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2020年05月25日22:44

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伍連徳〜伝染病防止に賭けた人生〜(3)

伍連徳は北京宛に遺体の焼却の許可を求める電報を打つため、于駟興に署名を求めました。さらに随行していた官員たちも署名しました。そして墓地は封鎖されました。
電報を受け取った施肇基は各所で許可を求めるも拒絶されていました。旧暦の正月すなわち春節の大みそかになってやっとのことで摂政王戴澧の許可を得ることができました。
伍連徳は大みそかの夜になってようやく「奏上を認める」という知らせを受け取りました。そして助手たちと一緒に乾杯しました。

早速大量の灯油を用意させ、官員たちや社会の名士、外国の領事や商人たち、さらにカメラマンや記者たちを呼びました。1911年1月31日、それは旧暦の正月、春節の日でした。準備が整うと、役人たちが声を高く上げ「聖旨により点火!」宣言しました。皆の目の前で伍連徳はたいまつに火をともし、棺の上に載せました。油をかけられた棺はたちまち燃え広がり、黒い煙が上がりました。

前日の死亡者は168人でしたが、この日は15人になりました。それからも死亡者は減り続けました。
しかしある日、巡邏隊が夜中にこっそり棺が運ばれるのを見つけました。調査すると、教会から墓地に運ばれていました。教会に人を派遣して事情を聴きに行かせましたが、聖職者たちは「私たちには神の御加護があります。干渉しないでください」と言いました。伍連徳はフランス領事を伴って教会を訪ねました。ちょうどミサの時刻でしたが、中から咳をする声が聞こえます。牧師に病人は隔離病棟に送らなくてはならないと説得しても、「全知全能の主が我々を守ってくださいます」と言って聞きません。(フランス領事と一緒に行って、フランス語で交渉したと書いてあって、ミサを行っていたということはカトリックじゃないでしょうか?だったら神父のはずですが)。

伍連徳は非常措置を取ることにしました。この教会は300人の信徒がいる大きな教会です。調べると、すでに100人の死亡者が出ており、さらに敷地にはまだ運ばれていない27体分の棺がありました。即刻感染者を調べて隔離病院へ送り、死体は焼却しました。結局300人の信徒のうち牧師を含む243人が感染していました。
このような盲点があったため、さらにハルビンの教会を調べて検査を行い、隔離を徹底しました。そうして防疫の死角もなくなっていきました。

1911年3月1日、傅家甸のハルビン防疫協会の一室で、死亡者の報告を待ちながら午前零時を迎えました。しかしこの日は死亡報告はありませんでした。それから5日たっても死亡者は出ませんでした。

今回のペストが発生してから、清朝政府は欧米各国に救援を求めていました。ちょうど各国の専門家が北京に集まったころ、伍連徳がペストを収束させていました。施肇基は、この機会に清朝政府に国際防疫大会を開くことを提案しました。清朝政府は各国大使館に大会の開催を呼びかけ、各国が呼びかけに答えました。そこへ日本領事がペスト菌を発見した北里柴三郎を議長にすることを提案してきました。しかしイギリスの医者が反駁しました。ケンブリッジ大学卒の伍連徳博士こそがこの度の防疫の功労者である。伍連徳先生を置いてほかに議長となるべき人はいない、と主張しました。するアメリカ、ロシア、フランス、と各国の代表がそれに賛同しました。

4月初、奉天で万国ペスト研究会議が開かれました。これは清朝での最初の大規模な国際会議でした。会議場では学術交流が行われ、伍連徳博士の肺ペストの発見が認められました。ペストには2種類あること、まず腺ペストで、ネスミの血を吸ったノミが人に移って感染する。もう一つは肺ペストで、これが1910年末から1911年にかけて東北で流行したペストである。これは飛沫感染で、臨床表現では気管支肺炎として、咳と出血と肺水腫を併発し3−4日で死亡する。
会議は11か国の代表が集まり、20日間行われました。会議終了後、伍連徳は北京へ行って報告をしました。雪が舞う頃に出征し、春風に迎えられて凱旋したわけです。

しかし伍連徳はその後ハルビンに戻りました。世界の防疫史の記録からしても、ペストはいつか戻ってくると思ったからです。朝廷から衛生司長を命じられたのも断り、従来の東北三省防疫総会総医官の地位にとどまりました。ハルビンに戻ると、助手を伴って満州里と外バイカルへ行って、タバルガンとペストの関係を調査しました。その関係が明らかになると、北満の防疫網を整備しました。主要地域に病院を作って防疫のための部署を作りました。東北では潜伏期に入っていて、いつかまた発生することを予想し気を緩めることはありませんでした。
1911年10月に辛亥革命がおこり、中華民国が成立しました。清朝の衛生司長を断ったのは、伍連徳にとって幸いでした。

(続く)
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