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2018年12月19日23:26

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【音楽】 交声曲 海道東征 @東京芸術劇場

今日は、年末に相応しい素晴らしいコンサートに行った。平日ゆえ仕事があるが、夕方は池袋に向かった。「交声曲 海道東征」の演奏会である。演奏会名が、「○○○○演奏会」というものではなく、ずばり「交声曲 海道東征」なので、「海道東征」だけをやるのかと思っていたら、もう1曲あった。

 ・モーツァルト: 交響曲第41番「ジュピター」
 ・信時潔: 交声曲「海道東征」

   北原幸男指揮 東京交響楽団
   武蔵野音楽大学合唱団/武蔵野音楽大学附属音楽教室生徒
   ソプラノ:澤畑恵美、ソプラノ:盛田麻央、メゾソプラノ:田村由貴絵
   テノール:与儀巧、バリトン:原田圭

   会場: 東京芸術劇場 (19:00 開演)


モーツァルトの「ジュピター」もプログラムにあることに当日になって気付いたが、たしかにチラシにも書いてあった。その「ジュピター」も、「特別に素晴らしい!!」という訳ではないが、そこはプロのオーケストラである。きちんと卒なくまとめて、退屈することなく最後まで聴くことができた。(「ジュピター」が前座のようになってしまう演奏会は、今年の夏頃にもあった気がする。)

休憩のあとは「海道東征」である。「交声曲」というのもあまり馴染みがない言葉だが、「カンタータ」のことである。(「海道東征」以外に交声曲というのは聞いたことないが。)

オーケストラにはピアノも加わり、独唱歌手は5人、混声合唱に児童合唱と、ベートーヴェンの「第九」よりも少しだけ大掛かりである。この曲は、「第一章 高千穂」、「第二章 大和思慕」、「第三章 御船出」、「第四章 御船謡」、「第五章 速吸と菟狭」、「第六章 海道回顧」、「第七章 白肩の津上陸」、「第八章 天業恢弘」の8つの楽章からなり、「古事記」や「日本書紀」に基づく、神武東征を題材とした北原白秋の詩に信時潔が作曲した、演奏時間60分に及ぶ大曲である。

CDは3種類持っていて、録音では聴いていたが、一度生で聴きたいと思っていたのが、ようやく実現した。まさに日本人の心に直接触れる曲であり、激しく盛り上がって感動したというのとは少し違い、終演後にじわっとくるような、心が洗われる曲なのである。録音で聴くよりも、やはり生で聴く方がはるかに良い。児童合唱が歌う「第五章」の、「亀の甲に揺られて 潮の瀬に揺られて」のところは、この曲の中でも特に好きなところで、このおそらく4小節くらいの旋律が、あまりにもストレートに心に響くのである。「美しいメロディーだなあ」という次元を超えた何かがあるのである。これは完全に個人的な感覚なので、同意を求めるものではないが。

児童合唱団は、第五章の前に舞台に登場したが、その際も客席から拍手は入らず静かに待っていて、気分が中断されることもなかった。(これを心配していたのだが、杞憂だった。)

最後も派手にジャンジャンと終わる曲ではない。どちらかというと静かに終わる感じである。このあたりも、「日本的」なのかもしれないと勝手に思ったりした。

この感動的な名曲名演のあとであるが、アンコール演奏が2曲あった。もちろん信時潔の作品で、「学習院院歌」と「海ゆかば」である。「学習院院歌」は知らなかったが、やはり信時さんの作曲らしい雰囲気がある。最後は「海ゆかば」で締めくくって、アンコール演奏も感動的に終えた。

今回の演奏会は、日本では暮れになるとベートーヴェンの「第九」が風物詩のようになっているが、日本人による日本人のための「海道東征」を静かに楽しむことを、日本文化の再評価の一環として根付かせていきたい、という思いから企画されたものだという。明治150年で平成最後の年末という節目にもふさわしい。神武東征を歌った作品であることや、皇紀二千六百年奉祝曲として作られたという経緯から、戦後不当に封印されていた作品だが、それはおかしな話である。

来年も、東京、大阪、札幌で「海道東征」の演奏会が予定されているらしい。一昔前までは知る人も少なかった(私も知らなかった)この作品も、だんだんと認知度があがってきているようだ。
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