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2005年07月16日10:49

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儚き出会い/キリマンジャロ

◆ 儚き出会い/キリマンジャロ

田辺君という立命館大学の学生さんに出会った。彼はバイク(バイクツーリスト)で1977(昭和52)年の夏の北海道を旅していた。当時の旅はヒッチハイクと徒歩の旅だったので、田辺君と出会った瞬間、バイクで旅をする人に対してさほど関心を私は持っていなかった。つまり、冷めた感覚というか無関心に近い印象だったと思う。

雌阿寒岳[めあかんだけ;海抜1、503m]でのご来光を拝む夜間登山を終えて戻った朝、そのメンバーに向かって野中温泉ユースホステル(YH)のスタッフの誰かが、「ウトロYHに出立してしまった田辺君というライダーに忘れ物の免許証を届けて欲しいのですが、誰かそちら方面に行く人はいませんか?」と言って人を探していた。まさにその日に知床(ウトロ)に向かう予定だったので、気軽に「ハイ!」と私は引き受けた。

ウトロYHには明るいうちに到着して、田辺君の免許証をYHの人に預けたあと、夜通しで歩いたせいでとても眠かったのだろう、私は夕飯を前にして熟睡に陥ってしまった。ミーティングの頃に1度目を醒ましたものの、夕飯を食べたかどうかさえも記憶にないほど眠く、再び眠り続けた。

ただあの時、ミーティングでギターを抱いて歌っている誰かがあったのを朧気(おぼろげ)ながら覚えている。透き通った声で「♪今夜はキリマンジャロ、二人で飲みましょう」というフレーズが鮮明に蘇る。

結局、田辺君とは同じYHに泊まったはずだが会って話すこともなしに、次の旅先へとお互いが出発していった。そのあと、旅を終えて家に帰った田辺君から私に感謝の手紙が届き、何度か手紙のやり取りがあった。そして数年後、私が大学を卒業して、彼の下宿のあった京都の鴨川沿いの路地裏通りを尋ね歩いたような記憶も微かに残る。
まさか、数年後に京都に就職するなんて考えてもいなかったので、便りもやがて途絶えたままになっていた・・・・。彼もどこか遠い街に就職してしまったかもしれないなあ〜と思いながら、鴨川の土手を歩き、昔に聞いた住所を探したりしながら暮らし始めたばかりの古都の散策をしたのだった。

今、もしかして、押入を探せば彼のあの下宿先が見つかるかも知れない。そしたら、下宿に問い合わせて実家を聞き出して、また音信が戻って、「オレも今、バイクツーリストをしてるんだよ」と言えるのかも知れない。一度も会っていない人なのに、妙に懐かしい。

出会いとは儚(はかな)いものだとつくづく思う。ちょっとしたタイミングのずれで、二、三度の文通で終わることもあれば、一生の出会いにだってなる。

ウトロYHで夢と現実の狭間を流れたあのフォークソング。誰かが弾き語りで歌っていたあの「♪キリマンジャロ」の歌詞の響きが忘れられない。だから私は、キリマンジャロが好きになったようだ。世間ではコーヒー嫌いで通している私が、それは偽の姿で、キリマンがないと朝が始まらない。

そして、エキセントリックでドラスティックな出会いをした田辺君。あれから30年近く歳月が過ぎたけど、まだライダーをしてるのだろうか。あの時、バイクに乗っていなかった私も、今はバイクの話に参加できるようになったよ。立派なツーリストになったよ。風貌も変わってしまったけど、私はまだ旅人をしています。彼にそう伝えたい。
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知床の記事を読んでそんなことを思い出した。やはり、私がもう一度、五度目の北海道を旅するためには相当な強い動機が必要になってくるなあ。
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一部分改訂、初出:July 4, 2001 IMF:第10回「儚き出会い」 by 猫柳素庵
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