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2016年02月05日00:19

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エピソードEX5(リレー)その2

マイミクの綾華☆☆様のコミュニティにおけるリレーエピソード『から騒ぎの感謝祭』に更新がありましたのでお知らせいたします。

なお綾華☆☆様のコミュは下記のアドレスです。シリーズ本編をご覧になられる場合はこちらへお回り下さい。参加は綾華☆☆様の承認制ですが、申請はどうぞお気軽に。

「ZERO Another BALLAD」
http://mixi.jp/view_community.pl?id=5150160&_from=subscribed_bbs_feed


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EXリレーエピソード『から騒ぎの感謝祭』
綾華☆☆

take-02

January 26th PM13:15

「市長がアリーナに?」
「ああ、何をしにきたのか分からないだけに、どうも気になるんだ」
 中央公園を見下ろすロシア料理店『ワシュリー』で、窓際の席で、セットのスープ代わりのボルシチをすする、若いカップル。勿論、ソラとウミだ。
“なあ、ウミ。オマエどう思う?”
 ゼロも思わず尋ねる。

 ボルシチの皿を下げてもらい、ランチのメインを待つうちに、バラライカでのロシア民謡の生演奏が始まった。
 それを見て、二人と一人は会話方法を肉声からテレパシーに変えた。
“全て信じる、それは難しいかもしれないわ。でもソラ、それにゼロ。あの市長……メフィラス星人ラーダは邪悪ではないことは確かよ。偽セブン達を地球に置いておくことが新たな惨禍を巻き起こすことを懸念して、太陽に投じ焼き尽くしたのはあの市長と『マザー』が協力してのことよ”
“そうは言ってもよ”
 ゼロは腑に落ちないようだ。
“邪悪だの善良だのではないんだ。その”
 ちょうどその時、ランチのメインが運ばれてきた。ソラはロシア風タンシチュー。ウミはロシア風ハンバーグだ。

“ソラ、ゼロ。夕べ、報道映像円谷プロの、ギガサーバーが完全ダウンしたの、知ってる?”
“は?”“ホントか?”
“昨日の戦いを、ぶつ切りのテレビニュースではなく、完全版で見たいと世界中から円谷のギガサーバーに凄まじいアクセスがあって、とうとうサーバーが火を吹いて、エンジニアの次男さんもメーカーもお手上げ! だったそうよ。深夜のニュースにもなってたわ。
 それだけじゃないわ。テレビ局の映像配信ニュースや不法アップロードでも見たいとワクワク動画やマイチューブも、昨夜からアクセスがままならない状況よ。
 それにjungleでも、かつての防衛チームに関する本が凄い勢いで入荷待ちや売り切れになっているわ”

 jungleとは、世界最大の会員制書籍通販サイトだ。日本国内はメジャーな出版社から地方の小さな出版社、大学などが出す書籍は勿論、海外の書籍を送料オフなら船便のため一ヶ月以上かかるが、20USドルを別途払えば僅か一週間足らずで届くため、ソラも海外の専門書を買うため会員になっている。
“ここに来る前に、ちょっと市民図書館の予約状況を部屋のパソコンから見て来たけど、そうした本は既に予約がいっぱいね。七福星デパートの書店、八徳堂でも店員さんは駆け回っていたわ。レジ近くで立ち読みするふりして聞いてたら、一番問い合わせが多かったのは、あなたとも親しいライター、井上さんの本ね”
“あれか……”
 ソラは思わず苦笑した。

 かつて栄タブロイドの記者であった頃から、伝説のトップ屋の名を欲しいままにしてきたライター井上薫。その彼が長年に渡り調べあげた渡来者と地球人との奇妙な連携の真実を、一切の私情や推測抜きで抉り出した渾身の一冊が『星から来た船』だ。
 ジェットビートルやウルトラホーク1号が既に月まで無補給で往復できたにも関わらず、当時世界トップクラスの技術を結集しても月に降り立つ事が出来たのはその数年後だったという事実を前に、誰もが軍事機密だからと思い込もうとしていた。そんな時代に書かれたばかりに会社ごと闇に葬られた世紀の禁書。ヒドゥンアーカイブ『ALIEN』の開封がされたからこそ今になって出版できたのだが、あえて旧栄タブロイド系列の出版社から出しているのは、もはや意地とも執念ともいうべきか。
 メテオールやハイパーディメイションについても、高校生なら理解できるほど分かりやすくかつ精確に書かれていて、レオンや西澤リーダー、幾原チーフでさえ舌を巻いたほどの出来だ。

 ランチのメインを食べ終え食器を下げてもらい、お茶とデザートを待っていたら生演奏が終わった。二人は再び肉声での会話に切り替える。

「ソラ、さっきね、八徳堂で八重子さんに会ったら、本を探してたから手伝ってあげたの。なんの本だったと思う?」
 八重子さんとは夢野市民図書館開館当初の司書の一人であり、後に館長、そして今も名誉館長である壷井八重子のことだ。夢野シティの知恵あるおっかさんと慕われる彼女は、今は育休代替臨時職員として、花見川小学校図書室の司書をしている。
 ソラでさえ当惑し、ゼロに至ってはお手上げなのを見て、ウミは笑いながらも答えた。
「かつて科学特捜隊にいた、イデ・ミツヒロさんが書いた『我が青春のジェットビートル』よ。八重子さん、夏から小学校の子供がどこか元気なかったり無用なケンカをしてたりしてたから、子供に希望を。そう思って探してたらしいわ。幸い一冊だけ残ってたけれど」

 月星人の乙女は表情を改め、地球人の若者を見つめた。
「ソラ、地球にはウルトラマンがいる。でもそれだけじゃない。ウルトラマンと共に戦える、そして地球を守るために日々勇者を目指している勇敢な人たちがいる。
 八重子さん、それに気づいてほしくてあの本を探してたんだって」


リレーその3 →
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← リレーその1
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