心ですよね。

 もっと細かい点で言えば、ワルっぽい感じを出したいときはデジロックっぽい音楽をやりがちだったり、そんでもってボーカルにエフェクトを掛けがちだったり(笑)。“Dance Dance Dance”なんかは今思うとめっちゃU2っぽい曲だし、それが収録された『Atomic Heart』は、なんか硬質でデジタルっぽい感じが『アクトン・ベイビー』に似ている。そんな『Atomic Heart』のラストは“ワン”よろしく、失恋の名バラッド“Over”で締めくくられる。
 そうやって無理やり紐づけていくならば、ミスチルの『DISCOVERY』は“終わりなき旅”の邦題との類似性だったり、ジャケットもそうだし、どことなくストイックな佇まいが完全に『ヨシュア・トゥリー』だよね、とか言ってみたり(あればパロディーってことでいいんでしょうか)。
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