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2016年11月20日11:38

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「捕まえようとすれば逃げてしまう」春樹と「ノルウェイの森」

先の「ノルウェイの森」の誤訳問題について書いて思ったのは
村上春樹氏はそれについてどう考えたのだろう?ということです。
世界的に大ヒットした小説「ノルウェイの森」。
陰鬱な雨模様のハンブルク空港に着陸した飛行機のBGMで「ノルウェイの森」が流れ、
37歳の僕は、20歳の頃の草原の匂いを思い出し、激しく混乱する。
こんな書き出しで始まるこの小説は、私に言わせれば春樹の作品の中では異質な存在で
あまり好きではないのですが、そう言いながら何度読み返したか分からない。
で、英語に堪能な春樹が、何を思ってこういう題をつけたのだろう?と。

ネットで探したら出て来ました。
2011年発刊の春樹の「雑文集」という本の中で言及しているらしい。

フォト

(2009年に行ったリバプールのCavern Club)

"翻訳者のはしくれとして一言いわせてもらえるなら、Norwegian Woodということばの正しい解釈はあくまでもNorwegian Woodであって、それ以外の解釈はみんな多かれ少なかれ間違っているのではないか。歌詞のコンテクストを検証してみれば、Norwegian Woodということばのアンビギュアスな(規定不能な)響きがこの曲と詞を支配していることは明白だし、それをなにかひとつにはっきりと規定するという行為はいささか無理があるからだ。それは日本語においても英語においても、変わりはない。捕まえようとすれば、逃げてしまう。もちろんそのことば自体として含むイメージのひとつとして、ノルウェイ製の家具=北欧家具、という可能性はある。でもそれがすべてでない。もしそれがすべてだと主張する人がいたら、そういう狭義な決めつけ方は、この曲のアンビギュイティーがリスナーに与えている不思議な奥の深さ(その深さこそがこの曲の生命なのだ)を致命的に損なってしまうのではないだろうか。それこそ「木を見て森を見ず」ではないか。Norwegian Woodは正確には「ノルウェイの森」ではないかもしれない。しかし同様に「ノルウェイ製の家具」でもないというのが僕の個人的見解である。"

"この、Norwegian Woodというタイトルに関してはもうひとつ興味深い説がある。ジョージ・ハリスンのマネージメントをしているオフィスに勤めているあるアメリカ人女性から「本人から聞いた話」として、ニューヨークのパーテイーで教えてもらった話だ。「Norwegian Woodというのは本当のタイトルじゃなかったの。最初のタイトルは"Knowing She Would"というものだったの。歌詞の前後を考えたら、その意味はわかるわよね?(つまり、"Isn't it good, knowing she would?)彼女がやらせてくれるってわかっているのは素敵だよな、ということだ)でもね、レコード会社はそんなアンモラルな文句は録音できないってクレームをつけたわけ。ほら、当時はまだそういう規制が厳しかったから。そこでジョン・レノンは足跡で、Knowing She Wouldを語呂合わせでNorwegian Woodに変えちゃったわけ。そうしたら何がなんだかかわかんないじゃない。タイトル自体、一種の冗談みたいなものだったわけ」。"
(村上春樹「雑文集」から)

フォト

(同じくリバプールのストロベリーフィールドの門)

Norwegian Woodは、春樹にとってはあくまでもNorwegian Wood。
これが結論か。
確かに彼の作品のタイトルは、歌の題名からそのまま取ったのも多いのです。
私は春樹の評判になった本は殆ど読んでいたつもりでいたのですが
「雑文集」という題名が気に入らなくて、これは買っていなかったのでした。

こちらを参考にさせて頂きました。
「ノルウェイの森」誤訳問題について http://yagian.hatenablog.com/entry/20110424/1303634272
【ノーベル賞残念対談】内田樹×平川克美「なぜ世界中の人が村上春樹の小説にアクセスするのか」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33810?page=4
村上春樹「ノルウェイの森」という題名について http://oshiete.goo.ne.jp/qa/8097535.html

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