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2019年02月12日03:02

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破れた障子

なんの脈絡もなく ふと思い出した

昔 おれは注文家具屋をやっていた
時折 デパートで展示会もやっていた
その展示会に来たらしいお客さんから連絡があった

「家具を作りたいので一度家まで見に来て欲しい」

とのことだった
ありがとうございますと 住所をうかがい
翌日 少し離れた町まで出向いた

家は築年数はほどほど経っているが
ごく普通の住宅街の一軒家だった
玄関先の呼び鈴を押すと
ドアが開いて電話をいただいたと思われる奥さんが明るい笑顔で迎えてくれた
どうぞどうぞと案内されるままに部屋に入れていただき
椅子に腰掛け お茶など出してもらった
しかし おれは持ってきた資料を広げることもできずに呆然と部屋を眺めていた

通された部屋は少し狭目のLDで隣り合った部屋は障子と襖で仕切られていて
ふた部屋ほどを眺めることができた
驚いたのは障子と襖で ことごとく紙は破り取られ
骨がむき出しになった状態だった
部屋中には毛布や食べ物が転がっており
足の踏み場もないような状態だった
まあ 気を取り直して
その奥さんの方に向かい 改めて挨拶をする
奥さんは相変わらず笑顔でテーブルセットを頼みたいというような話をしていた
そうですかいと 資料を取り出そうとしていた時
二階からきゃっきゃと子供の声がして
そのまま一階のリビングに5歳ほどの姉妹が二人走りこんできた
彼女たちはおれに目もくれず 隣の部屋に飛び込むと
骨だけになった襖を天井近くまで猿のように駆け上り
そこから2mほど飛び降りるという動作を交互に繰り返し始めた
そしてそれは おれが帰るまで延々と続いた
おれはびっくりしてしばらく眺めていたが
奥さんはそれを止めるでもなく
まるで何もなかったのように笑顔のままだ

そういえばこの奥さん
お会いしてからずっとこの表情をしたままだった
そこからどんな話をしたのかよく覚えていないが
とりあえず打ち合わせをして
後日見積書と絵を送った
それ以来何の返事もない

時々思い出して
あの家は本当にあったのだろうかと考える
あんまり思い出したくはないけれども

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