蔓延防止法適用で、上映回数が一日一回になってしまったのにも煽られて、2回目を見に行く。世間に出回っている、冒頭映像の紹介動画を見ても、パソのモニターだと、却って飢餓感覚に囚われてしまって。前に、作品全体像を記したので、目に留まった場面だとか細かいところを、見た方と分かち合うつもりで書くので、その点、留意してくださいませ。
演劇情報には、まったくもって疎いので、もとの舞台版なんか知り得なかったけれど。映像化という事で、カメラの機動性、視点の多角化でもって、身一つで上陸した異国の地アメリカが、故郷となっている、ワシントンハイツのありのままを映し出すロケが多用できて、舞台美術や、ライティングを駆使してもステージ上の展開だけの「視点」に留まらず、カットの切り替えに、アパートの壁を駆けあがるような多元的描写とか、鳩を飛ばし、ビル群のうえからファブリックを垂らして、自在に視点や視覚を操って、映像ならではの見せ方に徹している。
映像らしい芸術性を感じたのは、移住したラティーノ達のお母さん的存在のアブエラが昏睡の中で、半生を奉公先に通った地下鉄をステージに振り返るナンバーで、尽きかける生命力を象徴するかの、地下鉄のフォームが延々と続く不穏な暗がり。その狭い中に、ダンサーが一列に並んで、黄泉の世界に誘うかの縦列ダンスを画面の向こう側まで人が埋め尽くしていて。舞台では、見られない演出。
あらためて、冒頭の場面は、人物紹介だとか、キャラクターと並んで大切な街を見せるのだけど。語り部である、ウスナビが、親から譲り受けた店の前で、「やあ、おはよう」と小声から、お店を主要人物が、行きかう間、次第にナンバーは高まって行って、店の直ぐ外の「群舞」で、最高潮を迎えて映像のパワーを放っています。
ウスナビ役のアンソニー・モラスさんはじめ、親友ベニー役、その彼女で街一の才女のニーナや、ウスナビが恋焦がれるバネッサ役それぞれに、ナンバーがあります。(店を手伝う従兄役のソニー君には、無いのが残念だけど。) これまで、映画で陽の当たらなかったラティーノの存在を焼き付けてますが、中でも、バネッサ役のメリッサ・バレラさんの腹筋も露わなスリムな短パン姿に、惹き付けられます。ハラスメントと、受け取られたら、ご容赦願います。
前にも書きましたが、アブエラ婆さん始め、セリフやナンバーで歌われる歌詞が、なかなか、効いていて。感想のサブタイトルも、それらの引用だったりしますが。我々の様な単一民族(込み入った事は、割愛しますが)国家では、なかなか、判り得ない含みが伝わって来ます。
裸一貫でアメリカに上陸して、身分の高い人達に使われ粉骨砕身、異国で生活を築いてきたわけですが。根なし草で、「力が無い」、パワーレスな立場である事を象徴する、停電(パワーダウン)の事態が取り扱われますが。根付いた街も、地価が上がって、ニーナの父は学費捻出で、経営するタクシー会社を売却して。それによって、働いていたベニーは、無職になって、ニーナとも、一緒に居られそうもないし。ウスナビだって、「自己嫌悪」的気分にハマって、折角接近したバネッサと「溝」を広げるわ、父母の代からの望郷願望に拍車が掛るわで、ワシントンハイツへの執着も薄れるのだけれど。
それまで、下世話な噂好きとしか印象のなかった、美容院を切り盛りするダニエラおばさん他二人が、電気が復旧せず夏の暑さに参っている、アパートに住む者達に、「美容院移転で旅立つのに見送らないのは、どういう事か」と。更には「そんなんじゃ、お前ら祖国にラティーノとして顔向けできない。心に旗を掲げろよ」、どなり上げ、鼓舞する「カルナバル」ってナンバーは、特に最高潮に盛り上がります。即興的な歌詞を、グルーブに乗せて。また、これまでのナンバーの節も組込み、フォーンや打楽器が響くと、ダラけていた者たちは立ち上がり、悩み落ち込む者達も釣られて、踊りの輪に入って、見ているこちらも熱気に飲み込まれる。
メインキャストの今後の活躍の場である作品も、決まっている様で、この作品からステップアップして貰いたいですが。
劇中、ピラグア(プエルトリコのかき氷)売りのおじさんが、メインストーリーを担う訳じゃないのに、「結構スポットを浴びてるなあ。」って初見の時思ったのですが。この舞台劇を書いて作詞作曲して、舞台で自らウスナビを演じていたリン=マヌエル・ミランダさんでした。映像化にあたって、名誉配役的に、氷売りとして、ワシントンハイツの労働者代表を担ったようで。エンドタイトルが終わっても、終幕前に、出張っていますから、お見逃しなきよう。因みに、張り合っている移動アイスクリーム屋の主人は、舞台版でベニーを演じられた方だそうです。ミランダさんも、今後、ディズニーの作品で、ナンバーを書くらしいですから、この辺り、業界というのは、才能の先取りで、抜け目ないです。
「クレイジーリッチ」で、注目の監督となったジョンМチュウさんがメガホンを担って、その前の音楽ものの経験を活かして、ブロードウェイの舞台演目の映像化を成功に導かれました。この方の次回作が、「ウイキッド」で、再び舞台ミュージカルを手掛けるという事で、こちらも楽しみとなりました。
ミュージカル映画としての出来もさることながら、いろいろ劇中あるけれど、皆、誰かの為に考え、行動するのが、時節柄もあってか、気持ちいいですし。書いているうちに、また、スクリーンで体感したくなってきちゃいました。
拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
2021.08.09シネプラザサントムーン 劇場�,砲�
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