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日記一覧

”動きが鈍い、効いてるぜリューク!”「でも、もう無理だ、今の技は……っ」 剣に縋りようやく立ち上がる若き錬金術師に、よろめくように迫りくる炎魔の足取りが、炎の熱でダメージが癒えたのか徐々に速まってくる。だがそれに追い縋るように、岸辺に放った

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 景色は昨日とは変わり果てていた。同じ場所とは思えないほどだった。 朝からずっと吹き通しだった熱風のせいで、あれほど積もっていた雪はあらかた姿を消し、ところどころ地肌が露出していた。なかでも山越えの峠の道は、傾斜しているせいもあり完全に土色

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最近のCDから
2015年12月23日21:29

 先日タワーレコードに立ち寄ったら、懐かしいCDが再発されていました。堀米ゆず子によるシベリウスとメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。1988年に当時契約していたソニーから発売されたもので、バックはイヴァン・フィッシャー指揮アムステルダム

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”速いぜリューク!”「予想のうちさ!」 いい交わしつつ両手剣で空中に文様を描くリューク。たちまち打ち出される溶岩の弾を、しかし火柱は足も止めずに弾き返すや猛然と突っ込んでくる!”代われリュークっ”「ガルド頼む!」 いいつつ剣の束の宝玉を自ら

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 リュークが目を開けると、そこは色彩なき世界だった。 低い雪雲の垂れ込める空は灰色一色に染まりきり、その色を映した氷をすり下ろしたかのようなきめの細かい粉雪がいつ果てるともなく降り続いている。その粉雪の帳から見え隠れする山脈も氷の色の濃淡と

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「今から五百年の昔、我が国の南にはアルデガンと呼ばれる城塞都市があり、大陸全土の魔物を結界で封じた洞窟を守護していたのだ。そして結界を維持する要たるアルデガンの宝玉をはじめ、諸国に配された四方の宝玉が魔物どもの脅威から人の世を守っておった。

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 洞窟の久遠の暗黒の中、それは飢え、渇いていた。 飢えの、渇きの牙に内側から囓りたてられどれほど時が過ぎたのか、とうに自我は形をなしていなかった。ただちぎれた記憶の断片がいくつかの光景としてときおり眼前に浮かぶだけだった。空しく歩き回るばか

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拙作アルデガンシリーズにおいて序章たる外伝6の書き出しから5年後に外伝7を書き上げたとき、例によって火種の残ったその後のお話をどなたでも自由に書いていただこうという感謝企画を立てたことがありました。<アルデガン感謝企画その2:東の地にて>ht

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昨夜は外伝8のとっかかりを考えるべく、久々に直前の話である7を読み返していたら、途中でやめられなくなって空が白むまでずるずる読みふけってしまいました(汗)もちろん書いた当人ならではの、それを書いていたときの色々な思い出めいたものもとめどなく

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早々と鬼が笑う?
2015年11月23日17:35

地下版サーガを先日書き上げて、そういえば今年の年頭はどんな目標立ててたっけと思って日記を読み返してみたら、年明け早々風邪気味だったせいで地下版サーガの完結だけを目標にしていたおかげで、一応目標は達成できたことになりました。他に綾華☆☆様と合

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地下P59:光と闇と
2015年11月21日16:53

 その意外な光景に誰もが虚を突かれたそのとき、風のそよぎに押しやられでもしたかのようにふわりと近づく光る闇。我に返り撃ち落とそうとするゼロやタイガにヒナが叫ぶ。「やめて! 撃たないで!」 思わず振り向く種族の異なる若者たちの間を抜け、ヒナの

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地下P58:地上にて
2015年11月15日20:57

>空間に裂け目が開いてるぜ。あれは捕まっていた人々だ!<>な、なぜ? ハイパーゼットンは確かに倒したのに……< とまどうタイガに応える、喜びに弾むようなゼロの思念!>どうやらバット星人の野郎、てめえ自身を亜空間を封じる鍵にしてたみてえだな。

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地下P57:大空の光
2015年11月10日22:09

 戦神の巨体の中、ビーストは恐慌状態に陥っていた。 今の今まで抵抗もできずなすがままだったはずの獲物が、突如として爆発させた異様な激情! それは自分が食らいつき貪っていた抑圧された恨みや憎しみに明らかに連なるものだった。にもかかわらず、なに

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地下P56:灼熱の影
2015年11月08日17:41

「なっ」「タケ……ル?」>なん……だと?< 敵も味方も意表を突かれ等しく絶句するばかりのその眼前で、タケルの周りに集まってくる子供たち。大空に立つ二人の巨人を見上げるその小さな顔は、どれもがひどく張りつめた、なにかを必死で堪えているような表

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「ひ、卑怯だぞ侵略者!」 血相を変えて叫ぶアンナを、だが邪悪な侵略者は嘲笑する。>卑怯なものか。私は本当のことをいっているだけだよ。むしろ卑怯なのは君ではないかね。この子らの親や囚われの人々の命が危険だと君ならわかったはずなのに、私をあんな

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昨日買ったビクターのワゴン売り仕様2枚組CD「バロック名曲集」(VAL−173〜4)に含まれていた延原武春と大阪テレマンアンサンブルまたはテレマン室内管弦楽団名義の曲目を80分MD1枚に編集し、ディスクタイトルを日記の表題どおり「延原&テレ

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地下P54:破滅の翼
2015年10月30日18:21

「なん……だと?」 身をこわばらせたまま呻くゼロの姿に、叫んだバット星人もまた数瞬の間その場で固まっていたが、我に返るや自分を屠らんとした異形の戦士から後じさる。ゼロは思わず手を伸ばそうとするが、意に反し指一本動かすことさえできない。ようや

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>こ、小癪なあっ< 怒りと区別できなくなった焦りや苛立ちに駆られるまま、炎をひたすら乱射するハイパーゼットンことバット星人。その視野は両端に位置する異形のウルトラマンと黄色いちっぽけなロボットの姿に完全に釘付けになっている。 むろん頭ではわ

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地下P52:呼びかけ
2015年10月20日17:40

 急上昇するUローダーの黄色い機体めがけ、連射された火球が音を立てて迫る。それらを際どくかわしつつ、だがアンナは唇の端で笑う。「かかったわね卑怯者。私を狙えばウルトラマンを牽制し動きを封じられると思った? それは逆に、おまえも私を無視できな

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 長年ローエンド価格帯の機械を壊れない限り絶対に手放さず、その機械でどこまでやれるか取り組むスタイルで通してきたオーディオ道ですが、さすがに30年以上もたつと自分でやれる限界まではやりつくしたかなとも思いますし、クラシックを聞き始めた頃に買

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「な、なにをいうの姉さん。ウルトラマンも互角以上に戦ってるじゃない」 とまどいながらもいうリーサの言葉にも、だがアンナの厳しい表情は微塵もゆるがない。「ウルトラマンはただ戦えばいいわけじゃない。サワを、そしてヒナを助けようとして無理やり同化

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地下P50:異形の戦神
2015年10月13日21:44

>な、なんのつもりだ貴様っ< あっけにとられた様子を隠せぬ巨大な邪神を睨み上げ、一つの体の二人の若者は口々に叫ぶ!「同化されないうちに助けるつもりに決まってるだろうがっ」>喰わせるのがウルトラマンならどうだってのもあるしな!< 間髪を入れず

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「ヒナーっ!」「ヒナちゃーん」 仲間が、子供たちが悲鳴をあげるその前で、異形の娘は貫かれた上体を反らし地に膝を落とす。するとその姿を包む膨大な闇が苦しげによじれつつ、大鎌の刃を伝うようにして黒き魔神に吸い取られてゆく。その場の誰もが絶句する

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地下P48:邪神の大鎌
2015年10月05日00:59

「私を食えば完全体になれるんでしょう? 前からそういってたじゃない。 だったらもうこの星に用はないはずよ。さっさと地球から出て行って。みんなには手を出さないで!」>これはこれは! なかなか痛いところを突いてくれるではないか。無力な私はこの期

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>見よウルトラ一族の若造よ! 完全無欠のこの姿を! かつて貴様らに戦いを挑み敗北を喫したこの私が、ついに造り上げた最強にして不滅の肉体だ。これからは貴様の一族も含め、全宇宙の生命が我が前にひれ伏すだろう。無数の惑星に生まれ続ける命が知性を備

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 先ごろ来日したトーマス・ヘンゲルブロック/北ドイツ放送響のコンサートの放送をマイミクさんがご覧になられ感想を述べておられましたが、そこでも取り上げられたマーラーの交響曲1番『巨人』の第2稿(通称ハンブルク稿)は同じ顔触れによるCDも出てい

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「負け惜しみをいうんじゃねえっ」>往生際が悪いぞクソ野郎めが!< 一つの体の内外であがる怒声にも、しかしバット星人は微塵も余裕めいた口調を崩さない。>わからぬ奴だ。では教えてやろう。その力がいかに無力なものでしかないのかを。そもそも貴様の意

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地下P45:白銀の神器
2015年09月12日21:34

「な、なに? あの光は」「どんどん強くなってる」 皆がどよめくその間にも光はますます強くなり、倒れたままのゼロのみならず、前脚を振りかざしたままの蟲の魔王の巨体さえ包み始める。光を嫌うかのように後退りする黒き蟲の王に向け、虚像の円盤から檄が

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地下P44:蟲の魔王
2015年08月30日18:05

 匍匐性の形態でありながら五十メートル大のウルトラ戦士をはるか頭上から見下ろす山さながらの巨大な黒鋼の刺だらけの蟲。感情などとは全く無縁の冷厳さの権化のごとき怪物に睥睨され、身構える二人の若者の一つの体に名状し難き戦慄が走る!「……くっ、と

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1年遅れの初イラスト
2015年08月17日07:12

昨年7月に完結したアルデガン外伝7「隻眼の邪法師」のための初めてのイメージイラスト。先日までシリーズ全話を毎日1話づつ掲載してきた某noteにおいて、本日から掲載を始めるのを機にマガジンの表紙絵として描いたもの。なにせ5年間もかけてのたのた

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