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日記一覧

お話の部品 27
2007年09月27日21:38

    エピローグ 3日間にわたって燃え盛った炎がようやく下火になったとき、アルデガンは変わり果てていた。 結界の源だった宝玉を収めたラーダ寺院の尖塔は崩れ、魔物を封じていた岩山は完全に姿を消していた。炎が振り注いだ城壁や建物にはいまだに燃

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お話の部品 26
2007年09月26日01:30

    野営地 レドラス軍は火の球がノールドの国境を越えたのにやや遅れて攻め込んだ。 砦の軍勢は低空をかすめる巨大な火の球の飛来に浮き足だち、レドラス軍の侵攻に組織的な対処ができなかった。たちまち砦は陥落しレドラス軍によって火をかけられた。

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お話の部品 25
2007年09月25日06:47

 声を聞いて顔を上げたグロスの姿が金色に輝いていた。リアが身を投げた窓から射し込む光が彼を照らしていた。グロスは窓際にやってきた。アラードもやっとのことで窓の外を見た。 洞門のある岩山の頂が金色に輝いていた。岩肌に亀裂が入り、そこから光が漏

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お話の部品 24
2007年09月25日01:34

 アラードたち3人はラーダ寺院を目指した。だが走るのが遅いグロスは遅れ、アラードとリアは2人で尖塔の螺旋階段を一気に駆け上がった。 リアが先に宝玉の間に着いた。しかし彼女は部屋に一歩入ったところで立ちすくんだ。アラードは危うくぶつかりそうに

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お話の部品 23
2007年09月25日01:30

    アルデガン 叫び訴えるリアと解呪しようとするゴルツの様子にアラードは何かがおかしいと感じた。ラルダのときと違う! 彼はグロスを見た。グロスもアラードを見た。その顔が蒼白になっていた。「解呪の技が正常に発動していない。魂に向かうべき力

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お話の部品 22
2007年09月24日07:39

    屋上 アザリアが意識を取り戻したとき、あたりは宵闇に閉ざされていた。起こそうとした上体が折れたあばらの激痛に崩れた。一瞬振り仰いだ目がかろうじて夜空の様子を捉えた。 西と北の2箇所に赤い残照が映えていた。 天空から去った2つの太陽の

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お話の部品 21
2007年09月23日17:21

    洞門前 リアが洞門に辿りついた時、空は燃えるような朱に染めあげられていた。 夕日がちょうど沈むところだった。岩山と城壁に囲まれた砂地には影が落ちていたが、城壁は沈む夕日を照り返していた。 暗闇の中で転化したラルダに比べ、リアは転化の

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お話の部品 20
2007年09月22日16:38

    地下火山>かの者の力はあまりにも強大だった< 金色に輝く人面の竜のごとき魔物の思念が告げた。>もともとは怪物の餌食になる仲間を救いたい一心で戦いを始めたといっていた。だがその力は自身の予想を超えて強大だった。気がつけば広大な土地に棲

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お話の部品 19
2007年09月20日18:03

    王城 アザリアはレドラス王ミゲルに続き、近衛兵に両脇を挟まれたまま長い階段を登りきった。侍従が重い扉を開けた。 太陽の光がまともにアザリアの目を射ぬき一瞬なにも見えなくなった。風が吹き込むと同時に異様なわめき声が聞こえた。 扉の外は

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お話の部品 18
2007年09月17日20:45

    最下層 リアが辿り着いたのはこれまでの中で最大の空洞だった。幅や奥行きもさることながら高さがずばぬけて高く、噴煙でけぶっているため天井の様子が見て取れないほどだった。 ここには人の手による加工はおろか、不思議な力による環境の変化も見

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お話の部品 17
2007年09月17日20:39

    レドラス アザリアを乗せた馬車がレドラスの王城ドルンに到着したのは午後になってからだった。 巨大な城だった。しかもまだ築かれて年数が浅いようだった。高さはさほどなく尖塔の類いも少ないが、巨大な切り株のような平たい形状からすれば屋上に

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 今回は、マーラーの交響曲のうち最も理解し難い曲としばしばいわれる「7番」だけを録音しているのが珍しくて聴いてみた下記のCDの話です。沼尻竜典/東京PO(2002年10月録音 サントリーホール)EXTON OVCL−00104<22:45/

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お話の部品 16
2007年09月15日21:32

    洞窟下層 暗闇の中で、大きな飛竜と華奢な少女が向きあっていた。 その大きさからも姿からも本来は洞窟にいるのがふさわしくない飛竜はいらだちを見せていた。その心の動きをリアは手に取るように読みとっていた。洞窟の中では広げることもできない

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お話の部品 15
2007年09月12日21:32

    国境 アザリアは東の王国イーリアから南の大国レドラスへ入る国境までやってきた。 アルデガンを旅立ってから2ヶ月になろうとしていた。最初に北の王国ノールドに立ち寄り宝玉やレドラスに関する情報を交換し、次いでイーリアの宰相とも面会し、許

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 3月22日に父が亡くなりました。癌の再発であっという間でしたが、この病気としては珍しく痛覚がなく永眠してくれたのがせめてもの慰めでした。 父が亡くなる直前に聴いたのが高関/群馬交響楽団によるマーラー「9番」でした。いささか普通でない心境の

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お話の部品 14
2007年09月06日00:59

    執務室 アルデガンに戻ったゴルツは指導者たちを招集し、アルデガンを襲った吸血鬼が滅んだこと。しかし、リアが転化を遂げてしまい洞窟の奥へ姿を消したことを報告した。 アラードは集会に同席していたが、特に発言を求められることはなかった。「

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 魔法の燐光だけを頼りに暗闇の中をどれだけ走ったか、アラードの感覚が薄れ始めたとき、ゴルツが止まるよう命じた。 前方が騒がしかった。種類の違う咆哮が入り乱れた。「なにかおるぞ。1匹や2匹ではあるまい」 3人は壁をつたいながらしのび寄り、様子

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    洞窟中層「体に熱を感じます。炎のすぐそばに立っているような……」 ゴルツの問いかけにリアが答えた。 あれからリアは進んで敵の意識に接触し、手掛かりを得ようとしていた。もはや敵の監視下にあり、自らの身が明らかに変化しつつある絶望的な状

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 鐘楼の鐘が鳴った。「時間じゃ」 ゴルツがいった。「アラード、そなたは先頭に立て。わしはしんがりじゃ。リアを真ん中にはさんで進む」 城壁の上の人々に見送られて、彼らは洞門をくぐった。 入り口から差し込む陽光に浮かび上がった洞窟は天然のままで

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「洞窟に入ればそなたにも敵の気配が感じ取れるようになろう、それもしだいに強く。その意味はわかるな?」ゴルツの言葉にはなんの容赦もないとしかアラードには思えなかった。 リアはうなづいた。だがアラードが思ったとおり、その顔から血の気が引いた。「

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    洞窟上層 真昼の光を浴び赤毛を風になびかせながら、アラードはリアとゴルツとともに洞門の前の砂地に立っていた。アラードは体格に合わせた軽い鎧、リアは皮で補強された胴着、ゴルツはラーダの紋章が入った長衣に軽い皮の胸当てという着慣れたいで

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