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2013年03月24日11:46

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【音楽】 坂の上コンサート〜舘野泉と仲間たち

昨日(3/23)、代々木上原ムジカーザに「坂の上コンサート〜舘野泉と仲間たち」を聴きに行った。代々木上原駅に下りるのは久しぶりで、駅構内が以前の記憶からかなり変貌していた。

ムジカーザは駅を出て坂を登って行けばすぐである。100人限定の会場は満員であった。(早めにチケットを買っておいてよかった。)

【演奏者】
・舘野泉
・広瀬悠子
・ヤンネ舘野
・吉岡裕子
・秋場敬浩

【プログラム】
・セヴラック(末吉保雄編曲):「休暇の日々から」第1集より (舘野/広瀬)
・啼鵬:北欧の言い伝え (舘野/ヤンネ)
・モンサルヴァーチェ:左手のための3つの作品 (舘野)
・ババジャニャン:サヤト・ノヴァの旋律によるエレジー (吉岡)
・ミルゾヤン:詩曲 (秋場)
・シサスク:組曲「スパイラル・シンフォニー(渦巻銀河交響曲)」 (秋場/吉岡)

なんとヴァラエティに富んだプログラムだろうか。フランス、日本、スペイン、アルメニア、エストニアの作曲家の作品を聴いて、小さな世界旅行が出来るようだ。

実はこの中で知っていたのはババジャニャンの「エレジー」のみ(ババジャニャン自身の演奏によるCDを持っている)で、あとは初めて聴く作品ばかりだ。それも楽しみであった。初めて聴く曲には新鮮な感動がある。(当初予定のプログラムとは少し変更された。)

セヴラックの「休暇の日々から」は今回は3手連弾編曲版で、舘野兄妹により演奏された。舘野泉さんが左手で低音域を担当する。全部で5曲(「シューマンへの祈り」、「お祖母様が撫でてくれる」、「ミミは侯爵夫人の扮装をする」、「公園でのロンド」、「ロマンティックなワルツ」)が、タイトルを見ただけでもなんだか楽しそうな曲ばかり。イメージを描きながら各曲を聴いて楽しんだ。なかなか面白い作品で、セヴラックもほとんど馴染みのない作曲家なのだが、これを機に少し聴いてみようかなと思う。

啼鵬も全く初めて聴く。プログラムを見た時は中国人かと思ったが、日本人でしかも私より若い人のようだ。もちろん啼鵬は本名ではない。バンドネオン演奏などで活躍している人らしく、今回のような「クラシック的」な作品も多くはないが作っているらしい。ヴァイオリンとピアノの二重奏による4楽章構成の曲で、舘野親子による演奏だ。「北欧の言い伝え」というタイトルから想像するのと少し違っていて、といっても「ゲンダイオンガク」した感じでもなく、なんとも不思議な雰囲気に包まれた作品だと感じた。啼鵬が初めて訪れた海外の地がフィンランドで、その時の印象からのインスピレーションで作曲した作品ということである。

サンサルヴァーチェと、これまた名前すら初めて聞く作曲家だが、スペインのバルセロナ出身の作曲家だという。舘野泉さんのソロで演奏された。もちろん左手のみで弾かれるが、豊かな音楽の響き! 舘野さんの尽力で、左手のために書かれた埋もれた作品が多く紹介されているようで、今回の曲も初めて聴く新鮮な感動を覚えた。

舘野ファミリーによる前半のあとは、「仲間たち」の部で、吉岡さんと秋場さんの登場だ。2人はエストニアの音楽をもっと紹介しようと活躍している方で、私がシサスクの魅力に出会ったのも吉岡さんの演奏を聴きに行ったのが発端である。

後半は吉岡さんの演奏によるババジャニャンの「エレジー」から始まる。同郷アルメニアを代表する作曲家であるハチャトゥリヤンを追悼するために作った曲で、ハチャトゥリヤンが愛した中世アルメニアの吟遊詩人サヤト・ノヴァの「命ある限り」の旋律に基づいた作品である。クラシックとポピュラー両方で活躍したババジャニャンの作品だけに、すっと耳に入る旋律が心地良い曲である。「エレジー」らしい哀しみは現れているが、重く暗くなっていないのが良いと思う。

続いてミルゾヤンの「詩曲」だが、これまた作曲家の名前すら馴染みがない。昨年の10月に亡くなった作曲家ということだ。「太古から受け継がれたアルメニアの魂による神秘の言葉が極めて鮮烈かつ野性的な筆致によって描かれた」作品ということで、なんとも言えぬ独特な雰囲気に包まれた作品だった。(なんとも言えぬ独特な雰囲気:最初聴くとちょっと苦手な方に属す曲だが、もしかしたら何度も聴くと面白さが分かるかもしれない?)

最後は圧巻のシサスクの組曲「スパイラル・シンフォニー」である。ピアノ連弾用に書かれた作品で日本初演である。演奏する2人、特に吉岡さんのシサスクの作品に対する思い入れは間違いなく日本を代表すると言ってよいだろう。シサスクとはもちろん親交もあるし、この曲を演奏するために宇宙の神秘にも深く入り込み、そこらのアマチュア天文学者にも負けない知識をお持ちのようである。圧巻の演奏で全9曲を聴き終え、シサスク独特の宇宙に入って息つく暇もないほどだった。低音部と高音部を時々入れかわりながら弾いていたが、この曲はどちらがどちらを弾くかを決めるのはきっと明確な根拠があるのだろう。最後の曲が終わりに近付いた時、舘野泉がピアノに向かっていったので一瞬何が起きたのかと思ったが、最後に舘野さんがピアノ内の弦を弾くという音があったのだった。内部奏法もシサスクのピアノ作品にはよくあるのを思い出した。宇宙の根源の響き?

ほとんどが未知の作品ばかりというコンサートで、すっかり堪能し満足した。舘野泉さんのほのぼのとしたトークも面白く、和やかな雰囲気なのも良かった。
「マリア(舘野夫人)は東京の桜開花に合わせて来日予定で4月初めの航空チケットを取っていたが、今年は予想より早く開花して残念だなあ。」
「僕がハチャトゥリヤンのピアノ協奏曲をアルメニアで演奏した時、ミルゾヤンが来て、君はハチャトゥリヤンの生まれ変わりかと褒めてくれた。」
「秋場さんは手も大きいし身長も192cm。ラフマニノフの生まれ変わりなんですよ。」
「フィンランドに帰る時、成田へ向かう途中で眼鏡を無くしてしまった。フィンランドで急遽眼鏡を作ったが、これがすごく重いの。」
「ハチャトゥリヤン、ババジャニャン、ミルゾヤンと、アルメニアの名前にはヤンが付くのが多い。僕もタテノヤンにしようかな。」


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