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2019年09月16日10:44
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ジ・オータム・ストーン
先日、９．１１で震災から８年と半年経った名取市閖上である。
かわまちてらす・・・閖上朝市・・・湾内を一周するクルージングもある。
インスタ映えとやらで流行ってる店もある一方で、正装で慰霊碑を訪れる人々もいる。
すっかり変わってしまった。
そこにはかつて街があった・・・
僕はそれを知っている。
そして今の閖上がいかに希望に満ちていたとしても、僕にはとてもよそよそしい。
寧ろガレキだらけでもかつての生活のカケラが残っていた風景の方が馴染み深い。
寿司屋、床屋、生協、寺、消防の分署、コイン洗車場・・・
歳をとってしまったせいか・・・涙腺が緩む。
やっとガレキだらけの街にも馴染んできたのに・・・
被災ガラスの天使の轍も結局は撮れずじまいだ。
一方でまだ取り残されている建物もある。
ディズニーシーの中にひっそりとある酒場のように・・・
あるいはアルコール依存者の隠し飲みのように・・・
巨大なショッピングモールの中の片隅に追いやられた目立たない喫煙所のように・・・
僕は背徳感を感じながら、コソコソと逃げ込む。
ノスタルジーという名の心の避難所なのかもしれない。
僕はタルコフスキーの映画ストーカーのゾーンの番人のようだ。
震災は忘れても震災で学んだ事は忘れない・・・それが閖上の震災伝承館のキャッチフレーズだ。
個人的に僕は震災以降と震災以前で完璧に美的感覚が変わっている。
劣化であるとかダメージとか・・・そういったものが醸す美というものに惹かれるようになった。
以前は汚らしいと思っていた廃棄物の類いが生活の形見と思えるようになった。
そしてこれも歳をとったせいか・・・
真新しい街に馴染めずにいる。
新しい希望に馴染めずにいる。
それがとても喜ばしい風景である事は頭ではよくわかっている。
そしていつの時代にも昔を語るものが、疎まれる事もよくわかっている。
6年間、仮設校舎で過ごした子供が真新しい新築の小中一貫校に馴染めないように・・・俯瞰して眺めてたつもりが僕は大分震災後の風景に取り込まれてしまっていた。
きっとまだ僕が老成しきってない証拠なのだろうとも思う。
そこが名取市閖上だと感じられるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
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