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2020年04月14日01:38

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どこかの駅で誰かとすれ違うためだけに生まれてきた


どこかの駅で誰かとすれ違うためだけに生まれてきた
やあ、と言葉を交わし合うこともなく
親密な他人と認め合うような
静かな笑みを交わし合うこともなく
その目に
特有の孤独を共有することもなく
ただただ
景色のひとつとして
互いが
すれ違うだけの人生を
ホームで拾った切符の行き先は
もういまはない駅へ行くためのものだった
思えば
闇雲に決める行き先は
闇雲に塗り潰す時刻表は

ぼくは
ペーパーバックの隙間に
本当の理由を隠して
まだ見ぬ場所へ急ぐ
出来れば
二度と帰れない場所がいい
出来れば
誰にも出会えない場所がいい
過去と現在が
未来をあやふやにするような
そんな一画で
能動的な化石のように
いびつな窓を探して居たいのだ
ふたつ手前の国で手に入れた絵葉書を知り合いに送って
そいつの中の時差になり
そしてそれきり元いた場所のことは
記憶から抜け落ちてしまう
固定電話の呼び出し音が
けたたましく鳴り響くのは
決まってそこに誰もいない時なんだ

駅員が列車に乗り込むために
あれこれと忙しなく踊るのを見ながら
いつだって
ぼくではないものになりたかった
いずれ
ぼくになりうるかもしれないいきものは
薄汚れた無人駅の
浮遊霊になるかもしれない
その影を見つけた誰かは、そうさ


ホームの片隅で
もう使えない切符を拾うかもしれない
その時のために
書置きの文句だけは
きちんと
決めて出ておいでよね

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