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2021年08月18日01:51

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上村松園展

京都市美術館が京セラ美術館になって初めて行きました。どこから入っていいかとまどいました。

上村松園は、母が好きで画集が家にあります。さらに、宮尾登美子が上村松園をモデルにした小説「序の舞」を新聞に連載していたので母と読んでいました。なので大規模な展覧会が開かれるということで、ぜひ見に行きたいと思いました。

展覧会は、松園の初期作品から絶筆と言われる作品まで、各時代ごとに展示されています。初期のころは浮世絵に近いような人物描写だったり、まだ勉強中だということを感じるところがありました。しかし、若い時から並々ならぬ技量があり完成度は高いです。
画壇の傾向、特に明治の西洋画の隆盛によって、自分の日本画、とりわけ美人画の存在価値を問い直したこともあったようです。

「美人画」と言われるジャンルではありますが、松園の絵は見ていくほど、年月が経つほど画面に緊迫感が漂うのを感じます。一本の線も細かい色付けもおろそかにしないで心血を注いで一枚一枚描いていたのだろうということが画面から伝わってきます。

目玉商品は「序の舞」です。実物を見るのは初めてです。等身大ぐらい大きい絵です。重要文化財です。松園自身がこの絵は自分の女性の理想を描き出したと語っています。松園芸術の最高峰と言っていい作品です。
本当に画面の隅々まで緊迫感がみなぎり、魂のすべてを注ぎ込んで描いたことを感じさせ、見ているだけで身が引き締まる思いがします。

晩年は、松園はバストショットのサイズの絵をたくさん描いています。日常のさりげない風景を描いたものが多いです。「序の舞」を見てからそちらの部屋へ移動しますと、なんか力が抜けるのを感じました。「序の舞」を見るだけで緊張して力が入ってしまったようです。

改めて、上村松園は絵を描く以外のことを全く何もしなかった人生だったのだな、とつくづく思いました。画業にのみ専念し、自分のすべてを注ぎ込んで絵を描くことに集中していたのでしょう。

そもそも明治の初め、女性だというだけで画学校に行っても「何をしに来た」という目で見られ、それでも男性に交じってひたすら絵を勉強した人です。父は松園が生まれる前に亡くなり、母が京都で茶葉の商いをしながら松園を育てました。この母がまた偉かった。松園には自分の進みたい道を行くように言い、普通の女の子が家事全般を仕込まれる時代に、本当に絵だけ描ける環境を作ってあげました。

松園の運命がすごいのがこの先です。
松園は未婚で男の子を産みました。父親の名は一切言いませんでした。松園の母がその子を育てました。しかし母親はだいたい先に亡くなるものです。ところが、そのころには息子が成長して嫁さんをもらっていたのです。結局松園はほぼ家事に煩わされることなく、好きなだけ画室にこもって絵に集中し続けることができたのです。

一見単なる美人画のように見えて、こうして実物を見てみると、いずれも魂を削ってでも完璧な絵を作ろうとした気迫がにじみ出ています。髪形に髪飾り、着物の色柄と帯の組み合わせ、全てが完璧です。音声ガイドで髪形の説明もありましたが、そうして見ますと確かに絵に描かれたのがどんな女性かによって全て描き分けられています。

松園の絵はよく知っているつもりでしたが、実物を見て改めて非常にストイックな、緊迫感のあふれる絵だということを感じました。襟を正して、心して向き合わなくてはいけません。

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