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2021年08月15日06:08

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風林火山伝 第57話 秀吉脱出

その急ぎの使者はなんと織田信長からのものであったのである。
使者は吹き矢を煙幕が広がるなか、巫女たちにめがけてすばやく連射した。
吹き矢は羽柴秀吉を抑えつけていた巫女たちに命中した。吹き矢には眠り薬が入っており、巫女たちは眠りにつきばたばたと倒れていった。

そして使者は、煙幕の中、小声で羽柴秀吉に「秀吉様、危ないところでございました。信長様は、伊賀上野城を出陣し、武田軍との決戦に備えるべく京に向かっております。急ぎ、秀吉様に合流されたきとのよしとのことで、急ぎ拙者を秀吉様の使いとして命ぜられました。拙者の名は、簗田政綱と申します。以後、お見知りおきを。」と言った。

秀吉は「いいところに、よく来てくれた。もし、政綱殿が来てくれていなかったら、わしは武田軍の捕虜となっていたところであった。礼を言う。」と言いながら、どさくさに紛れて1人の眠っている巫女 府月を連れて、養老の陣で秀吉を守っていた居眠りしている十数人の兵を見捨てて竹中半兵衛、羽柴秀長、山内一豊を連れて陣から紙一重で撤退したのである。また、周囲を守っていた羽柴軍の兵たちは秀吉と使者に追随した。

そして、煙幕の煙が晴れたあと、武藤喜兵衛は秀吉と重臣たちがいないこと、また一人の巫女 府月がいないことに気が付いた。「くそっ、あと一息だったのに、こんなところで織田の邪魔ものが入るとは計算外であった。信廉様の手勢が加勢してくれるはずであったのに、信廉様は何をしているのだろうと。」独り言を言った。

そのころ、喜兵衛を援護するはずであった信廉の手勢は、羽柴軍の養老の陣のすぐ近くに待機していたが、養老の陣の周囲は羽柴軍の守りが手厚く攻めあぐねていたのであった。手勢たちは、喜兵衛の合図で突撃する手はずになっていた。しかし、喜兵衛は信長の使者の突然の煙幕にて、手勢に合図の笛を吹く機会を逸してしまったのである。

そして、信廉の手勢は周囲の養老の陣から羽柴軍が撤退するのを見て、不思議に思いつつ、秀吉の陣に突撃したのであった。しかし、そこには、喜兵衛と音月を含む巫女4人、居眠りをする羽柴軍の十数人の兵のみであった。

信廉の手勢の筆頭、甘利信康は、喜兵衛に「秀吉の姿がないが、どうなったのか。また巫女が一人いないがいかに。」と問いただした。

喜兵衛は「面目ござらん。加勢の合図の笛を吹こうとしていたら、突如、織田の使者に煙幕をはられ、このざまでございます。まだ秀吉は近くにいるはず。追い打ちをいたしましょうぞ。一人の巫女、府月は秀吉が混乱に紛れて連れ去ったものと思われますが、化けの効果は約6時間しかないので、もとのきつねに戻り、秀吉から逃げ、千代保稲荷に戻るでしょう。」と言った。

「実は、御屋形様より、急遽、信長は京に向かっており、信長と決戦を挑むべく、兵を集結するよう指示があった。急ぎ、信廉様の軍に戻られたい。」と信康は言った。

喜兵衛は養老の陣で居眠りしている十数人の兵を生け捕りにし、千代保稲荷に待機する
信廉軍のもとへ引き返したのであった。

一方、秀吉は早馬に巫女の府月を乗せ、兵を休めるために急ぎ、伊勢長島城まで戻ったのであった。そして秀吉は連れ帰った巫女 府月と一夜を過ごしたのであった。
                                

                                 つづく


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