mixiユーザー(id:9160185)

2019年12月01日21:48

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(だから、あなたに会うたび、ラプソディを打ち鳴らすよう)


イルーガルな魔法に手を染めて粘度の高い夜の海に漂っている―眼球の裏にはバッタが棲みついて視神経を齧るたびに貫くような痛みが走る、きみに送った手紙にはたいしたことは書けなかった、それは意地と言えば意地のようなものだったかもしれない…夢は徹底的に加工されている、印象的には違いないが不自然さが鼻につく、忌々しいがそれを撤去する手段はない―おれは捨てられたコンビニの袋のように横たわっているだけだ、どんな横槍にも抗うことはなく…夢は徹底的に加工されている、それは印象的だが根本的な要因ではない、それはべつのところにある、べつのところに…ナナ・ムスクーリが歌うアマポーラが聞こえる、それはこんなところに居るおれを子供のような気持ちにさせてくれる、アマポーラ…そんなささやかなボリュームでも、ないよりはずっといい―声の出し方を忘れたのではないかと思うことがたまにある、おれは無駄な口をきくことをしないから…それでも必要な時は発し続けるさ、手元にあるカードには、必ずそれが一枚潜んでいる、必要な時に必要なだけ発すること、時には過剰に…過剰なくらいに…もともと、スタンダードよりはほんの少し、ぶっ飛んでいるものの方が好きだった、ブチ切れていて―だけど同時にサイレンスが存在しているような、そんな遊びが…潜在意識を切り刻んでばら撒いてくれるようなアティチュード、そんなものばかり求めていたような気がする、いつだって…おれは自分のことをそんなに気の利いた人間だとは思っていない、ただただ愚直に貪欲に、ある種の興奮を求め続けているだけだ、そこにはまったく嘘はない、それに関しては、おれは少しも嘘をつかずに話すことが出来る、たとえば、他人をおとしめたりとか、そんなギミックを使うことなく、ね―苦労して手を動かし、おのれの顔に触れてみる、まだそこにあるか、まだそこに居るだろうか―間違いない、まだ存在している、もうしぶんない話だ、どんな場所に居たって…また叫ぶことが出来るのなら何とかなる、新しいリズムを探している、奥底から産まれてくる新しいリズム、それにはまだどんなアレンジも加えられてはいない、すでに出来上がったものを信じてはならない、それは必ず新しいリズムの妨げになる、叫びは塗り替えられなければならない、鮮烈なものでなくていい、正直な、ありのままのもので構わない、本質はいつだって、少し目を凝らして執拗に見つめてみなければわからないところに隠されているものだ、だからおれはあまり「わかった」と言わない、それが結論ではなく、一時的な足場だと知っているからだ、いったんそこを踏みつけて次へ行くだけのものだ…クソッ、バッタの野郎…痛みにも種類がある、そうだろ?長くつきまとうものは、おれ自身が知らなければならない何かを含んでいる、それは警告のようなものだ、おれの視線がなにか間違っているとでもこのバッタは言うのだろうか…?ゆっくり考えてみるには羽音が五月蠅過ぎる、ギチギチ、ギチギチ…おお、あの野郎、噛み千切りやがった、温い感触が眼球の裏側をゆっくりと覆っていく、とんでもない痛みだ…おれは目を閉じる、けれどそれはこらえるには無謀過ぎた、おれは気を失ってしまう―夢の中でおれはそのバッタと対峙した、そいつは歯を真っ赤に染めてこちらを見て笑っていた、ギチギチ、ギチギチ…おれは夢の中で激昂し、バッタの頭を叩き潰した、スナックを齧った時のような軽い音がして、バッタの頭部は紙のように潰れた、だから何だって言うんだ?血は流れ続ける、おれはそのことを知ってる、強烈な痛みだ、でもそれも、しばらくのあいだのことだ―おれはまた見つめる力を少し失うだろう、でもそれは致命的じゃない、少しづつ何かを失くしながら、失くすたびにムキになって、それまで以上に手に入れようとするだろう、この世は最高難度のアトラクション・ゲームだ、ゴールに辿り着けるのは体力の持ち主でも、知力の持ち主でもない、生きようという意地を持ったものだけが、そのラインを切ることが出来る、走ればいいというものではなく、歩けばいいというものではない、その瞬間瞬間を、確かに踏みしめていると感じられるものだけが、道の先へ行くことが出来る、ああ!イルーガルな魔法に手を染めて夜の海を漂っている、ともすれば溺れそうなその海の中は奇妙なほど暖かくて、おれはこの夜をともすればどんな叫びも残さずに眠り込んでしまうかもしれない、けれどどうだろう、右手は動かすことが出来た、ナナ・ムスクーリは歌い続けている…おれはほんの少し迷うけれど、本当はいつだって選ぶべきカードは決まっているものなのさ。


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