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2016年02月14日19:28

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エピソードEX5(リレー)その3

マイミクの綾華☆☆様のコミュニティにおけるリレーエピソード『から騒ぎの感謝祭』に更新がありましたのでお知らせいたします。

なお綾華☆☆様のコミュは下記のアドレスです。シリーズ本編をご覧になられる場合はこちらへお回り下さい。参加は綾華☆☆様の承認制ですが、申請はどうぞお気軽に。

「ZERO Another BALLAD」
http://mixi.jp/view_community.pl?id=5150160&_from=subscribed_bbs_feed


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EXリレーエピソード『から騒ぎの感謝祭』
MF

take-03

January 26th PM13:20

 こうして一つの体の二人の若者と異星の乙女は食事のかたわら話をしていたのだが、食が生の根幹をなすことが宇宙を貫く原理である以上、地球の命運を担う一つの体の二人の若者にも決してひけをとらぬ真剣さで食事や食べ物それ自体に向き合う者たちが存在するのもけだし当然のことだった。たとえば……。


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 旧湾岸通のその店には、今日も大勢の客が列をなしていた。
「へい、鳥丼お待ち!」
 和風とも洋風とも、さらには中華風ともいい難い不思議な香りの丼を我先にかき込む客また客。明らかに人間ならざる姿の者もいるのはこの地域の常としても、大部分は人間の姿をしているのみならず中身も正真正銘の地球人だった。もともと宇宙人が多く住むこの旧湾岸通ならではの需要を当て込んで、まだ一号店しかなかった時期に宇宙人限定の戦略商品として開発された牛野屋の鳥丼。だが一杯百九十円というその安さのみならず、その奇妙な味が地球人たちに思わぬ評判を呼び、キャンペーン期間の開始からわずか二ヶ月で牛野屋は旧湾岸通に四店を構えるに留まらず、地域外初となる五号店のオープンも目前となっていた。諜報員としてかつてダダ星から地球に送り込まれた〇一五号のコードネームで呼ばれた異星人は、己が出自に基づく情報収集能力をフルに活かして裸一貫で始めた一件の店を小規模ながらもチェーンの体裁を持つ陣容に育て上げ、それが幸いし一度はゴミに埋もれたこの一号店も被害を免れた三店が営業を続行できたおかげで早々と復旧させることができたのだ。そして再開御礼にかこつけて地球人をターゲットにレシピを見直した鳥丼を試験的に投入してきたこの一号店での客の反応に、彼は成功への手応えを感じていた。すでに五号店の店舗は完成し話題性を狙いあえて宇宙人で固めたスタッフも研修を終えようとしていた。

「あとはなにか、宣伝の機会でもあれば申し分ないが……」
 昼も過ぎさしもの客足も一段落ついたとき、まるでその言葉に応えるかのように郵便受けに市報の号外が投げ込まれた。そこにはB・i・R・Dジャパン門前で開催予定の出店市の参加概要と申込書が刷られていた。


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「それ物販もいけるんか? はよ渡さんかい。あんた漢字多いと読めんやろが!」
 牛野屋一号店から筋二本先、やはり旧湾岸通に店を構えるスーパー丸太屋でそういったのはいかにも図太そうな女社長だった。地球人の身でこんな場所に店を構えているばかりか、お世辞にも高いとはいえない時給に応じるなら宇宙人だろうとお構いなしに雇い入れるのだから胆力ひとつ取ってもただ者でないのは間違いない。今も仕入れ担当のケムール人から市報を引ったくり鼻眼鏡ごしに文面を一瞥するや、大音声で指示を出す。
「ブース二つ分押さえとき。あんたがこないだ一桁間違えて仕入れた卵や野菜、なにがなんでも売りさばくでえっ!」


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「ようし押さえるで! 不良在庫一掃のチャンスや。レシピの倍ルーを使こたら数も捌けるし味も濃くなって一石二鳥! 当日はお仲間にも助っ人頼むでドース」
 いうなり申込用紙に書き込むメダルカレーのタニマチ社長だったが、その言葉はドースの耳には全く入っていなかった。飲食や物販ブースが立ち並ぶ出店市となれば普段の具なしカレーにパンの耳という単調きわまりない食生活からは想像もつかぬ黄金郷がこの世に現出するも同然であるのに、その上B・i・R・D絡みのイベントである以上は夢にまで出てくるあのカナリーの食堂が参加する可能性もあるのだ! 地球人の社長とポンポス星人の経理職はその後夕方まで仕事もろくに手に着かぬままそれぞれ勝手な夢を思い描いては悦に入る状態で過ごしたあげく、終業の鐘が鳴るやドースはこの一大ニュースを赤貧にあえぐ仲間たちに伝えるべく走り去ったのだ。日給代わりに現物支給される生命線たる賞味期間切れの銅箱を持ち帰ることも忘れて。


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「兄者、蕎麦が打てた」「うむ」
 夢野市立大学からほど近い下宿にて互いに向き合い正座する、鏡に映したもののごとき二つの姿。年齢に似ぬまっ白髪と決して外さぬサングラスで学内では知らぬ者なき名物講師海原兄弟。その正体はかの『史上最低の侵略』事件のポンポス星人と並ぶ一方の張本人たる双子のサロメ星人オスカーとドリアンである。
 椀に盛った掛け蕎麦を一口食し、一瞬の沈黙の後弟のドリアンが口を開く。
「どうだ兄者! この風味、麺のコシ。完璧だ!」
「ああ。だが何かが足らぬ、そんな気がする……」
「なにをバカな! 我がサロメの科学力を持ってして再現できぬものはない。あとは大恩あるかの大将に届けるのみ」
 自信満々の弟を、だが兄は思わし気な顔でただ見つめるばかりだった。


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